シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

白夜時代(Age of Twilight)


f:id:AzuhikoDaidaiboshi:20160620214025g:plain あなたは聖騎士カエリク・ブラックハマーの伝承を聞き、彼がシャドウベインを虚無の支配地から持ち帰り、主君に届けたことを知った。さらには、上級王カンブリュワンがシャドウベインに救われた反面、それに命を奪われたことについても。ベレガンド・ブレイドシーカーが数多くの困難を乗り越え、シャドウベインを獲得した後、愛する女性に裏切られたことも聞いた。伝説を語るとき、彼らの紹介は欠かせないが、シャドウベインが初めて光を放ったのは、剣がベレガンドの手に渡るよりも前で、数え切れないほど昔のことだった。
 三人の人の子たちがシャドウベインを振るい、危機を切り抜けたが、この剣は本来は人のためではなく、エルフのために作られたものであり、それは白夜王国が滅亡した後の出来事だった。
 あなたはすでにシャドウベインにまつわる伝説の悲惨な結末を知っているが、これから私が伝えるのは、伝説の始まりについてである。鍛冶神トゥーリンが至高の剣を作り上げたとき、彼がどれほどの苦痛を受け、代償を支払ったのか。そして、野心を抱き、神々に背く者が現れた。シャドウベインには、創造のときから不吉な事柄がまとわりついていたのだ。

 

暗き始まり
〈ドラゴンの目覚め〉

 

 シャドウベインの製造は人の子の誕生よりもさらに古く、その伝承を人の記録から学ぶことはできない。伝説の始まりでは時間そのものが存在せず、永遠の夜がいつ終わるともなく続いていた。この時代は白夜時代と呼ばれ、星々だけでなく二つの月、黄金月と白銀月が淡く輝き、生まれて間もない地界が優しく照らされていた。
 この時間なき時代の美しく平穏な情景に終わりをもたらしたのは、地底で眠っていた最古の悪、竜祖ことドラゴンの目覚めである。エルフだけでなく、全父でさえドラゴンがいつから地底で眠っていたのかは知らなかった。地底には地上から下りた鍛冶神トゥーリンと全父もいて、ドラゴンが起きる前に退治しようと攻撃したが、その途端にこの恐ろしい獣は目を覚ました。暗闇の中で死闘が繰り広げられ、大地は揺れ、亀裂さえ走り、エルフたちの都市はひとつ残らず被害を受けた。
 ここでエルフは初めて死の概念を知った。ブライアラの子供、シーの最年長者として第一妖人王の位に就いた人物、ギルリアンドールの木々より高くそびえる宮殿も崩壊し、王は瓦礫の下敷きになって命を落とした。

 

 ついにドラゴンは深い地底から飛び出し、その勢いは山々を崩した。エルフたちは絶望すると同時に怒りに燃えており、白夜王国の全兵力が悲嘆平原、ヘンナンガルロラヒに急行した。ギルリアンドールの子供たちは父の喪失を悲しみ、涙を流しながら平原に向かい、死と復讐の恐ろしい歌を歌った。この時点で、地界の長子種族、エルフたちの武術と呪術は頂点の領域に達しており、現代はおろか、未来においてもこれほど強力な軍隊は現れないだろう。
 集結したエルフたちの鎧には星々の輝きが映り、彼らの目は憎しみの炎を宿していた。エルフの軍勢は一斉にドラゴンへ総攻撃を仕掛けた。精鋭剣士、ブレイドウィーバーたちが空を覆い、死の舞を踊りながら矢のように飛び掛かる光景は、嵐の雨よりも激しかった。呪術師たちは持てる力のすべてを集め、炎と雷を次々と放った。ドラゴンはそれらをものともせず、山よりも大きい体をゆっくりと起こし、広大な翼を広げると、星々の光は遮られ、辺り一面が真っ暗になった。ドラゴンは大声で笑い、エルフたちの軍勢は震え上がった。
 そしてドラゴンの怒りが解き放たれ、エルフの軍勢は竜巻にさらされた麦畑のようになった。ドラゴンの尻尾が軍勢をなぎ払い、巨大な口に飲まれたエルフたちはかみ殺され、炎の吐息はすべてを灰に変えた。歴史上最強の軍隊は一瞬で壊滅し、生き残った者たちは地界の滅亡を嘆き、逃げ出した。

