昼日の時代(The Age of Days)
ベルガンド・ブレードシーカーの物語、天罰の争乱について
この物語を読むにあたって、読者はすでにシャドウベインを携え、シャドウベインにより悲劇の死を迎えたカンブリン王を知っているであろう。そして、ケアリック・ブラックハマー、最後のパラディンがシャドウベインを不浄の国のリッチ・クイーンより取り戻し、涙の争乱の流れを永遠に変えたことも。ひとつの時代はシャドウベインの伝説においてはごく一部でしかなく、ケアリックのソードクエストより千年の昔、もう一人の英雄がシャドウベインを求めて世界を彷徨った。シャドウベインがレネリンドの戦いで歴史を変えた幾百年も昔にバード達にライトブリンガー(Light Bringer)と呼ばれた剣が、涙の争乱以上に苛烈な大戦の行方を決定づけていた。カンブリンが裏切られたように、シャドウベインを初めて振るった人間も同じ末路を辿ることになる。そう、シャドウベインの伝説は王の時代の前にもすでに伝説となっていたのである。ここにシャドウベインを求める最初のクエストと天罰の争乱(War of the Scourge)の伝承を記す。
シャドウベインの光が2度目に世界を照らしたのは昼日の時代であり、この時代は全界の父の大業績に始まり終わった。昼日の時代には神々がまだ地上を歩き、神の子供達はすべて現在よりも力強かった。この時代から生まれた伝説は数多い。昼日の時代は全界の父が創りだしたジャイアントが、運命の崖(Cliffs of Destiny)に埋め込まれたルーンストーンを壊し、時間と運命が発動したことにより始まったとされる。そしてそれをきっかけとし、全界の父が人間を創りだし、遂に父なる神の世界デザインが出来上がったという。
最初の人間はタイタンと呼ばれ、アーダン(Ardan)という名の楽園を築いた。人間の最初の楽園がどのように繁栄したか、またどのような経緯でエルフの策謀により破滅したかに関する伝承で残っているものは少ない。タイタン達は滅ぼされ、その子供達である人間はエルフの魔力により恒久的に弱められ、エルフの不滅の帝国(Deathless Empire)の下僕として使われることとなる。王族のクロニクルにはこれらの人間が暴虐なエルフの主人の言葉を喋るように再教育され、そして逃げ出し、正義の概念と戦争の仕方を誇り高きケンタウロスに教わった様を綴っている。この頃にはまた、ジャイアントとドワーフのルーンストーンを巡る戦争が始まり、また北地の武人、バーバリアンの誕生もあった。この時代は何人もの英雄や王が活躍した時代でもあったが、その物語は別の話で語らねばならない。昼日の時代の始まりから終焉までのほとんどの間、シャドウベインは人間、エルフいづれの手にも渡らず、地中深くドワーフの洞窟に隠されていた。シャドウベインは昼日の時代の終焉をもたらし、人間を世界を受け継ぐ正統の嫡子と位置づける、天罰の争乱までは地底に眠っていた。
