シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

Druid Narrative (ドルイドの体験記)

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 こんにちは。警告しておきます。その泉の水を飲めば、あなたは死んでしまうでしょう。この水源と周辺の土地は、暗黒に触れられたことで汚されました。武器を帯びているあなたは、戦いの用意ができているようですね。あなたは、暗黒の気まぐれに奉仕するシェイドこと、黒術者ランスコアーを探しているのですか。わたしはかれではないので、安心してください。恐縮ですが、わたしは、ランスコアーを向こうの塔から追い払いました。あなたの用事は、始まるまえに終わっていたのです。
 昨夜、地母神の子供たちは、ランスコアーが自然調和を転覆させたことに対し、抵抗しました。わたしの呼びかけに応じて、獣と木および石が、かれに立ち向かったのです。ドルイドとして、わたしは、汚染された渓谷を放っておけませんでした。戦いは見事なものでしたが、残念ながら、勝利は空虚なものでした。なぜなら、ランスコアーがふたたび地界を歩くことは、確実であるからです。しかも、この源流が清らかさを取り戻すには、長い年月がかかるうえに、すべての命が土から去ったためです。

 

 生命。それは、わたしたちの周りのどこにでも存在します。しかし、たいていの人びとは、自分たちじしんの、小さな部分に夢中になっています。つまり、周囲にあふれている、生命の海を見れていないのです。もしも、見ることができていれば、人びとは思いだすでしょう。食べている食物と踏みつけている草、および、耕す地面と吸いこむ空気、これらのすべてが生きているのです。
 地界における大多数の人びとが、全父を崇敬していますが、かれらは母がいたことを忘れています。地界の地母神ことブライアラ女神のことです。しかし、かの女を忘れていない者たちもいます。わたしたちドルイドは、乱雑に広がる諸都市から遠く離れたところで、古代の讃美歌をうたいます。現在でも、全生命の母を崇敬しているのです。わたしたちの伝統は原始宗教であり、田畑および王国よりも古く、最初の日光よりも古いものです。
 全父の愚かさにより、ヒトは、母なる地界の主人たちとして、かれに造られました。しかし、大地の果実と獣の肉によって、わたしたちの体は養われています。それなのに、どのようにして、わたしたちが大地から離れられるでしょうか。わたしたちは地界に帰属しているのです。自然における一切の事物と調和し、そのうえで生きることのみにより、ほんとうの悟りを得られます。このようにして、大いなる自然調和のなかにおける、自分の立場を理解できるのです。

 

 わたしを怖がる理由はありません。村人たちによる、ドルイドたちについての、恐ろしい噂話を聞いたことがあります。村人たちの話によれば、わたしたちは常人ではなく、エルフの血を引く怪物です。そのうえ、幻想森林の悪妖人たちと同様に、真夜中に赤子たちを盗むそうです。わたしたちによる異教の儀式には、人間の犠牲がともなうともいわれています。
 これらは単純な妄想であり、怯えた人びとによる嘘です。わたしたちは、神をもたない異教徒ではありません。わたしたちも、全父の名前を崇敬しています。春女神とも呼ばれる地母神がもつ、配偶神としての御父を賛美しているのです。全父を特別には優遇していないという、違いはありますが。わたしたちを恐れないでください。わたしたちは地界を癒し、若返らせることで、自然循環の修復に努めています。それだけなのですから、わたしたちのことは放っておくか、もしくは援助してください。

 

 生と死と転変。自然循環は、宇宙における諸魂の移動を規定します。そして、それは、地界の基礎としてだけでなく、ブライアラによる賜物としても、役割をもっています。天変地異がおきた暗い日に、永遠の自然循環は中断されて、すべての自然調和が失われました。生と死は残存していますが、転変はなくなってしまいました。死者たちの魂は、自然循環にもとづく移動がおきなくなったのです。初めのころ、死者たちの魂は、全生命の敵である不死者の姿へゆがめられました。
 わたしたちドルイドは、暗黒の影響を抑制できました。生命の樹に名前を刻まれた者たちが、樹を利用して、死後に新しい肉体を着る方法が、発見されたからです。このようにして、不死者たちによる脅威は減少しましたが、自然循環の修復は終わっていません。残念ながら、生命の樹では問題を解決できませんでした。なぜなら、わたしたちの敵も転生を繰り返すため、殺戮および蛮行の時代が始まったからです。
 この暗い時代に生きる無知な人びとは、死そのものが死んだと考えました。そして、かれらは、望むときに何でもおこない、望むときに殺し、望むときに奪うようになったのです。あなたに聞きます。もしも、死者たちの魂が高次の世界へ昇れないとしたら、地界はいつまで耐えられるでしょうか。死者たちの魂で飢えを満たせていない、外界に横たわる闇は、いつまで静寂を保つでしょうか。

 

 しかし、これらの深刻な問題に、あなたは関心をもっていないでしょう。あなたに頼みがあります。この場所から離れて、会う人の全員に、この渓谷に近づかないように言ってくれませんか。ここの治癒は長期におよぶでしょうから。
 行きなさい。あなたが獣たちに襲われないことを保証します。あなたの帰り道は晴れるでしょう。わたしを疑うなら、向こうの塔へ行き、ウィザードがいないことを確認しなさい。気になるのであれば、ランスコアーが別の渓谷で生命を奪うまえに、かれが属する生命の樹を探しなさい。もしも樹をみつけてくれたら、あなたへ借りができることになります。

 

用語一覧

 

《あ》:悪妖人(Fey)、暗黒(Darkness)
《う》:ウィザード(Wizard)、宇宙(Universe
《え》:エルフ(Elf)
《お》:王国(Kingdom)

 

《か》:外界(Outside)、神(God)
《け》:原始宗教(Old Ways)、幻想森林(Enchanted Wood)

 

《し》:死(Death)、シェイド(Shade)、自然調和(Balance)
《せ》:生(Life)、生命の樹(Tree of Life)、全生命の母(Mother of All Life)、全父(All-Father)

 

《た》:魂(Spirit)
《ち》:地界(World)、地母神(Green Mother)、地母神の子供(Child of Green Mother)
《て》:転変(Transformation)、天変地異(Turning)
《と》:ドルイド(Druid)

 

《は》:配偶神(Consort)、春女神(Bringer of Spring)
《ひ》:ヒト(Man)
《ふ》:不死者(Undead)、ブライアラ(Braialla)

 

《や》:闇(Dark)

 

《ら》:ランスコアー〔黒術者〕(Lanscorr the Black Wizard)