 

 そのとき全父とトゥーリンが地底から戻り、全力でドラゴンに挑みかかった。魔神を打ち倒したトゥーリンの戦斧でさえ、ドラゴンの皮は切り裂けず、全父の両拳も竜祖の鱗に損傷を与えられなかった。だが、これらの攻撃により、かろうじて邪悪な獣の暴走は中断された。
 ドラゴンは振り向き、全父に言った。
「わしはおまえを知っているぞ、獅子の子よ」
 その声は恐ろしいものであった。
「わしの眠りを妨げたのは愚かだな。おまえとおまえの子供たちの血で償わせよう」
 ドラゴンは逃げるエルフたちを追わず、爪で全父を切りつけた。深手を負った全父は飛び跳ね、空に逃れた。全父はドラゴンを遠く離れた虚無界におびき寄せ、封じ込めることで、新しく生まれた地界を守ろうとしたのである。

 

 ドラゴンは全父を追わず、息を大きく吸い込み、邪悪な心臓から生み出したすべての炎を吐き出した。その勢いは火山の噴火を思わせ、振り返ったエルフたちの目は光で焼かれ、ごう音が響いた後、地界は静けさに覆われた。
 全父はドラゴンの炎を素早く避けたが、炎は空を突き破り、黄金月、ボリアンスに届いた。黄金月は炎に包まれ、このとき、現代まで燃え続け、地上を照らす太陽が生まれたのである。私たちの地界は永遠に変わったのだ。

 

 エルフたちにグウェアゲリンドと呼ばれる、黄金月の女神、夢幻神ウォリアンドラの宮殿は巨大な炎に飲み込まれ、彼女は苦しみながら命を落とした。月が太陽に変化させられたとき、そこには全父に仕える同胞神の一人で、彼女の夫でもある戦争神マローグもいた。マローグは盾を構え、愛する妻を炎から守ろうとしたが、彼自身も骨まで焼かれ、永遠に醜くされてしまった。白銀月にある氷の宮殿では、ウォリアンドラの姉妹、サエドローンも苦痛を共有し、彼女は狂気に陥った。ドラゴンが吐き出した炎によって、神の一人が死に、二人が本来の姿を失ったのである。
 命からがら太陽から脱出したマローグの姿は、まるで炎が尾を引く流れ星のようで、そのまま彼は海に飛び込んだ。身体を覆う炎は消し止めたが、全身にひどい火傷を負ったため、マローグが後の大戦に参加することはなかった。

 

 新しく生まれた太陽の光は、エルフと神々だけでなく、ドラゴン自身の目も眩ませた。これを機会と見た全父はドラゴンをつかみ、押さえ込もうとした。ドラゴンが抵抗し、翼で全父を叩きつけると、そこからは暴風が巻き起こった。さらにドラゴンは自分の体を全父に巻きつけ、殺そうとしたが、それでもなお全父は獣の動きを封じ続けた。

 

