シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

アーチャーの物語

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 わたしの空と陸と海 
 わたしの月と星と森 

 風に乗って飛んで
 がやがや地面は忘れよう
 故郷はなくなって
 今日も眠れないから

 

アノマニ人が歌い、遊牧民のホーワシ人にも伝えられた童謡より

 

 十王国の成立よりもはるかに古い時代には、ヒトが興した大きな国のなかで、どこにも定住しない民族がいた。始祖人たちの土地から追放されたとき以来、彼らは今も、風の吹くままに地界をさまよっている。
 アノマニ人と呼ばれるこの民族は、混血から生まれたアエルフボーンにならぶほど嫌われた。そのうえ、社会不適合者と詐欺師ならびに馬泥棒として扱われ、文明の都市に彼らの居場所はない。なおアノマニという名詞には、古期アーダン語で流浪民という意味があることを示しておく。
 放浪の日々を送るなかで、アノマニ人は何度もエルフやケンタウロスと衝突し、ヒトの諸民族とも激しい戦いを繰り広げた。異教の神格を崇拝したアノマニ人には、固有の伝承と呪術があったようだ。もっとも彼らの様態には謎が多く、現代に残る歌と物語を保全する必要がある。
 行く先ざきで迫害されたアノマニ人は、アーダンが滅亡した頃には、すでに絶滅の危機にひんしていた。彼らの技術はすべて消滅したように思われたが、ひとつだけ今に残されている。

 

 その技法はイルグワリン・アブアイン、もしくは風操作という名前で知られている。弓は広く利用されているが、過去に存在したアノマニ人の風呼びを差し置いて、地界に最高の射手と呼べる人びとはいないだろう。
 風操作が歴史に初めて登場したのは、まだアノマニ人が、アーダン国を追放されていなかったときのことである。かつて光輝王アーダンは、愛娘の結婚相手を探す名目で、弓の競技会を開催した。会場にはアノマニ人の少年もいたが、彼の小柄な体格は大人たちの笑いものになったという。しかしひとたび少年が弓を引くと、矢は誰のものよりもはるかに速く、遠くに飛んでいった。
 驚いた光輝王はアノマニ人の少年に、どのような方法を使ったのか聞き、少年は「風の声に従いました」とだけ答えたという。激怒した光輝王は、アノマニ人を、競技に呪術を使う卑怯な民族とみなした。そして、彼ら全員をアーダン国から追放したのである。少年が弓の練習をするとき、風はいつも彼に話しかけていたのだろう。
 アノマニ人たちはさまよう生活のなかで、肉眼では見えない風の精霊がいることを知り、それらの声を聞いた者たちは、次つぎとアーチャーになった。アーチャーを志す者は秘密の技法を学ぶだけでなく、風のもつ声を聞き取り、彼らの好意を得なければいけない。風が差し伸べる手は放たれた矢を加速させ、強力な一撃となる。

 

 欲深いエルフはアノマニ人を拷問し、風呼びの技法を奪い取ったようだ。アーダンが滅亡した後、諸王時代が訪れるまで、人の子は長いあいだアーチャーの技術を失っていた。同時代において、大王の宮廷に白騎士ジェーリアンが参上したことは、とても喜ばしいことである。
 勇士隊のなかで最も高齢で、最もカンブリュワン王に忠義の厚かった、ジェーリアンの持つ弓は特別なものであった。オーク材の大弓、ディアージュハープの制作者は無名のアエルフボーンであり、アーチャーでもあった彼は、ジェーリアンに秘技も授けたという。生涯を技能の習熟に費やしたジェーリアンは、彼が嘆きの日に命を落とすときまで、多くの戦士たちに風呼びの方法を広めた。

 

 弓を射ることは簡単だが、百人のうち一人だけがアーチャーとなり、古代からある私たちの組合に参加する。高度な弓を自作できなければ、アーチャーとはいえない。弓の弦で竪琴に似た音を鳴らせば、風精は呼びかけに答えるだろう。
 アーチャーには鋭い目と強い腕だけでなく、鉄の意思も要求される。訓練にはげみ、心の乱れを鎮めなければ、風のささやきは聞き取れない。風を従える勇気をもつことで、千歩離れた場所から標的を撃てるようになる。そしてあなたは一分間に十二本の矢を放ち、それらは稲妻の速さと威力をもって敵を破壊するのだ。

 

[補足情報]
概要

 

  固有名詞一覧

 

《あ》:アーダン〔光輝王〕(Ardan the Shining King)、アーダン〔楽園〕(Ardan)、アーダン語〔古期〕(Old Tongue of Ardan)、アーチャー(Archers)、アエルフボーン(Aelfborn)、アノマニ人(Anomani)
《い》:異教(Pagan)、イルグワリン・アブアイン(Il Gwailin ab Eyn)
《え》:エルフ(Elves)

 

《か》:風(Air)、風操作(Calling of the Winds)、風使い(Windcallers)、カンブリュワン(Cambruin)
《け》:ケンタウロス(Centaurs)

 

《し》:ジェーリアン〔白騎士〕(Gerriant the White)、始祖人(First Men)、十王国(Ten Kingdoms)、諸王時代(Age of Kings
《せ》:精霊(Spirits)

 

《た》:大王(High King)
《ち》:地界(World)
《て》:ディアージュハープ(Dirgeharp)

 

《な》:嘆きの日(Day of Woe)

 

《ひ》:ヒト(Men)、人の子(Sons of Men)
《ふ》:風精(Wind Spirits)
《ほ》:ホーワシ人(Horwathi)

 

《ゆ》:勇士(Champions)、遊牧民(Nomads)

 

《る》:流浪民(Wanderers)