昔に、命の限られている者たちは、地界の外に位置する暗い冥界を、初めてのぞき見た。そのとき以来、外界の諸生物を繁殖させて空腹を満たす、邪悪な諸力に対して、奉仕することを望む者たちが存在する。一人目のヴァンパイアは、モラエナルスとも呼ばれる、十三人衆のあいだから現れた。かれらはエルフの異端者たちであり、冥界の意思に触れて、死霊術の基礎を構築した。
その後、十三人衆の用いていた、忘れ去られた秘術を探し出し、饑渇暗黒と契約を結んだ者たちもいる。人の子のあいだでは、現在でも恐ろしい逸話が伝えられている。諸神への信仰を捨てた、黒い魂をもつ者たちが、意図の有無にかかわらず、冥界の関心を引くというものである。死亡した瞬間に、闇は、対象となる死者たちの中に根を下ろす。そして、契約および儀式をともなわずに、かれらをヴァンパイアへ変容させる。
作られた方法が異なっていても、ヴァンパイアの全員には共通の目的がある。それは、アエアインスへ闇を呼びこんで、すべての光を消すことである。さらに、かれら自身が、息を吸いこむ者たちにとっての、死になることである。
現代よりも古い二つの時代にわたって、文明圏から遠く離れた枯れた土地に、少数のヴァンパイアが潜んでいた。しかし、暗黒侵攻が開始されたとき以来、アエアインスを歩くヴァンパイアの人数は、急激な増加をみせている。
昔のヴァンパイアたちは、僻地の砦から策謀をめぐらせ、それに満足していたが、現代では、我が物顔で歩き回るようになった。かれらは恐怖および争乱を拡大しており、血液を飲みながら、複数の骸布教団を先導している。そして、アエアインスの終末が迫っていると、人びとに宣伝しているのである。
大多数のヴァンパイアは、かれらの出自である、諸種族としての自認だけでなく、過去における血縁関係も放棄する。闇は、ヴァンパイアに新しい力と誕生をもたらし、かれらが歩んできた人生の記憶は、完全に消え去る。
ヴァンパイアは、かれらの下等な姿ともいえる、シェイドを使用人とみなし、強い親近感を抱いている。なぜなら、野望の実現に有用と認識しているためである。自分たちのもつ、暗い一面を受けいれたシェイドは、ヴァンパイアを崇敬している。かれらのことを、骸布の向こう側にある闇の使者とみなし、諸神に近い存在と考えているためである。
ヴァンパイアは、あらゆる種類の不死者が近くにいても、平気である。そして、しばしば、悪霊および、腐敗した体をもつもの者たちから構成される、大群を指揮し、生者たちに差し向ける。
ヴァンパイアこと闇夜霊は、生物たちを食料家畜と呼んでおり、家畜に対する方針は別れている。大多数のヴァンパイアは、呼吸する生物たちに対して、軽蔑を向けるだけにとどまる。その一方で、下等な存在の血液に依存しなければ、生存できないという事実により、自己嫌悪に陥る者たちもいる。別のヴァンパイアたちは、生者たちのことを、道具もしくは奴隷とみなしている。そして、強い意思や邪悪な力を使って、対象を魅了し、役立てるのである。
用語一覧
《あ》:アエアインス(Aerynth)、暗黒(Darkness)、暗黒侵攻(Dark Crusades)
《う》:ヴァンパイア(Vampire)
《え》:エルフ(Elf)
《か》:外界(Outside)、骸布教団(Shroud Cult)、神(God)
《き》:饑渇暗黒(Hungering Dark)
《し》:シェイド(Shade)、十三人衆(Thirteen)、終末(Doom)、食料家畜(Cattle)、死霊術(Necromancy)
《ち》:地界(World)
《ひ》:光(Light)、人の子(Son of Men)
《ふ》:不死者(Undead)
《め》:冥界(Void)
《も》:モラエナルス(Moraenarth)
《や》:闇(Dark)、闇夜霊(Nightborn)