 そのとき、角笛の音がヘンナンガルロラヒに響き渡り、全父はドラゴンと組み合いの最中であったにも関わらず、笑みをこぼした。全父の同胞神で、黒い四本の馬脚を鳴らしながら、嵐よりも速く走る狩猟神ケーナリュンが悲嘆平原に現れたためである。騒動に気がついたことで、幻竜討伐を一旦取り止め、駆けつけたケーナリュンの目には怒りが宿っており、彼の持つ槍の穂先は太陽の光で輝いていた。トゥーリンも頼もしい仲間の登場に口元が緩んだ。
 ケーナリュンは雄叫びを上げながら飛び跳ね、まがまがしい槍をドラゴンの目に突き刺した。この槍、カランシルは元々は魔神の一人、支配神コラウールの武器だった。地界の創造以前に、全父と同胞神たちが魔界の軍勢を打ち負かしたとき、ケーナリュンはカランシルを勝利の証として持ち帰ったのである。混沌から生まれ、想像を超えた力を内包する槍、カランシルの穂先はドラゴンの目を貫き、深く喰い込んだ。
 そして、ついにドラゴンは傷を負い、初めて苦痛という感覚を知った。傷口からは、夜のように真っ黒な、溶鉄よりも熱い血がどろどろと流れ出た。ドラゴンは悲鳴を上げながら激しく暴れ、全父の拘束はほどけてしまった。ケーナリュンが握るカランシルの柄は折れ、ドラゴンは地底の棲家に逃げて眠りについた。それ以降、ドラゴンが起きたことは一度もない。今も竜祖の目にはカランシルの穂先が残ったままであり、流れ出る高温の血が地中の空間を埋めている。ドラゴンが再び目覚めたとき、地界は滅び、死さえも死ぬことになるだろう。

 

 地上では、全父と父の同胞神たちが新たに生まれた太陽を驚嘆の目で見ていた。彼ら皆が壮絶な戦いに疲れ、全父は深い傷を負っていた。ケーナリュンは以前に渾沌軍団を打ち破り、手に入れた槍の喪失を悲しみ、トゥーリンの斧はドラゴンの血で溶け、使い物にならなくなっていた。それでも、三人の神々は地界の危機が去ったことをとても喜んだ。隠れていたエルフたちも平原に戻り、太陽の下で、ドラゴンを追い払った全父の御名を称えた。
 しかし、一人のエルフ王、無限樹海のシルレストールは不安をあらわにした。
「新しく生まれ、地界を照らす太陽は恩恵を与えてくれる。だが、その光は私の心に影を落とた。  ドラゴンが再び目を覚まさないと誰が言えるのだろうか。破壊された都市が元の栄華を取り戻しても、私たちは眠れる恐怖に脅かされたままだろう。この暗い影から逃れるにはどうすれば良いか?」
 全父は長く、静かに考え込んだ。するとドワーフの父、トゥーリンが口を開いた。
「恐れることはないぞ、森の子供たちよ。おぞましい獣は地上に破滅の影を落としたが、同時に何よりも光り輝く存在、太陽を生み出した。その光はすべての影を飲み込むであろう」
 トゥーリンは折れたカランシルの柄を拾い、自分の子供たちが待つ、地底の石窟に向かった。ここで鍛冶の神は最高の鍛冶仕事を始める。

 

鍛冶神トゥーリンの御業
〈シャドウベインの製造〉

 

 地界における四つの時代にわたり、一日も欠かすことなく、ドワーフたちはシャドウベインの製造をたたえる歌を歌い続けてきた。

 

 悲嘆平原を去った後、トゥーリンは地底のハガンドゥール石窟に帰った。彼の子供たちが築き上げたこの最大の要塞の奥は地界の中心部に位置し、鍛冶場が構えられていた。トゥーリンはここに立ち、七人のフォージマスターを呼び寄せた。彼らは最古のドワーフたちであり、他の誰よりも鍛冶に精通していた。フォージマスターたちは長く働き、地界の骨、つまり鉱脈から金剛鉄、真鋼、真銀を掘り出し、トゥーリンは彼の鍛冶場でそれらが生まれたての太陽のように光るまで熱した。

 