天罰の争乱の始まりについても又、様々な観点からの伝承が残されている。同族から忘れ去られた砂漠のエルフが、ドラゴンを信奉するようになり、世界の破滅を望み、ドラゴンを復活させようと企んだ。砂漠のエルフ達は不滅の帝国(Deathless Empire)のエルフ達により世界に対する反逆行為を罰せられ、イレケイ(エルフ語で追放者の意)と呼ばれるようになり、苛烈な戦闘を5世代に渡り続けることとなる。イレケイ側は次第に疲弊したが、最後の凶悪な抵抗を試み、イレケイの強力なウィザードが太古の魔法を復活させカオスゲートを闇と繋ぐと、ダークロード達に率いられた混沌の魔が無数にゲートよりこの世界に流れ込んだ。闇の魔族達は行く手にあるものを全て破壊し始めた。
ここに世界の存亡を賭した、史上最大の天罰の争乱が始まった。この世界の危機に全ての種族が始めて団結し、エルフ、人間、ケンタウロス、そしてジャイアント達までもが手を結び有史以来の敵対を忘れることとなる。全界の父の子供達の全てがひとつとなったのはこの時だけである。だが、皆の力を併せても混沌の大海嘯を止めることはできず、今後とも類を見ないであろう英雄達が次々と命を落とした。
ベルガンド(Beregund)もそのような英雄だった。
ベルガンド・ブレードシーカーと最初のソードクエスト
ベルガンドはヒルマン(Hillmen)と呼ばれる人々の部族の勇猛な酋長、ベルディアの長男として生まれた。ベルガンドは多くのエルフよりも長身で、髪は黒鳥の羽に似た漆黒であったといわれている。彼は多くを語る人物ではなかったが、機知に富、柳の樹のように強かった。幼少の頃から狩とともに育った彼は槍の名手で、その目は鷹にも負けず鋭く、ベルガンドが弓を引いて逃れた獲物はいなかったという。しかし、獲物を追い放浪の暮らしを営むヒルマンも苛烈な天罰の争乱の戦火を逃れることができず、ベルガンドの幸福な少年時代は短かった。ヒルマン達はMount Kenderunの山間で最凶の魔将Veshteroth(別称:顔無き恐怖)率いる混沌の大群と相対することとなる。勇敢なヒルマン達は闇の子供達の爪や牙の餌食となり、魔将の闇に魂を吸われ、次々と死んでいった。ベルディアも無残に殺され、ベルガンドは父の仇を討とうとVeshterothに迫るが、突いた槍は魔将の皮膚に触れるとへし折れ、彼は意識を失い、戦いとも呼べぬ虐殺がとうに終わるまで目覚めなかった。
ベルガンドが目覚めると、周りには仲間や家族、そして父の遺体を目にすることとなる。彼は心に血の涙を流し、愛する人の全てを失わせた運命の残酷を呪う。そこに、いつからいたのだろうか、暗い色のマントに身を包む人物が戦場に佇み、ベルガンドを伺っているのに気付く。“お前は誰だ?”ベルガンドは折れた槍をあげて呼ばわる。“最後のHillmenを殺そうとするレイスか?ならば闇に還れ不浄の者よ、私は父の死を復讐するまで死ぬわけにはいかない。”すると、人物はフードを脱ぎ、驚くことにエルフの女性であることが見てとれる。彼女の髪は輝く銀の糸の滝のよう美しく、目は黄昏の空のような深い紫色をしていた。“武器を降ろして、ベルディアの息子よ。”彼女の声は吟じる音楽のようにベルガンドの魂を癒した。“この忌まわしい闇の争乱の犠牲となったのはあなたの父だけではない。私はイスリアナ(Ithriana)、不滅のエルフの王の娘。私は長く旅をして、英雄を探している。あなたはどのような代償を払おうとも父の死を復讐する覚悟があるだろうか?”
