シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

バトルメイガスの体験記(Battle Magus Narrative)

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 破壊術師サスルムは言った。「戦争は、アエアインスの本質を極めて明確に表す。事物を壊す力をもつ者が、事物を統御するからである。哲学と歴史ならびに信仰と英知は、事実に何の影響もおよぼさない」
 サスルムは狂人と呼ばれ、非難されることもあった。しかし、五千年のあいだに滅びた諸帝国と血まみれの戦場は、かれの言葉に、まちがいがないことを証明したのである。貴賤と虚飾をとり除く闘争こそが、威力のもっとも純粋な表現といえる。けっきょく、問われるものは力の有無だけである。

 

 では、考えよ。ウィザードリー術と他の諸呪芸を比べたとき、それらの実践にはどのくらいの違いがあるのか。すべての智者が、意志と知性ならびに頭脳を用いることで、宇宙秩序から力をもぎ取り、事象を変化させる。原理はどれも同じである。
 じっさいに、時間が始動したあと、すぐにエルフとヒトが見つけた呪術の用途は、戦場における暴力だった。火炎戦役などの、さまざまな戦役に関する記録によれば、呪術はいくつもの軍隊を壊滅させ、すべての土地を荒廃させた。大半の呪文が失われたため、わたしたちがあまりにも長いあいだ利用してきたものは、散逸を免れた一部に過ぎない。
 災厄戦役のあいだ、呪術結社は学生から学者にまでおよぶ、バトルメイガスの全員を最前線へ派遣し、魔界の軍勢と戦わせた。そして、かれらは全滅したのである。かつてのバトルメイガスとかれらの類まれな力が、歴史上の存在になりはててから数千年がすぎた。そして、呪術学者たちと伝承学者たちによって、戦場呪術は散逸技芸のひとつに分類され、喪失を惜しまれたのである。

 

 しかし、地界は変わった。数か月まえにおきた、砂漠の奥地における発見は、アエアインスに衝撃を与えた。損傷していたアルダン国の遺跡で、冒険者たちが不明書庫を見つけからである。それはヒトにおける最初のメイジ、 十三人目のティーターンが太古の昔に建てものである。巻物と書字板の多くが時間の経過により劣化し、破損していたが、残されていたわずかな文章は呪芸に革新をもたらした。エルフとアルダン人による記録が、長いあいだ失われていた、戦場呪術の全容を明らかにしたのである。
 こうして、技芸をさらなる限界まで磨いた、新しいバトルメイガスたちが生まれた。長いあいだ、戦争で価値を軽んじられてきた呪術師たちが、地位を確立したのである。建物の保護をとり除く呪文だけでなく、壊す呪文でも武装したバトルメイガスたちは、攻城側にとって重要な戦力になる。最近に解明された別の呪文は、統制のとれた敵軍の全体にさえも影響をおよぼし、混乱に陥れる。これは幸先が良い。戦場呪術の技法を知る呪術師たちが、成功を収められるのだから。
 いくつもの新しい王国が台頭してきた。王を自称する者たちが、古代から伝わる支配権の王冠を被り、自分のものとなる領土を獲得した。野心的な軍閥総統たちは、現れたバトルメイガスたちをすぐさま利用し、領国戦役に大きな影響をおよぼした。

 

 もしも、失われた技芸を学ぶ野望と、強大な力を操る意志があるのならば、おまえが動かす手は戦局を変えることになる。おまえの意志が、ネイションの運命を決めるのだ。この古い技芸を修めたいか。それを望まない者は一人もいない。

 

用語一覧

 

《あ》:アエアインス(Aerynth)、アルダン国(Ardan)、アルダン人(Ardani)
《い》:威力(Power)
《う》:ウィザードリー術(Wizardry)、運命(Fate
《え》:エルフ(Elf)

 

《か》:火炎戦役(War of Flames)、学生(Neophyte)
《く》:軍閥総統(Warlords)

 

《さ》:災厄戦役(War Scourge)、サスルム[破壊術師](Sathrum the Sage)、散逸技芸(Lost Art)
《し》:時間(Time)、支配権(Rulership)、呪芸(Arcane Art)、呪術学者(Sage)、呪術結社(Conclave)
《せ》:戦場呪術(Battle Magic)

 

《ち》:地界(World)、智者(Mage)
《て》:ティーターン(Titan)伝承学者(Loremaster)

 

《ね》:ネイション(Nation)

 

《は》:バトルメイガス(Battle Mage)
《ひ》:ヒト(Man)
《ふ》:不明書庫(Lost Archive)

 

《ま》:魔界(Chaos)
《め》:メイジ(Mage)

 

《り》:領国戦役(War of Realms)