 トゥーリンはドワーフたちが集めた金属を溶かし、混ぜ合わせた。そして、それに強大な力を秘めるカランシルの柄を加えた。この柄を構成していた成分は、宇宙の外にある暗黒元素から生まれ、虚無を内包する混沌であった。トゥーリンの鍛冶場から、二度と作られず、命名で識別されることのない、地界の歴史における最高の合金となる溶鉄が出来上がった。トゥーリンは鍛冶に励みながら荘厳な歌を歌い、溶鉄に自分の力の源である土の力を注いだ。
 型に注いだ溶鉄が固まり、ひとつの鉄芯になると、型は壊れた。トゥーリンはその鉄芯を取り、太初の金床に載せ、刀身を鍛え上げる作業を始めた。鉄芯はあまりにも堅く、白くなるまで熱したにも関わらず、トゥーリンの鎚でもまったく形を変えることができなかった。トゥーリンは鎚を片手から両手に持ち替え、鉄芯を押さえる火ばさみは七人のドワーフたちに持たせた。そうしなければ、トゥーリンが振り降ろす鎚の衝撃を受けきれないためである。鉄芯は百万回も叩かれ、火床で熱され、折りたたまれ、そして、また槌で叩かれた。その間、ドワーフのフォージマスターたちはトゥーリンの鍛冶をよく観察して学び、自分たちの父の技能を称える讃歌を歌った。

 

 強力な刀身が鍛え上がると、まだ冷えていないにも関わらず、トゥーリンはそれを左の素手で持ち、地底に出発した。刀身は熱で輝き、暗い地底を松明の様に照らした。そして、トゥーリンは片方の目から血を流しながら眠っている、ドラゴンの棲家に着いた。
 トゥーリンはドラゴンの血が川のように流れる場所を見つけ、そこに刀身を浸した。白熱した刀身を握っても火傷を負わないトゥーリンの手でさえ、ドラゴンの血に触れては無事で済まなかった。おぞましい血により、トゥーリンの手は骨が見えるまで溶けたが、それでも鍛冶神はたじろがず、刀身を血に浸し続けた。血の川から刀身を抜いた後、左手に深手を負ったトゥーリンは手袋をはめた。ドラゴンの血に浸された刀身の色は、闇よりも濃い黒に染まっていた。

 

 刀身が完成した後、トゥーリンは子供たちにマローグを探しに行かせ、自分はハガンドゥールに残り、兄弟に贈る物を作った。ドワーフたちの捜索ははるか遠くの場所にまでおよび、海の側でとある洞窟に入ったとき、闇の中にいて、火傷で醜くなった顔を隠しながら、苦痛に悶えているマローグを見つけた。知らせを聞いて、トゥーリンはすぐさまマローグのもとに駆けつけたが、以前の面影がない兄弟の顔を見て、胸を痛めた。槌で岩を砕くように、鍛冶神は戦争神の心を覆う悲しみをすぐに取り除きたかった。
 マローグは嘆いた。
「私の妻は死に、思い出深い黄金月も消え去った。何の為に生き続けることができようか」

 

「生きている事自体が生きる理由だ」
 鍛冶神は答えた。
「私は妻に恵まれなかったので、あなたの悲しみを知ることはできない。だが兄弟よ、あなたはまだ生きている。それはあなたが死ぬ日までの慰めになり、ウォリアンドラはあなたの心の中で生き続けるだろう」
 そう言って、トゥーリンは彼が金と銀で作った見事な仮面をマローグに渡した。
「これを着けるのだ、兄弟よ。そうすれば、地界に住む誰もがあなたを最も美しい神として認めざるを得なくなる」
 トゥーリンの言葉と贈り物によって、マローグは傷ついた魂を癒され、マローグもトゥーリンに贈り物を渡した。それはウォリアンドラの形見となる一束の黄金色の毛髪である。黄金月がドラゴンの炎に焼かれたとき、唯一無事だったものは、彼がきつく握り締めた妻の髪だけだった。
「これほど大事なものをくれるのか」
 トゥーリンは身を震わせながら言った。
「これはあなたの妻の仇を討つために使うだろう」

 