“全てを覚悟している。”と答えたベルガンドはエルフの美しさと声に魅了されていた。“私は復讐を誓う。”すると彼女はベルガンドの手を引き残虐な戦場を後にすると、森の中の隠れた庵にベルガンドを連れ込み、そこで様々なことを彼に教えた。
そこでベルガンドは太古の伝承を聞き、過ぎ去ったエルフの不滅の帝国の栄光と、タイタンが地上を歩いた時代から地底に眠り続ける太陽の剣、シャドウベインの事を習った。この剣は混沌より出づる魔将でさえも屠り、天罰の争乱の行方を永遠に変えることが出来ると。この武器こそが父の仇を討つ事ができる剣であると。ベルガンドはシャドウベインを探し出すことを誓い、イスリアナの父の仇も討つと誓った。シャドウベインがどこに眠るかはイスリアナも知らなかったが、鍛冶の神スーリン(Thurin)がエルフ達から取り上げてこの地のどこかに隠したとベルガンドに伝えた。ベルガンドは意に介さず、たとえ深海にあろうとも探しあてるであろうといった。イスリアナは旅の助けにとベルガンドにイチイの木より削りだした強弓に彼女の髪を弦として張り、炎を吐く魔法の矢が入った矢筒とともに渡した。また、銀色に輝くりんごを1ダース渡し、これを一口食べれば一週間の間喰わずとも良いと教えた。最後に鹿の皮に鷲の羽毛を施した1足のブーツを渡し、これを履けば鹿の速さで走ることができ、疲れる事が無いと言った。ベルガンドは美しい銀髪のエルフに礼を述べ、彼女の元に必ず戻ると誓った。イスリアナの美しさはベルガンドの心を激しく燃え上がらせたのである。ベルガンドは最後にイスリアナを一瞥すると、長い旅路の一歩を踏み出した。
ベルガンドが歩いた道は長く、クエストは様々な唄と伝承で語られ、今に伝えられている。彼の如き人間はまた現れるであろうか?3年もの間、彼は世界中を駆け巡り、何度となく死と隣り合せの駆け引きを勝ち抜いた。ベルガンドには機知の試練、力の試練、勇気の試練が待ち受けていた。厳寒の北地の最北でベルガンドはジャイアント、太古のユミル(Ymir the Old )を探し出した。このジャイアントは北地の武人の王と確執があり復讐の怒りに燃えている危険極まりないジャイアントであったが、ベルガンドは全ての機知を使って古のジャイアントを騙し、スーリンの事を語らせ、シャドウベインがドワーフの大洞窟にあるハガンドゥールの大広間(Halls of Hagandurr)にある事を聞き出した。そしてついには運命の崖に削りだされた予言にシャドウベインは人間の手により暗き幽閉より世界に連れ戻されるが、その人間は裏切りによる残酷な死を迎えるであろう事を聞きだした。ベルガンドはイスリアナに言われたとおり、その場でユミルを殺した。老ジャイアントの4人の息子達は雷鳴の如き怒りでベルガンドを追ったが、ベルガンドの素早い足と正確な射撃に追いつく術はなかった。
大陸の最北から、ベルガンドの旅路は南の熱帯林へと続き、彼はそこで太古のアマゾン・フューリー達を探し出す。雷を操る魔女達はドワーフのハガンドゥールの大広間への道を知っていたが、その伝承の代償はとてつもないものであった。彼女達は“沈黙の恐怖”とアマゾン達に呼ばれる、ヴィリアングの黒沼にすむ漆黒の大蛇の生皮を要求した。ベルガンドは腐った沼地を長くさ迷い、古代の廃墟にたどりついた。呪詛ともつかぬおぞましき文言が削られた石碑が立ち並ぶ中、“沈黙の恐怖”はベルガンドをみつけて襲い掛かった。ベルガンドは大蛇に巻きつかれ死を思ったが、両手で大蛇の顎の下を掴んで毒牙を遠ざけ、逆に大蛇を絞め殺そうと必死の力を込めた。大蛇と英雄は死を賭して互いの命を締め潰さんとしたが、ベルガンドが遂に大蛇を絞め殺した。大蛇の皮をフューリー達に渡すと、ドワーフの機密であるハガンドゥールへの隠された道の情報を聞き出した。大広間への入り口は太陽と空に繋がるものはなく、西の海の側のコルデーヴォの廃墟からのみ入ることができる古のトンネルの奥深くに隠されているとフューリー達は囁いた。ベルガンドは熱帯林と沼を後にし、一路西へと急いだ。
