シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

The Age of Kings (Livedoor Edition) [王の時代(ライブドア版)]

王の時代(The Age of Kings)
ケアリック・ブラックハマーの物語、統王カンブリン、ターニングについて

シャドウベインは三度アーリンスに現れ、その度に世界に変革をもたらした。シャドウベインは3つの大戦の流れをことごとく覆してきた。戦いにおいては3人の人間、2人のエルフ、そして一人の神がシャドウベインを振るった。最後にシャドウベインが振るわれた時、最後の大国の王、カンブリン(Cambruin)が殺され、時代は今の混沌と争乱の時代に入った。しかし、それは物語のほんの一部にすぎない。何故、シャドウベインがカンブリン王の手に渡ったのか?シャドウベインは何故造られたのか?何故シャドウベインを使った者達はことごとく悲運を辿るのか?このクロニクルは時間の歩みと同じく悠久であり残虐であるが、この伝説をたどれば、今のシャドウベインの世界の荒廃と争乱の理解に一筋の光を当てることであろう。

王の時代(The Age of Kings)

このクロニクルはシャドウベインが創られた太古より語るのではなく、最後にシャドウベインが振るわれた時から記すことにする。王の時代の最後は我らの世界の現状の始まりでもあった。王の時代はシャドウベインの世界では若い種族である人間が栄華を築き幾つもの王国を建設し、法による秩序と正義を重んじる統王が治めた、栄光の時代であった。しかし、この時代は戦争の時代であり、王国の建設のためにオーク、バーバリアン、ジャイアントと長い血みどろの戦いを繰り広げた。しかし、これらの戦いは涙の争乱(War of Tears)と呼ばれる大戦の序曲にすぎず、この戦で人間とエルフの両陣営の覇権は潰えることとなった。

涙の争乱は統王カンブリンが王座に座る半世紀も前から続いていており、この戦のみで何十巻もの英雄伝と残虐史ができるであろう。一説はエルフ達の最後の逆襲と統一王国の破滅を招いたのはカンブリンが愚かであったからであるとしている。また、ある者はエルフ王ヴァルディマン(Valdimanthor the Elfking)がカンブリンの宮廷の美しさに嫉妬と憎悪を燃やした結果であるともいう。更にはヴァルディマンサが魔法のオラクルの予言を知り、カンブリンが世界にもたらす悲劇を未然に止めようとしたという一説もある。いずれにせよ、真実を知る一握りも者達の中で争乱を生き抜き見届けた者のほとんどはターニング(転換期)において死んだ。涙の争乱にまつわる伝説は幾数もあるが、ここではこの時代に活躍したケアリック・ブラックハマー(Caeric Blackhammer)の伝説を紹介する。ケアリックはカンブリン王の騎士団でもっとも高貴な騎士であり、初めてのパラディンであり、シャドウベインを求めてソードクエストを授かった騎士である。

ケアリック・ブラックハマーとソードクエスト

ケアリックは高貴な生まれではなかったが、聖者のごとく純粋な心と魂を持っていた。小さな鍛冶屋の息子として生まれ、子供の頃は父の手伝いをしていた。鍛冶屋はいつ終わるとも知れない涙の争乱のために忙しかった。ケアリックの人生は7歳のときに大きな転機を迎えることになる。カンブリンの騎士団の一行が彼の住む村を戦の帰路の中継とし、それを目撃した少年ケアリックは彼らを光り輝く天使達だと思った。そして、騎士団が彼と同じ人間だと知るとおおいに喜び、騎士になる決意を固めたのである。5年後、自ら打ち出した甲冑に身を包み、腰にはハンマーのみを提げて、ケアリックはカンブリン王を探して村を出た。旅路の途中で高慢な騎士、サー・ロベナー(Sir Rovennor)に出会うこととなる。サー・ロベナーは少年にからかい半分に、騎士となるためには50人と戦って勝たねばならないと話した。冗談とも気付かないケアリックは、騎士や傭兵、50人と戦い、腰に提げたハンマーと揺るがぬ心のみでことごとく打ち破った。勝ったケアリックはすべての騎士や傭兵に、カンブリン王を訪ね忠誠を誓うように誓約させた。若いカンブリン王は王都カレドーンに到着したケアリックをただちに宮廷に呼び、その場で騎士の称号を与えた。以降、ケアリックはカンブリン王に仕え、幾度も王に名誉と栄光をもたらした。サー・ロベナーがからかい半分でケアリックにつけたブラック・ハマーという名は騎士にとって最大級の栄誉となり、カンブリン王の勇敢な騎士達は少年の勇気と純粋さに近づくために努力をしたという。

