シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

アンデッドハンターの物語(Undead Hunter's Narrative)

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 じきに日は暮れ、数時間後には真っ暗になる。

 

 もう穴を掘らなくてよい。予想どおり、この教会墓地でまちがいはないようだ。調査をやめてよいと言ったはずだ。太陽が沈めば、あいつはおれたちを探しに来る。あいつには寝ていてほしかったが、なかなか賢いようだ。今できることは準備だけだ。おまえの部下を集めろ。おれたちはこの丘で戦う。

 

 おい、どこへ行くつもりだ。おれたちはここで戦うと言ったはずだ。夜が怖いのか。たった一人のヴァンパイアが恐ろしいのか。安心しろ。おれはもっとひどいものを見てきた。おまえがおれを頼ってきたのは、小さな問題を解決するためだったはずだ。
 おれはアンデッドハンターであり、二十年ものあいだ、死人の灰を狩り集めてきた。怖いなら、ここから逃げて、砦の中から外を眺めてもよい。だが、おまえが隠れているあいだ、すべての夜で、あいつはごちそうを楽しみ、さらにおおくの死体を呼び起こす。おまえが弱くなる一方で、あいつは強くなるんだ。
 一か月ほど閉じこもっていれば、あいつは腐った死体の軍勢を引き連れて、おまえのいる砦を攻撃する。しかも、不死者たちは疲れを知らない。そのときには手遅れだ。おれの言ったことは事実になる。悪臭を放つ、ゾンビと思われる敵と戦ったことはあるか。隣人たちの死体ならびに愛する人たちの死体と、あるいは、自分の死体と戦った経験はあるか。そうならないように祈っておけ。

 

 さっそく、計画について話そう。おまえたち四人は、できるだけおおくの木を集めろ。おれたちは、丘の上でたき火をたく。おまえはたいまつを作れ。各自に、最低でも四本が必要になる。今夜のおれたちにとって、火は最良の友人だ。火を使えば、仲間の死体を確実に壊せるうえに、明かりにもなる。
 すぐにヴァンパイアが現れると思うな。あいつはまず軍勢を送りこんできて、おれたちを疲弊させようとする。軍勢の大部分は歩く死体だが、一部にはスケルトンもいるだろう。緊張しなくてよいが気を緩めるな。息切れしてしまうからな。だが、あいつらは疲れない。

 

  若造、おまえの役目は、何がおきてもたき火を絶やさないことだ。そこのおまえは、この斧を持て。ゾンビが倒れたら、できるだけ早く首を断て。この斧はよく研がれている。ただの薪わりだと思え。おい、おまえはこっちを見ろ。これらを受けとれ。両手にたいまつを持て。戦いが始まったら、おまえは木こりについていけ。木こりがゾンビの首をはねたら、死体に火をつけろ。おまえたち二人がうまく働けば、ゾンビとの戦いは一度で済む。
 残りの者たちは、おれとともに厄介な仕事をおこなう。二人一組で離れずに戦い、たき火いがいには背中を向けるな。では、全員が剣を握れ。刃物は肉体をもつ敵に使え。首か脚を狙い、ゾンビどもを動けなくさせろ。スケルトンには戦棍を使え。戦棍は、帯にさげるか近くに置いておく必要がある。

 

 敵の群がやってくるから、準備を済ませておかなければならない。恐怖はあいつらがもつ最大の武器だ。悪臭をかいで嘔吐しても、恥じる必要はない。そして、ゾンビどもの顔は見るに耐えない。うまく立ち回りながら、たき火に背を向けつづけろ。そうすれば生き残れる。ひとたび要領を得れば、苦労せずに倒せるだろう。
 一ダースのゾンビに勝ち、動き回れるようになっても、用心しろ。敵が逃げても釣られるな。たき火を囲う仲間たちから離れたら、死ぬことになる。遠くで仲間が倒れても放っておけ。その仲間を引き戻そうとして、暗闇に背中を向けるな。仲間を起こそうとすることは、特に危険だ。別のゾンビが生まれてしまうだろう。そいつを始末しなければ、おまえもゾンビにされる。
 レイスか体をもたない敵に遭遇したら、おれを呼べ。おれの棍棒は霊樹でできていて、聖人に触れられたものだ。おれは、神学校では教えない祈りを知っている。ヴァンパイアが現れたときも、おれにまかせろ。死者の主人とおれの側からは、離れておけ。おれは、必ず役にたってきた技をいくつも知っている。だが、もしもヴァンパイアが二人いたら、厄介なことになるだろう。

 

 準備が終わったから、あとは待つだけだ。おれは、天変地異がおきたあとのことを覚えている。あの時期では、まだ生命の樹が稼働しておらず、殺害された人びとの全員が、醜悪な不死者として蘇生した。当時のその軍勢は、夜のあいだふらふら歩きながら、見つけた人びとを食べまわった。これが、おれの仕事が生まれた原因だ。
 おれたちは死人を殺す方法を学び、夜を取り戻し始めた。死んだ人びとが、生命の樹へ帰還するようになったとき、おれたちの戦いは終わったと思われた。だが、それはまちがいだった。十王国の全域におけるすべての教会墓地で、月光が死者を起こすようになった。
 一説によれば、冥界を超えた先に、死者の魂が飛んでいく暗黒が存在し、この暗黒は魂をむさぼり食べている。別の考えによれば、暗黒は純粋に冷たくて邪悪な心であり、生命の活力を渇望している。暗黒は野獣のように生きていたが、天変地異のあとからは新鮮な魂が得られず、空腹を我慢していると唱える人びともいる。
 おれたちは死滅能を知った。それが地界に届き、死体に触れたことで、死者たちが、憎悪と不自然な命に満たされたのを目撃した。死滅能がどこから来たかはわからないが、地界における不死者たちの人数は、今までよりも増加している。暗黒がやって来る。主教たちに警告したが、かれらは地界の存続を証明しようとしていて、忙しすぎるようだ。そんなこと誰にもわかるはずがない。もしかしたら、地界はすでに滅びているのかもしれん。

 

 とはいえ、今のおれたちには関係ないことだ。日は沈んだ。やつらがやって来る。各自たいまつを燃やし、消えないようにしろ。気を引き締めておけ。おれの言ったとおりにやれば、次の朝日を見られるだろう。

 

固有名詞一覧

 

《あ》:暗黒(Darkness)、アンデッドハンター(Undead Hunter)
《う》:ヴァンパイア(Vampyre)

 

《し》:死滅能(Shadow)、十王国(Ten Kingdoms)、主教(Bishop)
《す》:スケルトン(Skeleton)
《せ》:聖人(Saint)、生命の樹(Tree)
《そ》:ゾンビ(Zombie)

 

《た》:太陽(Sun)
《て》:天変地異(Turning)

 

《め》:冥界(Void)

 

《や》:野獣(Beast

 

《れ》:レイス(Wraith)