暗影立ち込める戦場や、混沌の群れの最中を突っ切り、ベルガンドは快速を飛ばしてコルデーヴォに向かった。旅路の途中に彼は梟の公爵、賢者ゼリスタンと出会った。そう、1千年後の王の時代で統王カンブリンに仕えたあのゼリスタンと同じ人物である。ゼリスタンは自らの齢と時間を切り離す術を身に付け、ベルガンドに出会った時にすでに梟の公爵は森の木々よりも古くから生きてきたのだ。ゼリスタンはベルガンドがシャドウベインを探していることを知っており、自身もシャドウベインの復活を望んでいたのである。賢者はベルガンドにコルデーヴォに棲みついた災厄、死の視線を持つドレイク、ドラゴンの直系、ブラカルドゥール(Brakaladur)の存在を警告した。ゼリスタンは太陽の前に作られた太古の兜、グリムリングを勇者に渡した。ベルガンドは賢者に礼を述べると、西への旅をひたすら急いだ。そしてついには隠れたトンネルの入り口がある、廃墟・コルデーヴォに着いたのである。
ドワーフの砦の廃墟の奥深く、ベルガンドはドレイクを発見した。眠っているとはいえ、その容姿は恐ろしく、普通の男であれば逃げ出していたであろう。ベルガンドの使命感は恐怖を超越し、魔法のブーツは無音の足運びを可能にし、勇者は眠れるドレイクの横を通りすぎ、ドワーフのトンネルへの入り口を見つけ出した。長い長い漆黒の闇を抜けると、そこはドワーフ達の最古で最大の地底都市、ハガンドゥールだった。ベルガンドはここで兜・グリムリングを被り、その魔力は彼を透明にした。そしてベルガンドは有史以来初めてドワーフを目にした人間となった。迷宮のようなその都市には数多くのガードが闊歩していたが、魔法のヘルムのおかげでスーリンの息子達は全くベルガンドの存在に気付かず、彼はドワーフの都市を自由に歩き回った。見事な装飾を施された巨大な石柱が乱立するハガンドゥールはあまりにも巨大で、ベルガンドはシャドウベインがどこに隠されているか全くわからなかったが、ベルガンドは辛抱強く、イスリアナのりんごを食べながら物陰に潜みドワーフの様子を伺った。数週間が立ち、ドワーフの言葉が理解できるようになったベルガンドは、ドワーフ達の会話から目的の場所を推測し、ついにスーリンの武器庫に辿り着く。そこはドワーフとドワーフの作ったゴーレム達の堅い警備陣がしかれていたが、透明で無音のベルガンドには全く気付かなかった。幾万本としれぬ剣が並ぶ武器庫も、何度となくイスリアナが形容したためシャドウベインをすぐに探し出し、ベルガンドはハガンドゥールを後にした。ドワーフ達は何世紀も秘密裏に暮らし、空と太陽のある“屋根無き世界”には石の争乱以降姿を見せていなかった。スーリンの息子達は秘密の都市が見つかるとは全く思っていなかったのである。シャドウベインの盗難にドワーフ達が気付いたときには、ベルガンドはトンネルを抜け、コルデーヴオの廃墟を抜けんとしていた。
ここで、ベルガンドには最後の試練が与えられる。急ぐあまり、ベルガンドはシャドウベインに巻きつけていたマントを取り落とし、柄の輝きが暗い廃墟を照らして影を作った。寝所にも漏れこんだ光にブラカルドゥールはただちに目を覚まし、ドレイクの刺すような目と恐ろしい嗅覚はグリムリングの隠し魔法を無としてしまった。ここに英雄とドレイクの苛烈なる戦いが始まり、ドレイクはその視線でベルガンドを殺さんとしたが、英雄の心は折れず真っ向から立ち向かう。魔法の兜はベルガンドをドレイクの炎から守り、シャドウベインはドレイクの鋼鉄の鱗も易く切裂いた。スーリンの剣は三度ドレイクを貫き、そのマグマのような血は太古の石と奪われた黄金の上にこぼれて全てを溶解した。ここにベルガンドはシャドウベインをひと手に高く掲げ、ひと手にドレイクの頭を持ち無傷でコルデーヴォを後にする。彼はここでドレイクの鱗からマントを拵え身に付ける。ベルガンドの長いクエストは遂に終わり、復讐の雄叫びをあげ、人間の里に急ぎ戻ることとなる。