ケアリック・ブラックハマーはカンブリンが統王の玉座に就いた時も王の横に立ち、20年もの間、統王の最も信頼のおける騎士として仕え続けた。ケアリックは統一王国中にその勇名を轟かせ、その強さに類する者はいなかった。戦でもデュエルでもケアリックは負けた事がなく、敵がいかに強大であろうとも、心に秘めた正義は彼に神の使徒のごとき無尽蔵の腕力と耐久力を授けたという。だが統王としての王朝が始まってまもなく、カンブリンの運命に陰りが現れる。カンブリンの王朝が始まって10年目、(これは王の時代が始まった1076年目の事である)沈静を見せていた涙の争乱が新たな勢いで再びはじまった。エルフ王ヴァルデマンサは20年もの間、僻地の冷たい玉座に座りながらも力を蓄えていた。エルフ王直属のマギ達は魔術の至高を駆使し、太古に創り上げた妖魔との主従の盟約を復活させ、北地のミノタウロスを再び支配下においたのであった。ヴァルデマンサの軍勢はエルフのマスタースミス(鍛冶師)が造りあげた装備を纏い、無敵に近い強さを誇った。警告なく突然、ヴァルデマンサはその強力な軍勢を解き放ち、統一王国はまもなく恐怖におののくこととなった。カンブリン王の騎士団もエルフ王の闇の魔力の前には無力であった。エルフの軍団は得意とする魔力と謀略を駆使し、人間の統一王国は連敗に連敗を重ねることとなった。カンブリン王も最悪の事態を考えはじめ、怒鳴り散らすようになってしまったといわれている。賢者ゼリスタン(Zeristan the Wise)の魔法と知識も戦況を変えるには至らなず、王国の戦士達の中には弱音を吐く者も出始めたが、ケアリックは希望を捨ててはいなかった。統王となった15年目、カンブリン王は王都から遠く離れた都市メリッサで冬の王朝を迎えることとなった。カンブリンの騎士達は長い戦いと進軍により疲弊していた。全てが絶望的とおもえたが、聖ローンの冬至の祝宴の際に奇跡が王朝を訪れた。

統王とその騎士達は冬至の祝宴のために卓を囲んではいたが、その雰囲気は決して祝宴のようではなく、暗かった。宴の始まりがつげられてまもなく、屋敷の扉と窓がすべて音をたててひとりでに閉まったかとおもうと、突然、大暖炉の火が消えて、部屋は闇に閉ざされた。騎士たちは策謀と裏切りを恐れ、一様に立ち上がり剣を抜いた。伝説は騎士達は使徒の歌声のような素晴しい音楽を聴いたとしている。突然光が闇を裂き、王と騎士たちは目が眩んだが、光の中に一振りの剣が浮かび上がった。その剣の柄は横金とプラチナの輝きを放ち、刃は闇の恐ろしい漆黒を放っていた。その幽体の剣はカンブリンの頭上で輝き、王を照らし出した。

“偉大なる王、全界の父の意志を地上に継ぐものよ。こころしてこの話を聞け、人間の最期の時間が近きこの時に!世界に訪れようとする闇は強く誰も打ち破ることはできない。だが、闇には一条の光がまだある。この剣を見よ、そしてこの剣が運命の剣、シャドウベインであると知れ。人間が築いたものを遺そうとおもうのであれば、シャドウベインに救いを求めよ。シャドウベインが世界に戻ってくれば、いかなる敵も打ち倒すことができよう。シャドウベインの眠る地は遠く、道は死の国に続いており、いかなる生物も生きて帰ったことは無い。この危険なクエストはもっとも勇敢な騎士が挑むべきである。死よりもつらい試練が待ち受けるからである。”

