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シャドウベインの背景世界

惜しくもサービスが停止されたオンラインRPG、Shadowbaneに関する世界設定の翻訳

昼日時代

伝説

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 あなたには大王カンブリュワンがシャドウベインという至高の剣を振るい、王が勝利を収めたことと、王が同じ剣で自分の体を貫かれたことを伝えた。聖騎士カイリク・ブラックハンマーが、冥后の領地からシャドウベインを取り戻し、悲涙戦役の戦局を覆したことについても。しかし、それらはシャドウベインにまつわる伝説のごく一部にすぎない。シャドウベインの探求に出たのはカイリクだけではなく、千年前に、もう一人の英雄がシャドウベインを求め、地界の隅々まで冒険していた。

 シャドウベインはレネリンド平原の戦いに勝利をもたらしたが、バードたちの歌からも分かるように、剣はさらに古い時代には光呼びとも呼ばれており、悲涙戦役より凄惨な戦いでも戦局を覆した。カンブリュワンは家臣に命を奪われたが、古の英雄も裏切りにあい、その生涯を終えた。作られたときから、シャドウベインは力と引き換えに死をもたらすのだ。シャドウベインの伝承は、カンブリュワンの生誕よりさらに古い時代にもある。災禍戦役と第一の探求を紹介しよう。よく聞いてくれ。

 

 二度目にシャドウベインの不穏な光が地界を照らしたのは、全父の奇跡で幕を開けるとともに閉められた、昼日時代である。この時代では、まだ神々も地上で暮らしており、地界の子供たちの能力は現在よりも優れていた。華々しいものであれ邪悪なものであれ、数多くの伝承が昼日時代に生まれた。

 叙事詩によれば、全父の手で作られた巨人、ジャイアントが運命の断崖に彫られた力のルーンを破壊し、時間と運命が動き始めたことで昼日時代が始まった。その後、全父は最高の子供、人を創り上げ、全父の望んだ地界が完成した。

 

 人の始祖、ティーターンたちは地界の歴史に類を見ない理想郷、アーダンの楽園を築いた。楽園がどのように繁栄し、エルフの裏切りで滅亡したのかは、ほとんど伝えられていない。ティーターンと彼らの子供たち、人は弱体化の呪術をかけられ、不滅帝国の奴隷にされた。

 王家の記録によれば、人は主人であるエルフの言葉を喋るように教育され、逃げ出した後にケンタウロスと出会い、正義の概念と戦争の方法を教わった。この時期には、ジャイアントとドワーフの間でルーン石をめぐる戦争が勃発し、北方人の誕生もあった。昼日時代には数多くの英雄、王、部族長が現れたが、彼らの紹介は別の機会にしよう。

 何千年もの間、シャドウベインは人とエルフの手が届かない場所にあった。シャドウベインは混沌界の勢力との戦争、災禍戦役の終盤までドワーフが保管しており、剣は大戦と時代に終わりをもたらした。

 

 数々の伝承によれば、災禍戦役の始まりは、同族と袂を分かち、砂漠に居を構えたエルフがドラゴンを崇拝し、地界の破滅を企んだことが起源になるといわれている。不滅帝国のエルフたちは砂漠のエルフたちを激しく非難し、彼らを被追放民、イレケイと呼ぶようになり、血で血を洗う、五世代にわたる戦争が生じた。

 

 地界各地のエルフ同士による命の奪い合いは、イレケイの呪術師がはるか昔に忘れられた遺跡、混沌門を開くときまで続いた。すべての悪神と混沌軍団が地界に呼び込まれ、彼らは目に付くものをことごとく破壊した。

 

 地界の存亡を賭けた災禍戦役が始まった。地界の危機に際し、時間の始まり以降の敵対を忘れ、エルフ、人、ケンタウロスだけではなく、なんとジャイアントまでもが手を結び、最悪の事態にも希望は生まれた。地界の歴史で全父の作り上げた子供たちが一致団結したのは、このときだけである。

