シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

Assassin Narrative (アサシンの体験記 )

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 知ってのとおり、観察だけでわかることは多い。たとえば、おまえと握手をしたときに、おれは、おまえの指にある傷に気がついた。剣の柄を握ることで生じたものだ。訓練が原因だろう。おまえの握力が強いことも感じとった。おまえが頭を抑える動作は、兜を被っている状態のものにみえる。おまえは、二分間に五回も窓を見た。おまえの右手は何かを持ちたがっていて、落ち着きがない。当ててやろう。おまえは剣を握りたがっている。
 おまえは強いうえに注意ぶかく、豊富な経験をもっている。まさしく模範的な戦士だ。戦場では、おまえはどんな敵とも戦えるが、今回は違う種類の戦いだ。そうでなければ、おまえはおれを必要としないだろう。

 

 おまえの計画を検討したが、少し厄介な内容といえる。緋色連盟の盗賊頭ことエドマンドは、とても裕福であるし、かれの邸宅はまさに要塞だ。おれは仕事を引き受けるが、簡単なものではないと警告しておく。おれは高度な生業を極めているから、この仕事をやり遂げてみせよう。だから、追加料金を用意しておけ。明日の深夜に、エドマンドを10分以内に殺せば、それでいいんだな。
 おれたちは攻城戦を計画している。おまえが使ういつもの方法ではなく、攻撃と同時にエドマンドを排除する、ずる賢いやりかただ。エドマンドの部下たちは間抜けばかりだから、きっとうまくいくだろう。おまえの部下が、おれを、緋色連盟の成員とまちがえるかもしれない。仕事の邪魔をされたら困るから、それは心配している。とにかく、脱出のために、おれは違う出口を選ぶことにする。

 

 おれは、商談の準備ができている商人の格好で、邸宅へ入ることにする。以前に、この変装をしたうえで、緋色連盟と取引をしたことがあるから、ほとんど疑われないだろう。連盟の成員たちに売る、複数の珍しい武器は、おまえが用意してくれ。おれがもつ技術には、一万個におよぶ王冠の価値がある。文句を言わないでくれ、公爵。おまえは、費用の全額を負担すると同意したはずだ。
 とにかく、夕食終まで待つことにして、客室へ案内されたあとに、エドマンドの寝室へ潜入する。心配しないでくれ。おれとって影は身近なものであるし、必要なときには、昼間でも見られずに歩くことができる。おれたちアサシンは、商売に要求される特殊な技術を、いくつも身につけている。エドマンドの寝室に入ったあとは、かれに刃物を刺して、仕事を終わらせる。
 おれは使用人の服に着替えて、騒ぎのなかで身を隠す。そして、おまえは大勢で攻撃を仕かけて、敵たちを震えあがらせてやれ。手間どらずに成功するだろう。エドマンドの警備兵たちに対し、警戒されないようにしておくので、おまえは感謝するだろう。

 

 最後に、前払いの報酬をもらおうか。わかっているとは思うが、おれが目標を達成しても、おまえが、緋色連盟との戦いで負ける可能性はある。それから、もうひとつの困らせる問題がある。先週、エドマンドはおれと接触して、おまえを殺すためにおれを雇おうとした。
 そんなに驚かないでくれ。エドマンドが提示した金額は、おまえのものよりも低かったから、取り乱すな。おれを怖がらなくてよい。もしも、おれがおまえだったら、数日間は慎重になっていた。何を食べて何を飲むのか、そして、どこで寝るのかが、自分の命に関わるからだ。けっきょくのところ、同業者たちの多くはおれとは違い、報酬額の高低を気にしない。一目みたときに、おまえが用心ぶかい人物であることがわかった。じっさいに、そうであってほしいものだ。

 

用語一覧

 

《あ》:アサシン(Assassin
《え》:エドマンド(Edmund)

 

《こ》:公爵(Duke

 

《と》:盗賊頭(Master Thief)

 

《ひ》:緋色連盟(Scarlet League)