兵士よ、おまえには羽がある。だが、ほんとうの使い方を知らないのは哀れだ。それを学びたいか。
この虚弱な世界で生まれた、すべてのアラコイックスたちは拘束されている。手首と足首につけられた鉄のかせと、両肩に固定されたくびきを視覚化しろ。おまえは、飛行について理解しているつもりだろうが、何もわかっていない。
時間が満ちて、ペリデュールが開かれたとき、おまえには、故郷世界を見る栄誉があたえられる。故郷世界で、おまえは紫色の海と同じくらいに厚い、上昇気流によって飛びあがり、風の抱擁を感じるだろう。そして、おまえは、ほんとうの飛行を知ることになる。
見とおしは厳しいが、おれはおまえの成功を望む。ほんとうのことを言えば、新しい世代のアラコイックスたちが、ふたたび故郷上空で飛行できるかは、わからない。もしも、サヴァントたちの警告が正しいとすれば…。いや、止めておこう。これ以上は秘密だ。
おれは偉大なる鳥鬼帝国の精鋭兵士、スカイダンサーだ。おれの技芸は、おれの仕えた上官から教わったものだ。スカイダンサーの技術を学ぶには、この世界を放棄し、さらに、劣る仲間たちからも離れなければならない。超血統ならびに、至高帝国に対する、家来の地位を抱く必要がある。おまえはフラクシャイヤでの居場所を受けいれ、現実の性質を抱かなければならない。
この世界で生まれたおおくの者たちが、おれたちの生き方を奴隷制度と呼び、かれら自身のものを、最高の自由だと考える。だが、それは誤った信条ならびに、感官から生じた錯覚にもとづく、妄想に過ぎない。おれたちアラコイックスだけが、真実の思想を完成させたのであり、おれたちだけが、宇宙の支配者として適合するのだ。おれたちの運命を成就させるには、至高帝国がもつ理想のために働く、すべてのアラコイックスが召集されなければならない。そして、おれたちにはスカイダンサーが必要になる。
飛行の技術は、羽毛と翼ならびに風よりも重要だ。空中での戦闘には、強い意志が必要になる。翼に受けた苦痛と損傷に耐える意志、そして、体の重さを忘れる意志、さらに、気息と思考を統御する意志だ。おまえには、サヴァントたちが羨むくらいの、意識集中が必要になる。
ハラケーは、最初に意識集中を発見した人物だ。かれによる発見は、おれたちの種族が、フラクシャイヤの崇高な理想形を確認した、覚醒のときよりも古い。翼と意志だけを使い、初めて大洋を横断できたのも、ハラケーだった。
ハラケーは敬われ、かれのもとには、すべての原始的な部族長が集まった。かれの輝かしい手本がなければ、おれたちの種族は統合を達成できず、成功を収めることもなかっただろう。至高帝国の成立にかんして、おれたちは、アラックにも多大な感謝をしている。おれたちは、ハルクシャイヤよりも古い、複数の悪天時代における、すべての神話と迷信を破棄した。だが、ハラケーの伝承が失われることはない。
アラケアンたちはもっとも栄誉を与えられた兵士であり、こんにちの帝国がもつ軍団で奉仕している。おまえに才能があれば、おまえは、想像がおよばない距離を飛行し、さらに、アラケアンがもつ、戦闘技術の秘奥を体得するだろう。
用語一覧
《あ》:悪天時代(Dark Ages)、アラケアン(Aracean)、アラコイックス(Aracoix)、アラック(Arack)
《い》:意識集中(Focus)
《う》:宇宙(Universe)、運命(Destiny)
《か》:覚醒(Awakening)
《こ》:故郷世界(Homeworld)、故郷上空(Homesky)
《さ》:サヴァント(Savant)
《し》:時間(Time)、至高帝国(Glorious Empire)
《す》:スカイダンサー(Sky Dancer)
《ち》:超血統(Heritage)
《と》:鳥鬼帝国(Empire of Aracoix)
《は》:ハラケー(Haracee)、ハルクシャイヤ(Hark'shyia)
《ふ》:フラクシャイヤ(Hrak'shiya)
《へ》:ペリデュール(Peridule)