シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

バーサーカー[旧版]の物語(Berserker [Old Version] Narrative)

f:id:AzuhikoDaidaiboshi:20190703205008j:plain

聖アラリックのグリーンスワード大修道院における、編集長ことアベラールにより記録された、ヴァンダールンド王国年代記からの引用:

 

(前略)王の護衛兵たちはうろたえた。なぜなら、北方人の軍勢における先頭には、うなり声をあげるベルセルクの集団がいたためである。ベルセルクとは、北方人の言葉で、「憤怒の子」を意味する語である。少なくとも20人のベルセルクたちが攻めてきて、かれらは、目の前にあるものすべてを切り裂いた。親愛なる読者たちよ、これらの恐ろしい戦士たちは、ほんとうに実在しているのです。実際に、筆者ことアベラールは目撃したうえに、ベルセルクたちの養成に用いられる、おぞましい方法をよく知っています。
 残酷な異教徒である北方人たちは、それぞれの村で選んだ子供たちを、穴へ投げ入れる。そして、かれらを初歩的な怒りに抵抗させ、さらに、血および内臓だけが、食事としてあたえられる。痩せたうえに飢えた、不幸な子供たちは、狂暴な犬たちと戦わされる。その後、子供たちは狂気に陥り、苦しむことになる。生き残り、穴から出てきた少数の者たちは、獣に近い存在へ変わっている。つまり、かれらは、血への飢えから虐殺をおこない、泡を吹きながら戦う、醜い戦士たちになったのである。

 

 テオドリック王に従う兵士たちの大多数は、ベルセルクたちの突撃を見て逃げだした。しかし、ランデンハルのオスリックは断固とした態度を保った。そして、かれの手本に習うことで、残りの兵士たちは戦列を維持し、かれらの盾は防壁となった。オスリックの勇気とかれの犠牲により、テオドリック王は血まみれの戦場から脱出できた。しかし、オスリックとかれの部下たちは、狂暴な北方人たちに圧倒された。こうして町は焼き打ちにされ、ベルセルクたちは、兵士たちの血をにぎやかに飲んだ。

 

 ベルセルクたちことバーサーカーたちの姿は、古い記録に残されている。希少かつ残忍な戦士たちであり、超人的な筋力と粗野な性質および、恐怖を感じないことにより、かれらは恐れられていたのだ。本来のバーサーカーたちは、凍てつく北方の出身だ。だが、かれらの血が一滴でも血管に混ざれば、誰でも、憤怒の子へ変われるようになる。このような理由により、バーサーカーたちは、諸破片王国の全土で目撃されるようになった。
 冷血漢ヤルマルが率いた諸軍勢は、上級王の統治における初期に撃退された。その後、侵入者たちの血を引く子どもたちが王国に生まれ、かれらのなかには狂気を表す者たちもいた。当初における憤怒の原因は、病気か血の狂気もしくは、悪魔の仕業だと考えられた。のちに、諸破片王国の人びとは、古代における、ベルセルクたちに関する記録を思いだして、事実を知ることになった。

 

 バーサーカーたちを衰弱させる血への渇望には、単純な起源がある。バーサーカーとなった子供たちは、少年期の終わりに、呼声として知られる幻聴を聞くようになる。呼声は、バーサーカーたちの内側からかれらに呼びかけ、声を聞くように懇願してくる。この声は、大昔に塵になったおれたちの先祖たちが、長い年月を経て、呼びかけてきたものだ。つまり、かれらは、暗黒幕を裂いたうえで、地界に対し、嫉妬および羨望のまなざしを向けているのだ。
 死者たちはひとつのことしか知らない。それは、生きている方が望ましいということだ。そして、先祖たちがふたたび英雄たちになるためには、おれたちの行動が要求される。報復を望む者たちもいれば、生者を妬む者たちもおり、圧政に対して憤慨する者たちもいる。どのような理由であっても、呼声は怒りから生まれたものであり、それを聞いた者たちは無事ではいられない。
 ベルセルクたちが呼声に心身を委ねると、声は憤怒へ変化し、かれらにおける先祖たちの、栄誉ある猛烈な怒りが解放される。バーサーカーたちの筋力は倍増し、痛覚を感じなくなり、打ち砕き、引き裂き、殺すためだけに生きるようになる。あらゆる人間のなかには憤怒が潜んでいるが、かれらの大多数において、それは眠っている。百人のうちで一人も呼声を聞かず、飢えに苦しめられることもない。

 

 おまえは、先祖たちの叫び声を聞いたのだな。それに耐えたいのならば、孤独に歩む覚悟をしなければならず、おまえを人間らしくさせるものを、いくつか放棄しなければならない。人びとはおまえを恐れるようになり、おまえは、高名な騎士たちでさえ驚くような、偉業を達成するだろう。
 だが、気を緩めるな。おれたちがおこなった、激怒と抑制および意思についての話は、憤道の極意だからだ。憤怒に対し、あまりにも早く服従してしまうと、おまえは、火に焼かれるように消耗してしまう。憤怒に対し、抵抗が長すぎると、呼声はおまえを狂気に陥れる。おまえは、決して憤怒をおとなしくさせたり、鎖に繋いだりしてはならない。その代わりに、乗りこなす方法を覚えなければならない。バーサーカーの生き方を選べば、後戻りはできない。死さえもおまえを解放しないだろう。慎重に決めろ。

 

 怖いのか。当然だ。

 

用語一覧(ヴァンダールンド王国年代記

 

《あ》:アベラール(Abelard)、アラリック[聖](St. Alaric)
《う》:ヴァンダールンド王国年代記(Chronicles of Vanderlund)
《お》:王(King)、オスリック[ランデンハルの](Osric of Landenhall)

 

《く》:グリーンスワード大修道院(Greensward Abbey)

 

《て》:テオドリック[王](King Theoderic)

 

《ふ》:憤怒の子(Child of Rage)
《へ》:ベルセルクBerserk
《ほ》:北方人(Northman)

 

用語一覧(バーサーカーの物語[旧版])

 

《あ》:悪魔(Demon)、暗黒幕(Dark Veil
《え》:英雄(Hero)

 

《こ》:呼声(Call)

 

《し》:上級王(High King)

 

《ち》:地界(World)

 

《は》:バーサーカー(Berserker)、破片王国(Petty Kingdom)
《ふ》:憤怒(Rage)、憤道(Path of Rage)、憤怒の子(Child of Rage)
《へ》:ベルセルクBerserk
《ほ》:北方(North)

 

《や》:ヤルマル[冷血漢](Hjallmar the Horrid)