さっそく始めよう。
カンブリュワンがモーロックかもしれないということは、論争の的になっているね。もしそれが火教会に見つかれば、きみは火あぶりになってしまうだろう。
それは、陰謀と見なされる問題だ。カンブリュワンが全父じしんだという考え方と、まったく反対なものだからね。多くの人びとがこの概念を信じているけど、父教会はそれを正当なものとみなしていない。火教会の信者たちは強く信じているけど、マローンは見解を発表していない。
ぼくには、この説が欠点をもつように思える。モーロックがシャドウベインを手にいれたのなら、なぜ彼は変装をつづけたのだろうか。不具神が運命の剣をもったなら、彼は他の神がみと戦えたという、疑問が出てくる。
次はもうひとつの疑問、カンブリュワンが全父かどうかを考えよう。ぼくは、なぜ全父がヒトの姿をとったのか、と聞かれたことがある。暗い時代で、無名の神学者たちが信じる説を挙げよう。
歴史のなかで、全父は何度も何度も、破滅的な諸問題を解決しようとしてきた。時間の発明と、天界門および冥界門の建造は、その大きな表れだ。彼は毎回、異なった方法で問題に対処してきた。ヒトの姿で現れたのは、問題を解決するための、新しい方法なのだろう。
どちらのほうが、問題がおきないだろうか。ある考え方が正しいなら、全父は死んだことになる(異端的だ)。しかも、問題を解決できなかったことになる(もっと異端的だ)。きみには、天変地異がおきたことを覚えておいてほしい。それは、世界を揺るがした大きな問題だ。
それがおきたのだから、カンブリュワンは、止めることができなかったことにならないかい。
固有名詞一覧
《う》:運命の剣(Sword of Destiny)
《か》:神(Gods)、カンブリュワン(Cambruin)
《し》:時間(Time)
《せ》:全父(All-Father)
《ち》:父教会(Holy Church)
《て》:天界門(Gate of Heaven)、天変地異(Turning)
《ひ》:火教会(Temple)、ヒト(Humans)
《ふ》:不具神(Maimed God)
《め》:冥界門(Gate of Hell)
《も》:モーロック(Morloch)