 しかしながら、彼らすべての力を合わせても混沌軍団は止められなかった。後世に二度と見られない英雄たちが、戦いで次々と命を落とした。ベレグントという名の男も、その一人だった。

 

ベレグント・ブレイドシーカーの伝承

―第一の聖剣探究―

 

 ベレグントは勇猛な戦士であり、高地民のゴルティン族を統べた偉大な部族長、ベレディルの長男である。ベレグントの背丈はエルフよりも高く、頭髪はからすのように黒い色をしていた。機知に富み、大木のように屈強なベレグントは、誰よりも優れた感覚にも恵まれていた。幼少の頃から父に狩猟を教わり、成長したベレグントは槍の名手であり、目は鷹にも負けず鋭く、彼が弓を引いて逃れた獲物はいなかった。獲物を追い、放浪の生活を営む高地民も災禍戦役に無縁ではなく、部族も争いに巻き込まれ、ベレグントの幸福な少年時代はあまりにも早く終わりを迎えた。

 ケンダラン山の勾配した土地で、高地民は悪神の一人、虚面神ベシュテロスと彼の軍団に遭遇した。ゴルティン族は次々と魔物の爪に切り裂かれ、ベシュテロスに触れられた者の命は枯れた。ベレグントの父、ベレディルも無残な最期を遂げ、激昂したベレグントがベシュテロスに迫るも、突いた槍は悪神の皮膚に触れるとへし折れ、彼は反撃で意識を失い、虐殺が終わるまで目覚めることはなかった。

 

 意識を取り戻したとき、ベレグントは父だけではなく、皆殺しになった仲間たちの遺体も目にし、部族に突然降りかかり、残酷に命を奪った運命に怒り狂った。ベレグントは血の匂いが漂う土地に、いつからか、暗い色の外套に身を包む人物がたたずみ、自分の様子を静かにうかがっていたことに気がついた。

 「何者だ?」

 ベレグントは折れた槍を拾い上げ、尋ねた。

 「ゴルティン族を根絶やしにしようと、最後の魂を奪いに来た死霊か?ならば闇に帰れ。父の仇を討つときまで、俺には死ぬ暇さえない」

 謎の人物はベレグントの言葉を聞き、頭巾を下ろした。驚いたことに、それはエルフの女性であり、彼女の髪は銀糸が織り成す滝のように見事で、目は黄昏時の空を思わせる、深い紫色であった。

 「槍を下ろしてくださいませ、ベレディルさまのご子息さま」

 エルフの声は心地の良い音楽のように聞こえ、ベレグントの硬直した魂はほぐれた。

 「わらわも父をこの戦争で亡くしまして、あなたさまの気持ちは痛いほど分かります。わらわは不滅民の王の末娘で、名前はイスリアナと申します。女の身ゆえ、長旅はひどく堪えましたが、そのかいあってついに立派な殿方にお目見えできました。お父上の無念を晴らすためなら、あなたさまにはどのような苦労にも耐える覚悟はございましょうか」

 「覚悟はできている」

 と答えたベレグントは、すでにイスリアナの美貌と声に心を奪われていた。

 「必ずやり遂げて見せよう」

 イスリアナはベレグントを森のあずまやに連れ込み、彼に多くのことを教えた。

 

 ベレグントは古の伝承を聞き、不滅帝国の興亡と太陽の剣、シャドウベインの存在を知り、ティーターンの誕生以降、剣を見た者は一人もいないことも知った。シャドウベインだけが悪神を打ち倒し、災禍戦役を終わらせるとも。ベレグントは、復讐を果たす方法は他にはないことを悟った。

 ベレグントはシャドウベインの獲得を誓い、自分の父親だけではなく、イスリアナの父親の敵も討 つことを約束した。シャドウベインの在りかはイスリアナも分からず、彼女が知るのは、鍛冶神トゥーリンがエルフから剣を取り上げたことだけであった。  ベレグントの決意は固く、それを意に介すことはなかった。イスリアナは探求の手助けとして、自分の髪を弦にしたイチイの弓と、炎の呪術が付与された矢の入った矢筒を渡した。さらに、イスリアナは銀色のりんごを十個ほど渡し、一口で一週間の飢えを満たすと伝えた。最後に、鹿の皮にわしの羽毛を施した、一足の深靴を渡した。これを履けば、鹿と同等の速度で走れるだけでなく、一切の疲労を感じないと、イスリアナは話した。