 トゥーリンはマローグと別れ、ハガンドゥールに戻った。トゥーリンは彼の鍛冶場で女神の黄金の髪を加工し、鋼よりも丈夫な、輝く針金を紡いだ。火床で針金を溶かし、それを混ぜ合わせて作った柄は目がくらむほどの光を放った。トゥーリンは歌い、その歌は柄に光と秩序、さらには力を巻きつけた。柄が仕上がると、柄と刀身は繋がれ、失われた黄金月と新しく生まれた太陽の光が発生した。
 刀身には、七人のフォージマスターたちが生涯をかけて作り上げた、力のルーンが七個埋め込まれた。トゥーリンは地界の骨で刀身を鋭く磨き上げた。刀身の闇と柄の光は均衡を取った。魔界の槍、カランシルはトゥーリンの意思によって新しい形を与えられたのである。

 

 トゥーリンの鍛冶が終わり、剣を試す時が来た。トゥーリンは剣を高く振り上げ、太初の鍛冶場の中核である彼の金床に向けて振り下ろした。すると、強烈な光が発生し、雷鳴のような音が響き、地界そのものが揺れた。ドワーフたちは吹き飛び、彼らが起き上がった後に見たものは、真っ二つに割れた金剛鉄の金床だけでなく、みかげ石の床まで切り裂かれていた。ドワーフたちは剣の力に息を飲み、静寂が流れ、トゥーリンが口を開いた。

 

「私がこのような奇跡の鍛冶を行うことは二度とない」
 トゥーリンは自分の子供たちに言った。
「私が再び槌を握り、金床を打つことはない。我が鍛冶の日々は終わったのだ」
 ドワーフたちは父の言葉に悲しみ、トゥーリンは話を続けた。
「我が子供たちよ、私が教えた技を忘れず、多くの新しい鍛冶場を作るが良い。この剣の様に素晴らしい武器を揃え、再びドラゴンが目覚める時に備えよ。全父の子供たちに勝利をもたらすために」
 トゥーリンは剣を取り、鍛冶場を出て、ハガンドゥール石窟を去った。その日以来、トゥーリンの子供たちは太初の金床を想いながら父親の言いつけを守り、武器を作り続けてきた。

 

 トゥーリンが再び地界の表面に戻ったとき、彼は大地の草木が広大な範囲にわたり枯れていたことを見つけたが、それは新しく生まれた太陽の熱が原因だった。トゥーリンはエルフたちを長く探し回らなければいけなかった。なぜなら、彼らは悲嘆平原から遠くに離れ、太陽の被害を受けていない、薄暗い森に移住していたからである。そして、トゥーリンはシルレストールが星の玉座に君臨する新しい都市、カラスガルリノンを訪れた。
 シルレストールはトゥーリンを歓迎して壮大な式典を挙げ、鍛冶の神に現在のエルフたちが闘争の最中にあることを報告した。ドラゴンが目覚め、地震で都市が崩壊したとき、第一妖人王と同時に王位の継承権保持者たちも全員が命を落としたため、地界の花咲ける国の民は四つの勢力に分裂し、覇権を争っていたのである。
 しかし、トゥーリンはエルフの戦争に少しも興味を示さなかった。トゥーリンは、以前シルレストールと結んだ約束を果たしに来たと言った。それは太陽の熱と光が初めてヘンナンガルロラヒを照らした際に、シルレストールが眠りについたドラゴンへの恐怖を嘆いたときのものである。トゥーリンが奇跡の剣を抜くと、夜の闇を思わせる真っ暗な刀身と太陽のように輝く柄が現れ、エルフたちは息を飲んだ。

 

「これほど強力な剣が作られることは二度とないであろう」
 トゥーリンは言った。
「まさしく虚無を退ける光である。混沌の槍に秩序を込めた。私が作り上げた武器は誰にも破壊できぬ。刀身は大地の力と炎の怒りを内包し、さらにドラゴンの血で焼き戻された。柄の放つ光は、ドラゴンの炎に焼かれ、無くなった黄金月と同じものだ。刃はドラゴンの鱗さえ軽々と貫き、竜祖の肉体を切り裂くであろう。もはやドラゴンの影は恐れるに足らず。エルフ王よ、今あなたとあなたの民は救われたのだ」

 

