シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

Scout Narrative (スカウトの体験記)

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 さあ、よく聞いてくれ。谷を抜けた先には、東へとつづく二本の道がある。左のほうは楽に見えるが、実際は違う。ここから半マイルほどのところで、傾斜がきつくなっているからな。反対側の道へ、あんたの部下たちを連れていけ。その先には川があり、橋は壊れている。心配しないでくれ。おれは、北へおよぶ浅瀬を見つけた。そこは、兵士と馬および荷車の全部が通れる、十分な広さがある。
 橋の向こう側では、オスリックの兵士たちが待機している。40人の弓兵が茂みの中に隠れているが、かれの本隊は、林の向こうにある牧草地で野営している。そっちじゃなくて、あそこの林さ。そこでは、パイク槍と革の鎧を帯びた、みずぼらしい兵士たちがいる。簡単に蹴散らせるようにみえるが、あれは罠さ。オスリック本人は牧草地の端に隠れていて、精鋭の諸部隊と一緒にいる。
 やっかいな連中さ。重騎兵たちと残りの弓兵たちがいる。さらに、刺青をした者たちも数人いるが、おそらく、かれらは攻撃用の呪文を使う。敵の兵士たちがしていた会話を、少し盗み聞きした。かれらは、おれたちを待ち伏せているだろう。だいたい、そんなところさ。見事な仕事だろう。スカウトであるおれを信じないなら、自分の馬で見に行け。

 

 あんたとはうまくやれそうだな。お、こんなに支払ってくれるのかい。おれは、10歳のときから、森の中で一人で暮らしてきた。獣道を走れるし、髪にいくつもの葉を結びつけれる。顔を見られないないようにするため、そこに、緑および茶の塗料を塗る方法も知っている。複数のブライア樹が生えている場所でも、痕跡を残さず、音を出さないように、這い進むことができる。
 おれはロヴァイル市の通りで育ち、あんたの想像どおりに貧乏だったから、ずる賢くなった。街から追い出されるまでは、狭い窓から忍びこんで、きしむ廊下を歩いた。そうやって、おれは鋭い感覚を養ったのさ。1リーグ離れた場所からでも、枝の上にいるリスを見逃さない。飛んでいるフクロウの羽音を聞き逃さない。おれは、狼だけでなく、野人たちにも遭遇しないし、誰にも発見されない。

 

 おれは、さまざまなスカウトと仕事をしてきた。そのなかには、森の住人や農夫の息子にくわえ、オークの血が混じっているようにみえる、不細工な奴もいた。おれのように、森にずっと住んでいる者たちもいれば、そこへ来たばかりの者たちもいる。とはいえ、スカウトの素性はどうでもよいことだな。おれたちが仕事をすれば、あんたは必ずうまくやってくれる。
 軍隊にスカウトがいなかったせいで、馬鹿たちが殺されたのを、何度も見た。スカウトたちのなかには、貴族や僧侶もしくは氏族などの、特定の主人に仕える者たちがいる。しかし、たいていのスカウトたちは依頼者たちのあいだを渡り歩き、人目を忍びながら世界を見ている。
 優秀なスカウトには黄金いじょうの価値がある。おれを信じてくれ、指揮官さん。あんたは最高のスカウトと仕事をしている。オスリックが昼食をとる机に置いてあった、かれの兜を盗むか考えた。あんたに持ち帰る賞品としてさ。だが、危なかったからそれは止めて、警備兵たちに気づかれないように戻ってきた。おれが発見されていたら、あんたがオスリックの居場所を把握していることが、かれに知られてしまう。しかたないから、兜を持ってこなかったのさ。

 

 仕事の話に戻ろう。オスリックの予想によれば、あんたが谷を登ったときに、かれの軍隊と衝突する。おれたちが北の浅瀬へ向かえば、オスリックの弓兵たちはそれを見るだろう。別の方法も提案できる。軍を引いて、北にある岬へ向かえ。そっちじゃなくて、林のある岬さ。そうすれば、おれたちの位置が知られるまえに、浅瀬を渡ることができる。つまり、オスリックの予備兵力に対して、大打撃をあたえられるってことさ。
 差し出がましいことを言うが、これが最適な作戦だろう。いずれにせよ、決断は早いほうがよい。北方世界に雪が降るのと同じように、とうぜん、オスリックもスカウトたちを使っているからな。おれたちのこととあんたの兵力は、そのスカウトたちに調べられている最中さ。

 

用語一覧

 

《お》:オーク(Orc)、オスリック(Osric)

 

《す》:スカウト(Scout)

 

《ほ》:北方世界(North)

 

《や》:野人(Wyldkind)

 

《ろ》:ロヴァイル市(Rovayle)