 イスリアナの美貌はベレグントの心を激しく燃え上がらせており、ベレグントはイスリアナに礼を述べ、必ず彼女の元に戻ると約束した。ベレグントがイスリアナした三つの誓約は、剣の獲得、敵討ち、再会であり、ここにベレグントの長い探求が始まった。

 

 ベレグントの旅は長く険しく、彼の探求にまつわる偉業は数多くの歌になり、今でもよく知られている。この先、ベレグントに並ぶ強さと勇気を持つ英雄が現れることはあるだろうか。ベレグントは三年間地界を駆け巡り、何度も命の危険に晒された。ベレグントを待ち受けていたのは機知の試練、力の試練、勇気の試練の三つであった。

 北方凍土にて、ベレグントは北方民の王、カスリックに目を潰され、人を激しく憎むジャイアント、古老ユムルを見つけた。ベレグントは巧みな話術で老ジャイアントをだまし、トゥーリンがシャドウベインをハガンドゥール石窟に隠し、石で作られた彼の子供、ドワーフに剣の警備を任せたことを聞き出した。さらには、ジャイアントが運命の断崖に彫り上げた、預言の話も引き出した。それによれば、シャドウベインは一人の人の手で闇から地上に戻るが、その人は裏切られ、命を落とすというものであった。

 ベレグントはイスリアナに言われていたとおり、その場でユムルを殺害し、老ジャイアントの血を継ぐ四人の息子たちに追われたが、彼らが魔法の深靴を履いたベレグントに追いつくことは難しく、呪術の宿る弓からは炎の矢が放たれ、ジャイアントたちはユムルの仇に逃げられた。

 

 北方凍土を抜けたベレグントは女人族、フューリーたちが古くから住む、南方の熱帯雨林に到達した。 嵐を操る巫女たち、フューリーはハガンドゥール石窟に続く道を知っていたが、ただでは情報を渡さず、ベレグントに危険な取引を持ちかけた。

 ビリアング黒沼にはエルフの誕生よりも古い遺跡があり、女人たちがまれに見て、無音竜と名づけた竜、漆黒大蛇のナーガルがそこを縄張りにしていた。フューリーたちはベレグントにナーガルの生皮を要求し、それに応じたベレグントは悪臭漂う沼地をさ迷い、名もなき遺跡にたどり着いた。化け物の姿が彫られた石碑が並ぶこの場所で、漆黒大蛇はベレグントに忍び寄り、突然沈黙を破った。

 

 ベレグントは大蛇のナーガルに巻きつかれ、絞め殺されそうになったが、強靭な体で何とかそれに耐えた。ベレグントはナーガルの頭をつかみ、毒牙を遠ざけた。そして、両腕に全身の力を込め、今までに数多くの生物を殺した大蛇、ナーガルを逆に絞め殺した。

 大蛇の皮を渡すと、フューリーたちはハガンドゥール石窟について話し始めた。ドワーフたちが最初に築いた石窟、ハガンドゥールに続く道は空の見える場所にはなかった。遠い昔、ドワーフたちは古い洞窟を探索し、その深部にハガンドゥールを構えた。洞窟の入り口は西海にほど近い遺跡、コルデヴォールに存在していた。ベレグントは熱帯雨林を離れ、遺跡へと急いだ。

 

 魔物がひしめく戦場をいくつも抜けて、コルデヴォールに近付きつつあったベレグントは、旅の途中、老梟と称される、人の中で最大の呪術師、ゼイリスタンに出会った。あなたは、この呪術師は一千年後、列王時代で大王カンブリュワンに仕え、相談役を務めたゼリスタンと同じ人物だと思ったようだね。そう、まさしく同一人物だ。ゼリスタンは自分と時間を切り離す術を身に着けていたから、この時点で、彼は土や木と変わらないくらいの年齢だった。