 シルレストールは大いに喜び、剣を受け取った。
「余はこの剣をシャドウベインと名付ける」
 エルフ王は言った。
「至高の刀身と柄があらゆる悪を滅ぼさんことを」
 トゥーリンはエルフの森を去り、地界の表面と地底にまたがる長い旅を始めた。

 

血であがなわれる罪
〈エルフの裏切りと全父の怒り〉

 

 シルレストールの統治下にある民族は自分たちを凍土貴人、彼らの言葉でダールヘレグア人 と呼んだ。この名称の由来は、彼らが長い冬と冷たい風の領域、北方に王国を建てたことにある。王の証として、シルレストールはシャドウベインを常に持ち運び、剣は彼の民に白夜を内包する光を思わせ、第二の太陽と呼ばれた。この別離期では白夜王国が四つの大国に別れ、それぞれが大望を抱き、覇権を争ったことが記録された。
 ダールヘレグア人は最も強力な勢力であり、彼らの呪術師たちは創造と破壊の技を探究していた。次第にダールヘレグア人は退廃的になり、彼らの心には悪が芽生えた。そして、シルレストールは太陽が出来たときに滅びた白夜王国の復活を夢見るようになった。
 シルレストールは彼と同じエルフの国々に対し侵攻した。自ら陣頭に立ち、シャドウベインを振るうシルレストールを相手にしては、どのような戦士も呪術師も歯が立たなかった。悪を滅ぼすために作られた希望の剣は、やがて殺りくと破壊の剣として恐れられるようになり、美しいものや正しいものは次々と失われていった。太陽の子供たち、ハリーンヴィーリーは砂漠に留まることを選んだため、彼らだけはシルレストールの悪意から逃れられた。シルレストールは第二の統一国家、不滅帝国の樹立を宣言し、その支配者となった。

 

 不滅帝国は白夜時代の後半部に成立し、その後も長く存続していった。いつしか、ドラゴンの恐怖は忘れ去られ、多くのエルフたちが全父を軽蔑するようになった。それだけでなく、彼らは全父を非難し、全父がドラゴンの眠りを妨げなければ、膨大な数のエルフが命を落とさず、今でも生きていただろうと言った。彼らは憎たらしい太陽が生まれたのも全父の責任だと唱え、美しい永遠の白夜が喪失したことを嘆いた。放浪父こと全父とエルフに血の繋がりがあるというのはまったくの嘘であり、そもそも最初から全父に奉仕する義務がなかったとも言い広めた。
 ここに大背教が始まり、不滅帝国のエルフたちは全父の神殿を放棄し、代わりに狡猾な狼の主、暴力的な熊の主、意地悪な蛇の主などの獣主たちを信仰した。エルフの呪術師たちは虚無界が隔てる魔界と交信し、境界圏の奥にいる悪魔たちを呼んで取引した。

 

 全父は公平で賢く、心優しい神であったが、エルフたちの傲慢さには我慢がならなかった。ついに全父は再び不滅帝国に降り立ち、エルフたちを戒め、正しい信仰に立ち返らせようとした。しかし、エルフたちは全父をあざけり、全父を死なせるか永遠に遠ざけるために、獣主の化身たちを呼び出した。
 狩猟神ケーナリュンとすべてのケンタウロスが全父の救援に駆けつけ、ここに壮絶な戦いの幕が切って落とされた。全父は天使の軍団を召喚し、獣主たちと自分が戦うときに、エルフたちに介入させないようにした。化身と化身が争い、そこから離れた場所で、人を作りし神は素手で獣主たちを次々と降参させていった。この戦争は地界の歴史上まれに見るほど凄惨であり、その期間は征獣期と呼称されている。
 シルレストールの持つシャドウベインは恐るべき力を発揮し、天使たちでさえ立ち向かう術はかった。和天使として知られるロロミールはシルレストールに殺された。ある学者は言った。このとき、未来の平和は彼の命と共に消滅し、地界の闘争も苦痛も永遠に続くようになったのだと。

 

