シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

ウィルムスレイヤーの物語(Wyrmslayer's Narrative)

f:id:AzuhikoDaidaiboshi:20160724190518j:plain

 どこへ向かっているか、わかっているのか。その洞窟に何が住んでいるか、知っているのか。怖くないなら行け。ほんとうに、巣の中で、ドレイクに勝てると思っているのか。
 ウィルムとの戦いは、人どころか獣とさえ同じようにはいかない。おまえは剣を使えるようだが、ドレイクが息を吹きかけてきたら、どうする気だ。そうしてこなかったとしても、ドレイクの悪臭は、おまえの目と舌を焼くだろう。目が見えなくなったあと、一分いないにおまえは気絶して、ドレイクに殺される。うまくいくと思っていたようだな。わかったなら帰れ。ドレイクに勝つことは、栄誉を得られる簡単な方法だが、このことほど、死ぬのに簡単な方法は他にない。

 

 どういうことだ。いいや、おれはその場所を知らない。待て。渓谷にあるその村のことは、たぶん覚えている。一週間まえ、巨大とかげが暴れた直後の村を通りすぎた。おまえの村だったのか。
 推測させてくれ。ドレイクが、疫病のように村を更地にした。家が燃やされ、作物が壊され、人びとが死んだ。おそらく、おまえも殺された。そして、おまえは村人たちをみつけられず、おまえの子供たちが腹を空かせているから、報復したいのだろう。誰を亡くした。妻か恋人か、あるいは子供たちか。おまえの目は妻だと言っている。
 この地界で妻を亡くしたのが、自分だけだと思っているのか。ドレイクではなく村人たちを探せ。おまえが生きているのと同じように、おまえの妻も生きている。それでは満足できないのか。

 

 そうなのだろう。では、おまえは何をするのか。洞窟に突撃して、恨みを叫ぶのか。おまえはばかだ。ばかだけが、このおかしな時代でも死に走る。死ぬたびに、おまえが新しい肉体を得ても、魂の一部は戻ってこなくなる。よかったな、若造。洞窟の中には死があり、そこでおまえがみつけられるものは、それだけだ。

 

 あれをドラゴンと呼ぶな、若造。横たわっているドレイクは数千歳だが、大人ではない。あの巨大とかげは、孵化しばかりの雛だ。おれが見聞きしたことを話そう。おまえがおとぎ話で聞いた、本物のドラゴンたちこと神敵たちは、全滅したか、あるいは、地界の中心部で眠っている。ただの一匹でも遭遇したくはない。
 かつて地界をほぼ全壊させたうえに、全父にさえ殺されなかった、大神敵ことドラゴンについて、エルフたちは歌う。あれはドラゴンではないぞ、若造。百フィートの体長をもっているが、ただの雛にすぎない。それでも、あいつは死そのものだ。

 

 おれがここにいる訳か。理由は違うかもしれないが、おまえと同じく使い走りだ。この首飾りを見てみろ。これらはドレイクの歯であり、一匹ごとにひとつずつ抜いたものだ。見たことはあるか。にがにがしい思い出か。二十個の歯、つまり、おれは二十匹を殺した。おれはウィルムスレイヤーであり、おまえが生まれるまえから、地界において、もっとも危険な獣を狩りつづけてきた。
 おまえの心がもつ怒り、つまり、報復への欲求が、おまえをここまで導いた。良いきっかけだが、それだけではあの怪物にかなわない。あのドレイクには、以前から目をつけていた。おれは、あいつを六か月まえから追っていたから、あいつのできることは把握している。おまえがあそこに行っても、勝機はないぞ。おれが行くなら、あいつを殺せる。おまえは待っていろ。
 あいつは死んでも復活できない。ドレイクは、おれたちとは違うといえる。なぜなのか。地獄火のせいかもしれんが、わからん。プリーストに聞きに行け。おそらく、ドレイクの神がみは死んだのだろう。

 

 まだ死ににいくつもりか。若造、おまえには無理だ。自分じしんをよく見ろ。おまえは剣しか持っていない。
 普通の鉄でできたものではない、十分に長い武器であれば、巨大とかげを刺せるだろう。あいつの腕か首の間合いに入ったら、おまえは、叫び声をあげるまえに死ぬ。ドレイクを殺すには、おれのもののような、長い槍が必要だ。槍を突き刺して損傷をあたえるには、あいつの弱点となる部位を知らなければならない。
 おまえには防護も必要だ。おれは、あいつの炎を遮れる軟膏だけでなく、悪臭の中で動きまわるための、調合薬も作れる。軽鎧の有用性も理解している。ドレイクの爪による攻撃は、最高級の鉄板鎧さえ打ち破る。すばやく動いて攻撃をかわさなければ、勝つことは不可能だ。おれは、ドラゴン殺しの技をすべて知っている。最初かつ最大のウィルムスレイヤー、ガレン・バランドウィルが教えてくれたからだ。

 

 なぜ、おれはドレイクを狩るのか。おまえの望む理由とは違うぞ、若造。カンブリュワン王が王位に就いたとき、おれは、経験を積んだ四十歳の兵士だった。勇士たちとともに戦場へ馬を駆り、天変地異がおきた日にはキエラヴェンにいた。おれは戦いで深手を負い、死にかけた。死にたいと思っていたが、その望みはかなわなくなった。
 その後、人生の二回分となる期間を生きて戦い、地界にいる、あらゆる種類の獣ならびに人を殺した。おれのような年寄りにとっては、ドレイクとの戦いだけが、命懸けの娯楽になる。だが、他にも理由がある。昔、おれには妻と子供たちがいたが、エルフたちに連れ去られ、悲涙戦役で死んだからだ。
 聞いた話によると、天変地異の原因は竜血によるものらしい。誰も事実はわからないが。おそらく、おれはいつか失敗し、ドレイクに殺されて、一瞬は家族と再開する。もしくは、そうならない。さっき言ったように、おれは僧侶ではないから、わからない。

 

 日が高く昇った。怪物を狩る時間だ。おまえはウィルムスレイヤーを名乗りたいのだろう。おまえが十分に賢いのなら、おれは教えてやれる。

 

 観察から始めろ。前に出すぎるな。

 

固有名詞一覧

 

《う》:ウィルム(Wyrm)、ウィルムスレイヤー(Wyrmslayer)
《え》:エルフ(Elf)

 

《か》:神(God)、ガレン・バランドウィル(Galen Balandwyr)、カンブリュワン(Cambruin)
《き》:キエラヴェン(Kierhaven)

 

《し》:時間(Time)、地獄火(Hellfire)、神敵(Terror)
《せ》:全父(All-Father)

 

《た》:大神敵(Terror of Terrors)
《ち》:地界(World)
《て》:天変地異(Turning)
《と》:ドラゴン(Dragon)、ドレイク(Drake)

 

《ひ》:悲涙戦役(War of Tears)
《ふ》:プリースト(Priest)

 

《ゆ》:勇士(Champions)

 

《り》:竜血(Dragon's Blood)