剣のビジョンが薄らぎ消えると、屋敷の中に突然大風が吹き、窓が全て開け放たれ、大暖炉の火が大きく燃え上がり、部屋は再び明るくなった。カンブリン王はこのビジョンに高揚し、だれか私についてくるものはいないかと、部屋を見廻した。騎士たちは声を揃えて反対したが、そこに北風のような力強い声が響いた。“王よ、”賢者ゼリスタンである。“我が王国は全てを賭けた戦いをエルフの大群と戦っております。王である貴方が最終決戦を前に遠く国を離れるのはなりませぬ。”カンブリン王はもっともであると渋々うなずいたが、我が騎士が王の代わりにクエストに行くのは許可する、と言い放った。一人の騎士が剣を掲げようとした時、ゼリスタンはまた言った“勇敢な騎士達よ。シャドウベインを振るったものには必ず悲運が待ち受けている。太古の昔、剣には強力な呪いがかけられ、剣をもつ者は全て剣によって死んでいる。失敗は確実な死となる。よくよく考えられよ。ここに残り、王と共に戦うことは決して不名誉では無い。それにシャドウベインが見つかったとしてもその前に王国が滅びれば全ては無駄になる。”このゼリスタンの重い言葉に、剣を上げかけた騎士達の多くは剣を降ろし、クエストの承諾をとりやめた。カンブリン王の騎士団で最後まで剣を掲げた騎士は9人。勇猛なるサー・ガリアン、サー・マードック・ウィルムスレイヤー、サー・ロベナー・オブ・アルバシア、そして他に5人の若い騎士が志願した。9人目のケアリックは王の前に跪き、ソードクエストの許しを乞うた。“お前がいくのは寂しい。王国を予とともに築いた、お前がいくのはな・・”カンブリンは言った。“だが、予は喜んでお前を送り出そう。このクエストを成就させる人間がいるとすれば、お前しかいないからな。”ケアリックは“私の成果ではなく、全界の父の御心のままとなるでしょう。”と答え、長い旅の準備を始めた。

9人の騎士達は騎馬に跨り、シャドウベインを探すクエストに旅立った。ソードクエストに関わる伝承や唄は幾つも存在し、今日にも多く語り継がれている。しかし、旅立った騎士達には一人を除いて絶望的な運命が待ち受けていた。魂を砕かれ王国に戻ったものもいたが、サー・マードック、サー・ロベナーの勇敢な騎士達は二度と戻らず、王カンブリンは永くその死を悼んだ。唯一人、パラディン、サー・ケアリック・ブラックハマーのみがシャドウベインに辿り着いたのである。

旅路は長く、過酷なものだった。シャドウベインが眠るのは不浄の地、イスリアナであり、そこは闇のリッチ・クイーンと混沌の夜行が支配し、常に死の霧が漂う見捨てられた地だった。ケアリックは荒れ果てた土地に騎馬をすすめ、混沌より生まれた魔物を幾度と打ち倒した。ケアリックはムラビ城での力の試練、ペリオス寺院での信仰の試練、そして忠誠の試練で最愛の人、ロイースを見捨ててクエストを続ける決意を固めたのであった。そして、ついにケアリックは人間が足を踏み入れたことのない、死の大地に辿り着き、異形の魔獣と果てしない戦いを繰り広げることとなる。この戦いでケアリックのランスは砕け、騎馬は惨殺され、剣は折れ、盾は腐敗して崩れてしまった。長い間、ケアリックは死の霧の中を彷徨い、影が生きる国に辿り着いた。そこでは死人がケアリックを待ちうけ、激しい憎悪をもって、襲い掛かってきた。ケアリックは彼の名前ともなったハンマーのみで立ち向かい、魂を死の冷気に晒しながらも打ち倒し、信仰が萎えることは決してなかった。

しかし、戦いの度にケアリックは傷を負い、ついには闇の道を一歩も歩くことができなくなってしまう。ケアリックは限界に達し、薄れ行く意識の中で、漆黒の闇に一条の光を見出した。そこには優美の大使徒、テルラネルの姿があった。テルラネルの顔は幾万もの星のように輝き、翼が起こす風はこの死の国においても春の夢のようであった。“勇敢な騎士よ、人間の聖なる心と正義よ、私はあなたを助けに来た。”天使は言った。“私はあなたをこの不浄の地から助け出し、治癒と休養の家に連れてゆくことができる。あなたが力を取り戻し、カンブリン王の横で戦えるように。”ケアリックはすぐに“私は王への約束を破るくらいなら、千回の死を選ぶ。お前が本当の天使で、私を誘惑する悪魔でなければ、ソードクエストを達成する力を与えてくれ”と答えた。“そうの望むのであれば、そうしよう。ただし、あなたが探す剣は戦いで振るえば、あなたは確実に死ぬことを知れ。”ケアリックは笑みと共に“私にはカンブリンに誓った命しかない。私は王が勝利を得るために剣を届けられればそれで良い。”と答えた。