 シルレストールが全父に向かったとき、彼の手は天使の生暖かい血に塗れていた。全父はこうかつな狼の主と死闘を演じていたため、背後からシルレストールが迫っていたことに気づかなかった。シルレストールは地界の創造者を殺そうと、シャドウベインを振り上げたが、全父に最も忠実な同胞神、鍛冶神トゥーリンはそれを見落とさなかった。間一髪トゥーリンは左手で攻撃を受け止めた。その手は以前にシャドウベインの製造で痛めたものだった。シャドウベインは深く食い込み、トゥーリンの左手を手首から切り離した。またしてもシャドウベインは製造者を裏切ったのである。
 トゥーリンはひるまずに右手を伸ばし、シルレストールの喉を掴むと全力で締め上げた。シルレストールは気を失い、シャドウベインを地面に落とした。トゥーリンは剣を拾い、一撃でシルレストールの頭と胴を分断した。トゥーリンは口を開き、
「最も下劣な裏切り者よ、おまえはこの剣がすべての悪の滅びとなることを望んだ。そして、今おまえの望みがかなった」
 と言い放った。

 

 苦しい戦いを経て、全父は獣主たちに勝利し、父の最初の子供であるエルフたちの裏切りを終わらせた。全父はエルフたちの悪行を叱責し、彼らには二度と地界の統治を任せないと言い放った。全父は父の真の子供、人を創造するために旅立ち、エルフたちには反省をさせることにした。トゥーリンは不滅帝国のどのエルフにもシャドウベインを持つ資格はないと言い、彼らから剣を取り上げた。多くのエルフが全父への信仰に戻ったが、彼らの心には敗北による憎悪が渦巻いていた。
 こうして大背教が終わり、同時にダールヘレグア人の権勢は衰えた。のちに海のエルフたち、西方のグワリドルン人が不滅帝国を支配することになった。真銀の冠をいただき、海の民を治めていたエルフは、第一妖人王からとった名前を持つ王、海王ギリアンデアであった。ギリアンデアは強力な王であったが、尊大な人物でもあり、このエルフも全父の言葉を軽んじた。
 のちに全父が作り上げた人の始祖、ティーターンたちが聖地アルダンを築くと、エルフたちは弟ともいえる種族に嫉妬し、長期にわたる戦争を仕掛け、最後には恐ろしい呪術をかけた。人の子は理性と知性を喪失して獣のようになり、エルフたちの奴隷にされた。人が自由を獲得するまでの伝承も長く凄惨なものあり、エルフたちには腹立たしさを覚えるが、この話は別の機会に紹介しよう。

 

 シャドウベインがどうなったかというと、トゥーリンは征獣の平原から剣を持ち運んでいたのである。トゥーリンはドワーフたちの住む地底石窟に現れ、信頼を置く自分の子供たちにシャドウベインを預けた。ドワーフたちはトゥーリンの帰還を喜び、シャドウベインを武器庫に保管した。この武器庫には満杯になるほどの武器が収納されていて、それらは以前に父である鍛冶神が旅立った後、彼の命令でドワーフたちがずっと作り続けていたものである。
 七人のフォージマスターたちは、自分たちの師匠でもあるトゥーリンに向上した鍛冶の技を披露し、
左手を失った父のために、美しく力強い銀の義手を作り上げた。トゥーリンはドワーフたちの贈り物に喜んだが、彼が鍛冶の鎚を取ることは二度となかった。トゥーリンは再びハガンドゥールを去り、誰も知らない道を歩き、姿をくらませた。
 こうしてドワーフたちはシャドウベインを保管し、地界の歴史から隔絶されながら、剣は武器庫の中で光り続けた。ベレディアの息子、ベレガンドが警備の目を盗み、シャドウベインをハガンドゥール石窟から持ち出すときまで、エルフも人も至高の剣が隠された場所を知らなかったのである。

 

 ようやく、シャドウベインにまつわる伝説の終わりから始まりまでをあなたに伝えられた。奇跡の剣は三度闇に消え、二度英雄たちによって取り戻されたのである。

 

