シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

グラディエイターの物語(Gladiator Narrative)

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 現代は最高の時代だ。考えてみろ。天変地異は地界を破壊したあと、戦乱と無秩序をもたらし、おれたちから本当の死さえも奪った。そして今、武器をもった男たちは、壁なき舞台で悲劇を演じる。彼らは戦うことができ、死ぬこともできる。とどめを刺されるまえに、雄おしくも悲哀に満ちたせりふをはき出し、次の夜にはよみがえり、ふたたび劇に出演する。
 死は意味を失ったが、その体験は存在したままだ。観客は血と骨だけでなく、はらわたも見ることになる。けっきょく、そこには凄惨な場面がある。

 

 なぜ契約書に署名した。残りの人生をおれに預けたいようだな。大金が必要なのか、あるいは懲罰としてなのか。もしくは、ただ単に殺人を楽しみたいのか。いづれにせよ、おれの知ったことではない。これで、おまえはおれのものだ。すり切れるまで使ってやる。
 殺人は犯罪でなくなり、輝かしい競技に変わった。かつての諸破片王国で禁じられたものが、ここにある。観客は楽しみにしている。赤い血が首から噴きだす光景と、骨が砕けたときの強烈な音。そして、四肢が切断される事体を。彼らが金を払うのは、人が苦しんで死ぬのを見るためだから、おれはそれに応えてやる。
 おまえは戦い、死ぬことになる。だが思い浮かべてみろ。数百人の観客がおまえの名前を連呼し、一挙一動を目で追う。おまえがとどめを刺されるまえに、彼らは息をのむ。

 

 もちろん、現代にはいくつかの欠点がある。おれの役者たちは、演技を問題なくできるようになったが、おれのまえに、退屈という新しい敵が立ちはだかった。用意された単調な死に、飽きてしまった観客がいる。彼らを呼び戻すために、おれたちは、見るに耐えないほど凄惨な戦いをしなければならない。より多くの血と恐怖、そして、衝撃的な場面が必要となる。
 試合は見せものだ。闘技場には、目を引く衣装と猛獣が用意されているが、ときには呪術の罠が猛威をふるう。おれたちは生き残りつづけ、観客を楽しませつづけなければならない。彼らは悲哀と悲劇を求めている。英雄たちの血も欲しがっている。そして、おまえはそれを供給するだろう。

 

 才能があればうまくやれる。契約期間が満了してここを出るとき、おまえは、傭兵団が養成した戦士よりも強くなっているだろう。闘技場で生き残るには、武術の達人がもたない機転がいる。忘れるな。この戦場は舞台であり、人びとの全員が見せものを求めている。
 エルフのように舞い、虎のように噛みつけ。観客のために演じ、勇ましい振るまいと苦痛にうめく姿を見せてやれ。おまえの演技は敵の注意を引ける。相手をうぬぼれさせるか、あるいは脅してしまえ。おまえは敵を一撃で殺す方法だけでなく、どこを突けば、敵を不具にしたり麻痺させるのかも学ぶ。敵を生きながらえさせたまま、最大まで出血させる場所も覚えるだろう。
 とにかく、戦いつづけなければならない。観客を楽しませ、支払わさせなければならない。試合にとどまるために、おまえは苦痛を遠ざける方法を学ぶだろう。うまくやれたなら、観客はおまえを見るために、何度でも戻ってくるだろう。おまえが本当に優れているなら、おれはおまえを金持ちにしてやれる。上等のぶどう酒や最高の食い物にくわえ、あらゆるぜいたく品が手にはいるだろう。
 もしもうまくやれないなら、おまえは一日に十回は肉料理にされ、それが毎日つづく。そして、えんえんと生き返り、さらに悲惨な目にあう。心配するな。おまえはここで居場所をみつける。もはや、おまえに選択肢はないのだから。

 

用語一覧

 

《え》:エルフ(Elf)

 

《く》:グラディエイター(Gladiator)

 

《ち》:地界(World)
《て》:天変地異(Turning)

 

《は》:破片王国(Petty Kingdom)

 

《よ》:傭兵団(Mercenary Legion)