“最も高貴な人間よ、それがあなたの選択であれば。”と大使徒がいうと、ケアリックの魂は聖なる力と美しさで満ち溢れ、彼は死の闇の中でも光り輝く存在となった。彼の体にも力が戻り、傷もすべて癒え、ケアリックは大使徒の聖なる祝福が血脈に流れる初めてのパラディン(聖騎士)としてここに生まれ変わった。どのような闇の下僕も聖なる怒りには立ち向かうことができず、ワイト、レイス、ファントムの軍隊もケアリックのハンマーの前に打ちひしがれた。死の国の奥深くの浅い墓地にシャドウベインが放置されているのを見つけたケアリックは、シャドウベインを使い自らリッチ・クイーンを葬り、彼女の永遠の呪詛を封じた。ここにケアリック・ブラックハマーは不浄の地より生還し、シャドウベインを持ち帰ることになる。

しかし、ケアリックのクエストは長すぎた。ケアリックは最愛のロイースの元に急いだが、帰った時にはロイースとその家族は闇の手先に殺された後であった。ケアリックは涙ながらに木に吊るされ無残に晒された遺体を降ろし、ロイースの血に染まったスカーフを自らの首に巻いた。ケアリックは忠誠の試練には耐えたが、最愛の人の助けにはなれなかったのである。ケアリックは自らの業の印として、最期の日までロイースの紅いスカーフを身につけていたという。愛しい人の死を悼みながらも、ケアリックはシャドウベインと待ちわびる王の間にまだ何百リーグもあるのを思い出し荒野を急ぎ走った。ケアリックは全界の父と使徒達に馬を送るように祈りを捧げた。2日間の間、ケアリックは荒野を歩き、3日目には祈りが天に届いた。

カンブリン王は窮していた。ヴァルデマンサは全てのミノタウロスを揃え、魔力で力と狂気の怒りを与えて大軍としていたからである。クエストに送り出した9人の騎士のうち5人が殺され、3人が心を打ちひしがれて戻ってきた。ケアリックに関しても消息は全くしれず、カンブリンは最悪の事態を考えていた。カンブリン王は何度も王国の兵士達をミノタウロス達にぶつけたが、絶壁に波をぶつけているようであった。波は嵐の勢いと怒りで絶壁にぶつかったが、絶壁は依然、高く立ちはだかる。カンブリン王は最後の兵力を、エルフの廃都ヴォディラノンに程近い、レンゲストの都市に集めていた。エルフ達は勝利が近いのを感じ取り、都市を完全に取り囲み、必殺の陣形を築き上げていた。最悪の事態の中でもカンブリンは王として威厳をもって陣頭に立ち、王国の兵士の士気は高かった。兵士達は皆死を覚悟していたが、エルフの勝利には絶大なる代償を払わせることを決意していた。

大軍はレンゲストより数リーグのレネリンドの平原にて向かい会う形となり、ここに最後の決戦が行われることとなった。鳥たちが朝を告げるとともに、地平線近くに眩い星が現れ、日の出の太陽より明るく輝いていた。これにはエルフ達は喜びおおいに士気をあげた。暁の星はエルフ達には吉兆なのだ。ヴァルデマンサの大軍は一同に戦歌を歌い、その旋律を聴いた王国の兵士達の心は震えた。カンブリン王は全界の父に祈りを捧げ、兵士達も一緒に祈りを捧げた。王国の陣営は静まり返り、王国の最期が刻一刻と近づいてきたようであった。だが、そこにゼリスタンが立ち上がり、彼の梟の如き鋭い目で地平線を睨むと空を指差し、“王国の兵士達よ歓喜せよ!”と叫んだ。“勝利に向かって騎乗せよ!勝利の時が来た!シャドウベインが来た!シャドウベインだ!”皆が地平線を見ると、暁の星は星などではなく、銀色に輝くペガサスが風のような速さで戦場に向かっているではないか!背中にはケアリック・ブラックハマー、最初のパラディンが乗り、手にはシャドウベインを持ち、剣が放つ光は空のどの星よりも眩く光り輝いていた。エルフ達は確信が判然としなくなり、一瞬動きを止めた。同時にカンブリン王が“突撃”を指示した。ここに涙の争乱の流れを永遠に変えたレネリンドの戦いが始まった。