 ゼイリスタンはベレグントの目的を知っており、彼自身も長い間シャドウベインが地界に戻ることを望んでいた。古くから生き、膨大な知識を持つゼイリスタンは、ベレグントに惜しみない援助を申し出た。ゼイリスタンはコルデヴォールに棲み付いたドレイク、ドラゴンの血を継ぎ、死の視線を持つブラカラドゥルの存在をベレグントに警告した。ゼイリスタンは、最初の朝が来る前に魔法をかけられ、作られた真ちゅうの兜、グリムリングをベレグントに渡した。

 ベレグントはゼイリスタンに感謝の言葉を述べ、出発した。そして、ベレグントは西海の側にあるコルデヴォールに着き、ついに秘密通路の入り口を発見した。

 

 ベレグントはドワーフの朽ちた古い要塞、コルデヴォールに到着し、大きな倉庫の中で略奪した黄金と瓦礫を敷いて眠る、ドレイクを目撃した。眠っているとはいえ、ドレイクの姿は恐ろしく、普通の男なら逃げ出すが、ベレグントの勇気は常人離れしていた。ベレグントは怖気づかず、呪術の深靴は音のない足運びを可能にするため、彼はドレイクの横を無事に通りすぎた。

 真っ暗な秘密通路に入り、深部に進むと、ベレグントはドワーフの最古で最大の地底都市、ハガンドゥールを見つけ、魔法の兜を被り、潜入した。打ち捨てられたコルデヴォールの地下に隠されていた大都市、ハガンドゥールにはトゥーリンの子供たち、ドワーフが暮らしており、ベレグントはアーダンの滅亡後、彼らを見た初めての人となった。  ハガンドゥールの警備は厳重であったが、魔法の兜、グリムリングで姿を透明にしたベレグントは、複雑に入り組んだ都市を自由に歩き回ることができた。ドワーフの石窟は壮麗かつ広大であり、シャドウベインを探すベレグントは、鍛冶場と住居で構成されたこの迷路で迷ってしまった。

 しかしながら、ベレグントは街の片隅に身を隠し、イスリアナにもらった銀のりんごを食べながら、ドワーフたちの会話を辛抱強く聞き続けた。数週間が過ぎ、ドワーフの言葉を理解したベレグントは、目的の場所を突き止めた。誰にも見られず、音を立てないベレグントは、ドワーフの守衛だけではなく、呪術で動く石の警備兵たちにも発見されずに、トゥーリンの武器庫に侵入した。ここでベレグントはついにシャドウベインを手に入れ、ハガンドゥールの出口に向かった。

 知石戦役の終結後、ドワーフは地下に姿を隠し、何世紀もの間、空と太陽のある無天井地帯との関わりを断っていた。そのため、トゥーリンの子供、ドワーフは自分たちの都市が見つかることをまったく予期しておらず、警備には隙ができていた。ドワーフたちがシャドウベインの盗難に気づいたとき、すでにベレグントはコルデヴォールを抜け、秘密通路を出ようとしていた。

 

 帰路を急ぐあまり、ベレグントはシャドウベインに巻きつけていた外套を落としてしまい、覆いの取れた剣の柄は強い光を放ち、ここで彼に最後の試練が与えられた。ブラカラドゥルのねぐらはシャドウベインの光に照らされ、竜は目を覚まし、その鋭い目と嗅覚の前に、グリムリングの透明化は効果がなく、ベレグントはドレイクから隠れることができなくなった。

 ブラカラドゥルは恐ろしい視線でベレグントを殺そうとした。しかし、ベレグントは怯みさえしなかった。ベレグントよりも勇敢な人物は、二度と現れないであろう。グリムリングの古い魔法は、ベレグントをブラカラドゥルの炎から守り、ドレイクの花崗岩よりも硬い鱗は、シャドウベインで粘土のように切り刻まれた。トゥーリンが鍛え上げた剣は三度竜を貫き、太古の石と黄金の上にこぼれた高温の血は、それらを溶かした。ベレグントはブラカラドゥルの頭を体から切り離し、炎のように熱い返り血を浴びたが、ドレイクの攻撃はすべて避け、無事に戦いを制した。

