シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

Warlock Narrative (ウォーロックの体験記)

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 恐れるな。返事をしなくてよい。おれの声は、おまえの周りには聞こえていない。違う。おれは幽霊ではないし、おまえの気が狂ったわけでもない。おまえの聞いている言葉は、音声ではない。おまえは、おれの思念を聞いている。おれが、おまえの思念を聞いているのと同じだ。周りを見るな。おれをみつけることは不可能だ。おまえが逃げたとしても、すぐにみつけてやる。安心しろ。1リーグより離れた場所からでも、おれは、おまえの思考を感じとることができる。
 もう一度いう。恐れるな。危害を加えるためではなく、可能性を示すために、おまえを探し出した。おれは、おまえを自由にするために来たのだ。

 

 おれのことか。おれは、自己と自分の心の両方の主である、ウォーロックだ。おれの名前は言わない。おまえ自身で感じとってみせろ。それが最初の試験だ。合格すれば、おまえは、悟道に専念することになる。訓練を重ね、ウォーロックになれたことを証明すれば、超越者軍団の一員として迎え入れられるだろう。おれの姿が見えなくても、おまえは、おれの名前を知ることができる。おまえには才能があるからだ。
 すべてを変えた天変地異がおきたあと、あらゆる種族のなかから、超感覚とともに生まれる者たちが現れた。この資質は、意思と知覚の希少な結合といえるものであり、ウォーロックたちを幻影の檻から脱出させる。地界における、大多数の思考する生き物たちは、幻影により、可能性を制限されているのだ。
 ウォーロックたちが意思と意識集中を使い、他者の心を変えるように、おれたちの超越者軍団は地界を変える。そして、過去の間違いを一掃して、新時代を築くのだ。諸神の干渉は終わった。おれたちが地界の正当な支配者であることを、知らしめる時が来たのだ。
 超感覚を得る者たちには、二つの種類がある。ひとつは、いつのまにか肉体の使い方を究め、意思だけで、痛覚の無視と筋力の増強の、両方をおこなう戦士たち。もうひとつは、研ぎすまされた意識をもち、鋭い直観をとおして、どのような質問にも答えられる、呪術師たちだ。両方の才能を昇華させなければ、ウォーロックにはなれない。

 

 おれの名前を知りたいのであれば、まずは、おまえがおまえ自身の知覚に集中し、その方法を究めなければならない。
 別の課題を出す。おまえは酒場にいるが、そこにいる人びとの人数はわかるか。知っておくべきことがある。酒場に入ったとき、おまえは全員を目視したが、忘れてしまった。なぜなら、おまえの心が、それを必要な情報とみなさなかったからだ。
 類似する複数の例を挙げる。一歩を踏み出すたびに、通りすぎるときに見たすべての顔は、忘れさられる。おれたちの心は、心じたいが、肺に呼吸をおこなわせたことを忘れ、意識せずに心臓を鼓動させたことも、忘れる。心の一部である知覚は、見たものすべてを定義してしまううえに、ゆっくりと動く。つまり、知覚は、幻影という檻の管理者だ。
 では、問題に戻ろう。酒場にいる人数を答えろ。ただ単に知ろうとはするな。正解だ。瞬時に知識を引き出すために、意思と意識が、どのように協働できるかを理解したな。
 ウォーロックは、他者の思考を読めるだけでなく、音声を使わずに言葉を伝達できる。さらに、敵のとる行動の予測が可能だ。意思と知覚をとおして、肉体を操作することで、ウォーロックは迅速に動けるようになり、強烈な物理攻撃もおこなう。この技術は、苦痛の除去にも応用できる。思考と意図の、敵がもつ両方を把握することにより、ウォーロックは敵を圧倒できる。
 熟練したウォーロックの意思は、他者の心にはたらきかけて、激しい雑念を生じさせることにより、相手を錯乱に陥らせる。そのうえ、他者を完全に支配することも可能だ。最も優れたウォーロックたちは、かれらの意識を、高度な水準にまで到達させる。そして、物質的な体から心を切り離し、非物質的な形態で、壁や障害物に阻まれることなく、世界中を放浪するのだ。
 試験に合格すれば、これらの技術がおまえを待っている。おれの名前を答えられるか。

 

 推測は役に立たない。おまえは答えを知っているはずだ。意識を引き出して、意思に集中しなければならない。おれの声に聞き覚えがあるだろう。よくやった。おまえは覚えていたのだ。おれがおまえの父を訪ねたとき、おまえはまだ2歳の子供だった。おれは、長いあいだ、おまえを見ていたのだ。そのとおりだ。おれの名前はハロドンだ。おまえの父に、この名前を言った。
 おまえの意思と知覚は、準備ができている。おれたちから学びたいなら、酒場から出ろ。ただし、この提案は一度しかおこなわない。拒否すれば、おまえは、本来の可能性を否定することになる。周囲の人びと同様に、愚か者の一人として、限られた人生へ戻るのだ。
 未来はおれたちのものだ。

 

 心を開き、おれについてこい。

 

用語一覧

 

《う》:ウォーロック(Warlock)

 

《か》:神(God)
《け》:幻影(Delusion)
《こ》:悟道(Path of Focus)

 

《し》:新時代(New Age)

 

《ち》:地界(World)、超越者軍団(Order)、超感覚(Gift)
《て》:天変地異(Turning)

 

《は》:ハロドン(Hallodon)