統王カンブリンは激戦の渦中におり、強力なブレードウィーバーの近衛兵とミノタウロス数匹に囲まれ、エルフ王ヴァルデマンサ自身と相対することになった。カンブリンの剣はヴァルデマンサの魔曲刀に搦め取られ、ミノタウロスの恐ろしい腕力により真っ二つに折られてしまった。ケアリックは王の救出を急ぎ、風のごとく戦場を駈けたがエルフのアーチャーの矢は鋭く、天馬はケアリックを乗せながら射殺されてしまった。戦場にまっ逆さまに落ちるケアリックはシャドウベインを投げた。シャドウベインは彗星のように光ながら飛び、エルフも人間も一瞬戦いの手をとめ、シャドウベインの行方を見守った。カンブリン王は天に向かい手を伸ばし、全界の父の御名を呼ぶと、シャドウベインはカンブリンの手に収まった。同時にシャドウベインの柄は幾千もの太陽のように輝き、シャドウベインの黒き刀身は全ての影を飲み込み、全ては純白の光に包まれた。エルフの魔法は全て消滅し、魔法に操られていたミノタウロスは狂気に包まれて制御不能に暴れまわった。カンブリンがシャドウベインをヴァルデマンサに振り下ろすと、ヴァルデマンサは自らの運命を悟り涙した。エルフ王は自らの剣で攻撃を防ごうとしたが、シャドウベインはエルフ王の魔剣イムドララの刀身をた易く折り、そのまま一閃でヴァルデマンサの首を胴から分断した。全てのエルフ達は運命を呪いながら戦場より逃げ去り、ミノタウロス達はつい先ほどまで主人であったエルフ達の虐殺をはじめた。

ここにカンブリンがレネリンドの戦いにおいて勝利し、エルフの帝国が永遠に失われたと記す。ケアリックは戦場への墜落のため大怪我を負ったが、じきに回復し戦場でカンブリンとともに立つこととなる。全ての人間はシャドウベインの復活を喜び、King Maker(王を創るもの)、Morning Star(暁の星)、Paladinsword(パラディンの剣)、Beaconblade(勝利の道標)などと口々に呼んで称えた。エルフ達は剣の存在を恐れ、Sillestor’s Blade、Ithiriana’s Bane、Sword of Venganceと呼んで忌み嫌った。涙の争乱の終わりはこの話のだいぶ先の事となるが、シャドウベインの出現以降、エルフ陣営が戦いに勝利を収めることはなかった。そして話はシャドウベインの伝説の暗く悲しい最後に続く。

悲しみの日、統王の最期、世界が汚された日

伝説はシャドウベインが二度闇に消え、二度英雄の手により世界に戻り大戦の行方を変えたとしている。シャドウベインを手にしたカンブリンは連勝に連勝を重ね、カンブリンの名は栄光と名誉に同義となった。ケアリック・ブラックハマーも英雄として称えられ、若き騎士達はケアリックがつける紅いスカーフを名誉としてつけた。パラディンが自らの業を戒めるための紅いスカーフはいつしか誉れの印となり、今日も騎士がつけている。ただどのようにまねて、努力してもケアリックが唯一の、そして最後のパラディンであったことは間違いない。

王国の軍隊は勝利に向かって連勝を続けたが、カンブリンは過去の影に不安を感じていた。ゼリスタンは3度、シャドウベインを海に投げ捨て、呪いを逃れるように頼んだが、カンブリンは3度とも却下した。“この剣は神が悪を滅ぼすために創ったものだ。善を破壊するためのものではない。”“それに呪いはシャドウベインを振るった男と女としているらしいが、予はそのいづれでもない。予は王である。”ゼリスタンはそれ以上讒言することはなかったが、心中は不安が渦巻き、老いた魔法使いの懸念はすぐに真実となるのであった。