 ブラカラドゥルの血に塗れ、コルデヴォールを出たベレグントの左右の腕には、シャドウベインとブラカラドゥルの頭がそれぞれ高く掲げられていた。ベレグントが新しくまとう外套は、彼がドレイクから剥がした、鱗に覆われた生皮であった。ベレグントの探求はついに終わり、彼は復讐の雄叫びを上げ、元居た人の領域に向かった。

 

勇者の死

―地界の勝利と不和―

 

 エルフと人の連合軍が混沌軍団の猛攻に耐え、五年間におよびボディラノン市を防衛した戦いの記録は、今なお歌の題材として、吟遊詩人たちに広く扱われている。醜悪な翼を持ち、空から降りてくる魔物、地中を掘り進み、都市の内部に出現する巨大な虫、混沌界の力に汚されて姿を変え、城壁をよじ登る動物、それら化け物たちの襲撃はおぞましく、壮絶であった。

 軍団の指揮を執る虚面神、ベシュテロスが呪文を詠唱すると、たちまち空は暗くなり、ドラゴンの攻撃にさえ耐えた、太古の城壁は音を立てて崩れた。

 

 すべての希望がついえたと思われたとき、地平線から強い光と共に現れたのは、風よりも速く走り、戦場に向かうベレグントであり、その手には刀身が闇夜の色を帯び、柄は流星のきらめきを放つ、シャドウベインが高く掲げられていた。デーモンの軍団は震え上がり、都市の防衛者たちは救済の時が来たことを確信し、大いに喜んだ。

 ベレグントの突撃は燃え盛る炎の太矢となり、その軌道は魔物の軍勢を瞬時に割いた。ベレグントのドラゴンクロークは魔物の刃と矢を防ぎ、グリムリングは魔術を跳ね除け、トゥーリンが作り上げた剣、シャドウベインは魔物をやすやすと切り裂いた。ベシュテロスもシャドウベインの力にはかなわず、その刃を受けて倒れた。ついにベレグントは父の仇を討ち取り、魔物たちはベシュテロスの断末魔を聞いて逃げ出した。

 

 エルフたちは第二の太陽が復活したことを喜んで歌い、人の王たちはベレグントを救世主として仰ぎ、彼にひざまずいた。皆が口をそろえ、ベレグントに連合軍の指揮を預けようとしたが、彼は頑なに断った。なぜなら、ベレグントは古老ユムルの予言に不安を感じており、実際に、エルフの王たちはベレグントを妬んでいた。老梟ゼイリスタンもベレグントが再びシャドウベインを掲げ、皆を勝利に導くべきだと話したが、彼はユムルの言葉が真実になり、自分が何者かに裏切られることを恐れたため、首を縦に振らなかった。

 ベレグントはボディラノン市を去り、探求の出発点となった場所に向かった。イスリアナにした三つの誓約の内、最後となる再会の約束はまだ果たされていなかった。復讐の成就を知らせるため、ベレグントは銀髪の淑女、イスリアナのあずまやに到着した。

 

 ベレグントはイスリアナの顔を見て喜び、自分のした冒険と成功について、彼女にたくさんのことを語った。再会を果たした二人の心は結ばれ、楽しく話し合った。ベレグントの成功を祝うために、イスリアナはエルフの作り上げた上等の果実酒を空け、彼に杯を渡した。

 一口飲むと、ベレグントは全身の血が熱くなるのを感じ、毒を盛られたことに気がついた。この悪意の塊たるエルフの女はシルエストールの孫娘であり、自分が継承権を持つ、シャドウベインを取り戻すためにベレグントを利用していたのである。

 「必滅の生物、人よ、わらわの復讐は今から始まるのです」

 イスリアナは言った。

 「わらわの父を殺したのは魔物ではなく、人を作り出した全父なのですから。人の子たちは絶滅で父親の罪をあがなうでしょう。まずはあなたが死ぬのです」

 