 しかし、伝説はまだ結末を迎えていないとも言われている。

 

 

用語一覧

 

《あ》:悪魔(Demon)、アルダン[聖地](Realm of Ardan)
《う》:ウォリアンドラ(Volliandra)、ヴォルリアンス(Vollianth)、宇宙(Universe
《え》:エルフ(Elf)
《お》:狼の主(Wolf)

 

《か》:カエリク・ブラックハマー[聖騎士](Caeric Blackhammer the First Paladin)、神(Gods)、カラスガルリノン(Caras Gallinon)、カランシル(Callanthyr)、カンブリュワン[上級王](Cambruin the High King)
《き》:ギリアンデア[海王](Giliander the Bold)、ギルリアンドール(Gilliandor)、虚無(Darkness)、虚無界(Void)
《く》:グウェアゲリンド(Gwergelind)、熊の主(Bear)、グワリドルン人(Gwaridorn)
《け》:ケーナリュン[狩猟神](Kenaryn the Hunter)、元素(Element)、ケンタウロス(Centaur)、幻竜討伐(Long Hunt)
《こ》:黄金月(Golden Moon)、コラウール(Kolaur)、金剛鉄(Adamant)、混沌(Chaos)、混沌軍団(Hordes of Chaos)

 

《さ》:サエドローン(Saedron)
《し》:シー(Sidhe)、時間(Time)、獅子の子(Son of Lion)、シャドウベイン(Shadowbane)、獣主(Beast Lord)、シルレストール(Sillestor)、白金月(Silver Moon)
《せ》:征獣(Taming)、征獣期(Time of Taming)、西方(West)、全父(All-Father)

 

《た》:ダールヘレグア人(Dar Khelegur)、第一妖人王(First King)、太初の鍛冶場(First Forge)、太初の金床(First Anvil)、第二の太陽(Second Sun)、大背教(Treason of the Elves)、太陽(Sun)、太陽の子供(Child of the Sun)
《ち》:地界(World)、地界の骨(Bone of the World)、秩序(Low)、長子種族(Firstborn)
《つ》:月(Moon)、土(Earth)
《て》:ティーターン(Titan)、天使(Archon)
《と》:同胞神(Companion)、トゥーリン[鍛冶神](Thurin the Shaper)、トゥーリンの子供たち(Children of Thurin)、凍土貴人(High Ice Lords)、ドラゴン(Dragon)、ドワーフ(Dwarves)、 ドワーフの父(Father of Dwarves)

 

《ね》:眠れる恐怖(Lurking Fear)

 

《は》:ハガンドゥール石窟(Halls of Haganduur)、白夜王国(Twilight Kingdom)、白夜時代(Age of Twilight)、破滅の影(Shadow of Doom)、ハリーンヴィーリー(Khalinviri)
《ひ》:悲嘆平原(Field of Sorrows)、人(Man)、人の子(Son of Men)、人を作りし神(Maker of Men)
《ふ》:フォージマスター(Forge Master)、不滅帝国(Deathless Empire)、ブライアラの子供(Child of Braialla)、ブレイドウィーバー(Blade Weaver)
《へ》:ベレガンド・ブレイドシーカー(Beregund Bladeseeker)、ベレディア(Beredir)、別離期(Time of Parting)、蛇の主(Snake)、ヘンナンガルロラヒ(Hennan Gallorach)
《ほ》:放浪父(Vagabond)、星の玉座(Throne of Stars)、北方(North)

 

《ま》:魔界(Chaos)、真銀(Truesilver)、真鋼(Truesteel)、魔神(Dark Lord)、マローグ[戦争神](Malog the Warrior)
《む》:無限樹海(Endless Wood)
《め》:女神(Goddess)

 

《よ》:妖人王(Elf Lord)

 

《り》:竜祖(Terror of Terror)
《る》:ルーン[力の](Runes of Power)
《ろ》:ロロミール(Loromir)

 

《わ》:和天使(Archon of Peace)