戦況が順調なのとは裏腹に、宮廷は緊迫していた。統王の支配下となる前は一国の城主であった騎士達は平民の生まれであるケアリックに注がれる栄誉を嫌った。彼らはパラディンの崇高な教えに嫌気が差し、涙の争乱が終わったときにケアリックを慕う騎士団にすべての栄光と賞与が注がれるのではないかと心配していた。ケアリックにデュエルで打ち破られた騎士たちはパラディンはインチキでケアリックが教える騎士道は使えないと影で噂した。カンブリン王はこの不穏な宮廷内の動きを牽制したが、王の最も信頼する英雄に対しての不信感は募っていった。そして、カンブリンが自ら召抱えた騎士が人道を外し、皆に真の名前を呼ばれることなく、The Traitor(裏切り者)としてシャドウベインの歴史に名を残すことになる。

裏切り者は長くエルフ達と内通していた。エルフ達は北地のキルヘイブン(Kierhaven)に追いやられ、エルフの最後の砦も王国の軍隊に取りかかまれ、苛烈な篭城戦が行われた。伝説ではケアリックはこの戦いで命を落としたという。一説には流れ矢に当たったといわれているが、嫉妬を燃やす騎士の一団が激戦の渦中にケアリックを放置したともいわれている。ゼリスタンはシャドウベインの呪いが遂に本当となったと恐れた。パラディンの星は堕ちたが、戦争には勝利し、エルフの最後の砦は陥落した。

カンブリンは残党の追撃の陣頭に立ち、森をサー・ガリアンと共に騎馬で疾駆した。そして二度と真の名は語られない、裏切り者も共として横にいた。サー・ガリアンは裏切り者の動向に不審を感じていたが、王は自らの騎士が裏切るとは全く信じていなかった。裏切り者はエルフの協力で巧く2騎を誘導し、森の中の開けた場所の太古の樫の木にさしかかった。そこにはエルフのアサシンが待ち伏せしており、その矢には死の魔法が付与されていた。サー・ガリアンはアサシンが王を狙っているのに気付き、自らの身を挺して王の盾となり、死の矢を受けた。忠烈なガリアンに押されたカンブリン王はバランスを崩しシャドウベインを取り落としてしまった。裏切り者はここに失敗した暗殺に勝機を見出し、シャドウベインを地面よりすくい上げ、カンブリン王に背後より必殺の刺突を見舞った。あまりに強烈な突きはカンブリン王の魔法の鎧の背中のプレート、心臓、胸のプレートを貫き、王を太古の樫の木に串刺しに打ちつけた。王の血は心臓より勢いよく流れて地面に吸い込まれ、ここにシャドウベインの呪いがまたも成就したこととなる。

剣の書にも書かれているように、この裏切り者の一撃は世界の崩壊を招き、ターニングの要因となった。カンブリン王が死に、シャドウベインが刺さったその木は最初の樹であり、世界の樹であり、全界の父が父母神ブライアラの目覚めを行った場所でもあった。王の血が樹に吸い込まれ、全界の父の擁護を受けた者の血を吸ったとき、世界の樹は石になった。空はたちまち暗くなり、世界は震え、自然の理は壊されてしまった。天国と地獄はその門戸を閉じ、太陽は紅い血の色に染まった。死にながらもサー・ガリアンの目からは涙が溢れ、今日まで彼は本当の死を迎えた最後の人となった。ここに王の時代は終わり、苦しみの時代が始まった。

ここにシャドウベインの伝説は終わる。だがここに語られた物語はごく一部でそれでも尚たくさんの不明瞭の部分が残るであろう。シャドウベインのような神の剣が何故呪われた存在となったのか?エルフは何故そこまでシャドウベインを怖がったのか?何故光り輝く正義の剣がリッチ・クイーンの手許にあったのであろうか?

これらの問いに答えるにはここに語られた伝承と同じく長いひとつの物語が必要である。真実を知るには昼日の時代(The Age of Days) にまで遡り、シャドウベインを振るった初めての人間、ベレガンド・ブレイドシーカーの物語を聞かねばなるまい。

出典

(原文消失)

https://web.archive.org/web/20030704024238/http://www.shadowbane-jp.com/new/about/history.html