 イスリアナは自分の野望を死につつあるベレグントに話した。イスリアナはシャドウベインで混沌界の軍勢と人を滅ぼし、地界を支配しようとしていたのだ。すべてを聞いて、ベレグントは激しい怒りの炎を燃やした。足をつき、立ち上がろうとしたが、体は思うように動かず、ベレグントはまた地面に倒れ伏した。毒の激痛に苦しみながら、ベレグントは呪いの言葉を投げかけた。

 「裏切り者よ。我が最期の言葉をよく聞け。ジャイアント、ドレイク、デーモン、サーペントを討伐し、シャドウベインを闇から取り戻した我、ベレディルの息子、ベレグントはこのいまわしい剣に供犠呪詛を封じる。

 シャドウベインは私を裏切り、過去には創造者も裏切り、その手を奪った。私はこの剣を自刃の剣と名付ける。この日より地界の終わりまで、この剣を振るう者すべてに死を与える!全父の御名において、死ぬが良い、薄汚い女よ!死んで呪われよ!」

 ベレグントが息絶えたとき、彼の額に染み付いていたドラゴンの血が微かに光った。

 

 イスリアナはベレグントの言葉を気にとめず、馬で同族の元に戻った。しかしながら、イスリアナの思い通りにはならず、彼女が親族にシャドウベインを持ち帰ると、外様の妖人王たちは剣の所有権を主張し始めた。人の王たちは、ベレグントの剣がイスリアナの手にあるのを見て激怒し、エルフとの同盟を破棄した。

 イスリアナにはたくさんの兄がおり、どの兄も年下の妹がシャドウベインを持つことを許せなかった。自尊心は嫉妬を生み、嫉妬は策謀となり、ダールケレグールの剣先は敵では無く、味方同士に向けられた。エルフたちの足並みは乱れ、敵軍に対する追撃は立ち遅れた。混乱はあまりにも長く、混沌界の軍勢はこれを好機と捕え、反撃に打って出た。

 

 ベシュテロスが倒れたとき、その知らせはすぐに他の悪神たちに届いた。悪神たちでさえ、光と闇をあわせ持つ、この強力な剣に対抗する術はなく、彼らは震え上がった。一度は混沌界に戻り、逃れようと画策した悪神たちは、密偵の報告により妖人軍団の不和を知ると、それを取りやめた。

 悪神たちは全兵力をダールケレグールに差し向け、さらに、シャドウベインの刃を永遠に鈍らせる呪術を解き放った。イスリアナと彼女の兵士たちはことごとく殺され、女王となった彼女の城砦ごと跡形もなく消えてしまった。しかしながら、銀令嬢イスリアナと幹部たちは蘇生し、邪悪な存在に成り果てた。悪神たちのおぞましい魔法のせいであろうか。それとも、死してなおシャドウベインにすがる、欲望が原因だろうか。ベレグントの呪いがドラゴンの血を媒体とし、成就したのかもしれないが、真偽は定かでない。

 こうして、イスリアナとその一族は闇の住人に生まれ変わり、災禍戦役は長引くことになった。悪神の呪術によって、砦とその周辺には不気味な霧がたちこめ、闇に覆われた。ようやく地界に回帰したシャドウベインは、またしても失われたのである。

 

 ベレグントの過ちと彼の死により、災禍戦役は終わらず、大地は荒廃し、無数の命が奪れ、偉大な英雄たちも消えていった。ベレグントが老梟ゼイリスタンの言葉を聞き入れ、全軍を率いていれば、戦役は早期に終結していたのかもしれない。そうであれば、貴賎や善悪に関わらず、無残に失われた命の、どれほどが救われていたのだろうか。豊かな大地と悠久の遺跡、発展した街、それらすべてが破壊を免れるべきであった。

 しかしながら、ベレグントは己の運命に抗えず、シャドウベインは聖騎士が探求に出るまでの間、長く失われてしまった。

 