多くの吟遊詩人の唄や叙情詩がヴォディラノンの攻城戦(Siege of Vodiranon)の凄惨な様子を語り継ぐ。5年もの間、人間とエルフがともに生命線ともいえる拠点を守るため混沌の大群と渡り合い、激戦を繰り返した。蝙蝠の翼でデモン・スポーンが空から攻撃し、おぞましき魔蟲が地中をすすみ都市内に現れる。そして自然の獣を嘲笑する穢れた魔の模造が無数に壁をよじ登る。混沌の者達の終わりなき猛攻は防衛側を次第に疲弊させ、ついには“顔無き恐怖”魔将Veshterothが各地を破壊し、攻城に合流した。魔将の君臨により混沌の者達の力は倍増し、更にはVeshterothが異空の魔法を詠唱すると、堅牢なエルフの魔法に守られた城壁が音を立てて崩れ始めた。
全界の父の子供達の命運がまさに尽きるかというとき、シャドウベインを高く掲げたベルガンドが風と共に走りながら戦場に現れた。シャドウベインの刀身の漆黒と柄の彗星のような輝きをみると混沌の者達は恐れおののき、城内の者は救いが現れたことを知り歓喜した。混沌の牙や爪はドレイクの鱗からつくりしマントを貫くことはできず、混沌の者が使う腐敗や狂気の魔法もグリムリングの魔法の前には無力になり、混沌に生まれし者がスーリンの剣に触ることは叶わなかった。ベルガンドは炎のシミターのように縦横無尽に戦場を切裂いた。シャドウベインは遂にVeshterothを捕らえ、“顔無き恐怖”といえでもその刃を防ぐことはできず、魔将の死に際した絶叫を聞いた混沌の大群は散り散りに逃げ去った。ここにベルガンドは仲間と父の仇を討った。エルフ達は太陽の剣の世界への帰還を喜び歌い、人間の王や貴族は人類の救世主たるベルガンドの前に跪いた。皆一様にベルガンドがシャドウベインを掲げ、混沌の者たちを打ち破る為に指揮をとることを口にしたが、彼は頑なに断った。エルフの王族の目に激しい嫉妬を見たベルガンドは太古のユミルが語った予言を思い出したのだ。賢者ゼリスタンもベルガンドが皆を栄光に導くべきだと諭したが、裏切りの予言を懸念したベルガンドは了承しなかった。こうして、ベルガンドはヴォディラノンを後にし、偉大なクエストの始めとなった森の庵へと足を運び、美しきイスリアナに互いの父親の仇を討ったことを報告するべく走った。
イスリアナを見た英雄の心は喜びに包まれ、彼はクエストの素晴らしい物語を熱心に語った。二人は再会に歓喜し、祝宴は深夜に及んだ。イスリアナが愛する英雄にとっておきのエルフワインを空けて再び乾杯しようとベルガンドに盃を渡し、英雄は喜んで受け取った。一口飲むとともにベルガンドは血管に巡る毒に気付き、裏切られたと理解した。このエルフの女は嘘に塗り固められた生き物であり、シルエスター(Sillestor)その人の孫娘であり、彼女の生まれ持った権利であるシャドウベインを盗り返さんが為にベルガンドをクエストに送り出したのだ。“低俗なる人間よ。私の復讐は今から始まるのです。私の父を殺したのは混沌の者どもではなく全界の父なのだから。人間は神が犯した罪に代り大きな代償を支払うのです。そしてあなたがまず最初に死ぬのです。”
ベルガンドは毒により生命が消え行くのを感じながら、イスリアナの恐ろしい企みを理解した。彼女はシャドウベインを振るい混沌の者達を駆逐し、弱った人間達を破壊し、世界を残虐な女王として支配するであろう。ベルガンドの心には怒りが満ち、立ち上がろうとするが身体はもはやいうことをきかず倒れ伏した。毒が血潮を沸騰する激痛の中で、ベルガンドは強力な呪いの言葉を吐いた。“災厄の裏切り女よ。私の最期の言葉をよく聞け。ジャイアントとドレイク、大蛇と悪魔を成敗し、シャドウベインを闇より世界に連れ戻した、ベルガンド、ベルディアの息子はこの剣に血の呪いを封ずる。この剣は私を裏切り、創造主も裏切った。私はこの剣を裏切りの剣と名づける。この日より世界の終わりまで、この剣を振るった者には死を与えよ!全界の父の御名において!死ぬが良い、穢れた女よ。死んで呪われよ!”この言葉と共にベルガンドは死に、額にしみ付いていたたドラゴンの血が微かに光ったという。