 ベレグントの冒険と破滅の伝承は、ここで終わる。しかし、まだ多くの謎が残されている。なぜ、イスリアナはシャドウベインの所有権を主張していたのか。シャドウベインは、いつ、どこで、何を目的に作られたのだろうか。エルフがシャドウベインを失い、それがドワーフの要塞に保管された経緯とは。

 答えを明かすために、人どころか、時間と太陽さえもまだ存在しない時代、白夜時代にまでさかのぼろう。シャドウベインにまつわる最も重要な伝承は、恐怖と希望、栄光と犠牲から生まれた。

 

 次が最後の話になる。

 

 

固有名詞一覧

 

《あ》:アーダンの楽園(Realm of Ardan)、悪神(Dark Lords)

《い》:イレケイ(Irekei)、イスリアナ〔銀令嬢〕(Ithriana the Silver Maid) 《う》:運命(Destiny)、運命の断崖(Cliffs of Fate

《え》:エルフ(Elves)

 

《か》:カイリク・ブラックハンマー〔聖騎士〕(Caeric Blackhammer the First Paladin)、 カスリック(Cuthric)、カンブリュワン〔大王〕(Cambruin the High King)、神(Gods)

《く》:供犠呪詛(Blood Curse)、グリムリング(Glimring)

《け》:ケンタウロス(Centaurs)、ケンダラン山(Mount Kenderun)

《こ》:ゴルティン族(Gorthini)、高地民(Hill People)、コルデヴォール(Kolldervor)、混沌界(Chaos)、混沌軍団(Hords of Chaos)、混沌門(Chaos Gate)

 

《さ》:サーペント(Serpent)、災禍戦役(War of Scourge)

《し》:自刃の剣(Traitor)、時間(Time)、ジャイアント(Giants)、シャドウベイン(Shadowbane)、女人(Amazons)シルエストール(Sillestor)

《せ》:西海(Western Sea)、聖騎士(Paladin)、ゼイリスタン(Zaeristan)、全父(All-Father)

 

《た》:ダールケレグール(Dar Khelegur)、太陽の剣(Blade of the Sun)、第二の太陽(Second Sun)

《ち》:地界(World)、地界の子供(World's Children)、知石戦役(War of Stones)、昼日時代(Age of Days)

《て》:ティーターン(Titans)、デーモン(Demons)

《と》:トゥーリン〔鍛冶神〕(Thurin the Shaper)、トゥーリンの子供(Children of Thurin)、ドラゴン(Dragon)、ドラゴンクローク(Dragon Cloak)、ドレイク(Drakes)、ドワーフ(Dwarves)

 

《な》:ナーガル〔漆黒大蛇〕(Naargal the Ebon Serpent)、南方(South)
《ね》:熱帯雨林(Jungles)

 

《は》:バード(Bards)、ハガンドゥール石窟(Halls of Haganduur)、白夜時代(Age of Twilight)

《ひ》:ビリアング黒沼(Black Fens of Viriang)、光呼び(Lightbringer)、被追放民(Outcasts)、人(Men)、人の子(Sons of Men)、人の始祖(First Men)、秘密通路(Hidden Road)、悲涙戦役(War of Tears)

《ふ》:不滅民(Deathless Folk)、フューリー(Furies)、不滅帝国(Deathless Empire)、ブラカラドゥル(Brakaladur)

《へ》:ベシュテロス〔虚面神〕(Veshteroth the Faceless Horror)、ベレグント・ブレイドシーカー(Beregund Bladeseeker)、ベレディル(Beredir)

《ほ》:北方人(Northmen)、北方凍土(Uttermost North)、ボディラノン市(Vodiranon)

 

《み》:密林地帯(Jungles)

《む》:無音竜(Silent Terror)、無天井地帯(Roofless World)

 

《ゆ》:ユムル〔古老〕(Ymur the Old)

 

《り》:竜(Terror)

《る》:ルーン〔力の〕(Runes Of Power)、ルーン石(Rune Stones)

《れ》:列王時代(Age of Kings)、レネリンド平原(Rennelind Field)