イスリアナはベルガンド・ブレードシーカーの最期の言葉は気にも留めず、エルフの同族の元に意気揚々と戻った。しかしながら、彼女の運命はすぐにも絶望的なものとなる。エルフの王族達は誰がこの魔法の剣を所有するか争い始めた。人間の王達はベルガンドの剣がイスリアナの手にあるのを見て激怒し、いましがたまでの盟友を見限り、運命の任せるままとした。エルフロード達は身内で醜く争いあった。イスリアナには多数の兄がおり、どの兄も年下の妹がシャドウベインを振るい支配するのが耐えられなかった。プライドは嫉妬を生み、嫉妬は策謀を生み、やがてエルフの剣先は敵では無く味方同士に向けあうこととなった。エルフの陣営の足並みは乱れ、混沌の者達への追撃は立ち遅れた。そしてそれは混沌の者達が反撃の窓口を見出すに充分な隙となってしまった。
魔将Veshterothが倒れた時、その報告は他の魔将達を震え上がらせた。彼らにはこの闇と光を併せ持つ強力な剣に対抗するすべが無かったからである。一度は虚無に引きこもり追撃を逃れようと画策した魔将達は、密偵の報告でエルフ達の内乱の知らせを受けると、隙を見た魔将達はここぞとばかりに全ての軍勢をエルフ達にさし向け、シャドウベインの刃を永遠に鈍らすために最凶の魔法を紡ぎあげた。混沌の逆襲は怒涛の勢いとなり、イスリアナと他の王族、そしてそこにいたエルフの軍勢全てが抹殺され、城ごと闇に飲み込まれた。イスリアナとその王族達は死して永劫に苦しむ穢れしものとして蘇った。不死の女王として蘇ったのは混沌のおぞましい魔法のためであろうか?それとも死してなおシャドウベインにすがる哀れな欲望のためであろうか?もしかしたらベルガンドの呪いがドラゴンの血を媒体として成就したのかもしれないが、真相はわかっていない。天罰の争乱はこの後も長く続くこととなるが、イスリアナと王族は影となり闇を彷徨うこととなる。混沌の魔将達が放った魔法は凄まじくエルフの砦とその周りの土地はあまりにも強く死の影が残ったため、遂にはこの世界に存在できず、濃い死の霧がたちこめ消えてしまった。ここにシャドウベインは一瞬の栄光とともに世界に戻り、瞬く間にまた世界に失われることとなる。
ベルガンドの不名誉な死後の永きにわたって、天罰の争乱は引き続き無数の命を奪い、美しい大陸の廃墟と影を増やしていった。ベルガンドがゼリスタンの言葉を聞きいれ、皆を率いていれば争乱は早期に終わったのではなかろうか?幾万もの英雄や弱きものが、幾万もの兵士や市民が無残な死を遂げることなく人生を全とうできたであろうか?ベルガンドは描かれた運命にあがなう事はできず、シャドウベインがまた千年以上も死の国に封じらてしまった事を考えると、これらの問いは人知を超え無為となる。
ここにベルガンドの栄光と死のクロニクルを終える。そしてまたいくつもの問いを我らに残す。何故イスリアナは剣を生まれ持った権利としていたのか?いつ、どのようにシャドウベインは創られたのか?何故エルフ達は魔剣を失いドワーフが保管する事となったのか?これらの問いの答えを探るには更に時を遡り、暁の時代(The Age of Twilight),人間、時間、そして太陽の誕生よりも前に遡る。この時間無き時代にシャドウベインの誕生と伝説における最も重要な伝承が、恐怖、希望、栄光と犠牲と共に記されている。
出典
(原文消失)
https://web.archive.org/web/20030704024238/http://www.shadowbane-jp.com/new/about/history.html