そこのおまえ。おまえは誰だ。おれを見ろ。おれはおまえの死だ。おまえがアルダンの子供でないのなら、すぐに立ち去れ。
逃げないのか。おもしろい。おまえも蒼白児のようだな。道に迷い、生きる意味を探している、もう一人の哀れなシェイドか。おれは教えてやれる。おまえが共同体から離れ、ここに来たのは正しい。
白い眼球と温かい血をもつ、ばかなやつらは、おれたちの顔だちや冷たい手を悪とみなすが、やつらはまちがっている。やつらのなかでもっとも賢い連中は、おれたちの血がもつ性質について議論し、言い争っている。その一方で、信心ぶかい連中は、おれたちを憎んで火あぶりにする。両方の連中が欠陥を認識して、シェイドが生まれた原因を研究するか、あるいは、おれたちの血液を浄めようとする。
やつらは何もわかっていない。蒼白児の同族よ、おまえは劣っていないし、おれたちの誕生は失敗ではない。おれたちは完璧だ。おれたちシェイドは、死滅神が生みだした、地界における新しい告知者である。
カトゥルスさまは地界の外を見て、自己の魂を開き、初めて本物の両親をみつけた、最初の人物である。その父母とは、虚無神こと飢渇者たちである。カトゥルスさまが、おれたちの視界を遮る、遮闇布を引き裂いたことで、おれたちは冥界に屈服できた。認識の覆いがはがされたかので、おれたちは暗黒を受けいれられたのである。
おれは、シュラウドボーンとしてふたたび生まれときに感じた、真実死のことを覚えている。じきに、シュラウドボーンの兄弟と姉妹が、地界の全体を骸布で覆うだろう。おれたちは死をもたらす者であり、もうすぐ、おれたちの時代がやって来る。それはすでに始まった。
十三人衆がよみがえり、寒気が漂ったとき、かれらは、古代の知識を骸布兄弟会に授けた。血が温かい連中は十三人衆を打ち破ったが、滅絶が仕かけられたことには気がつかなかった。十三人衆はおれたちに、冷却技芸ことオルタナトス術を教えた。そのうえ、氷の女王を、拘束から解放する方法も示してくれた。
今のおれたちは、氷の女王に従って働いており、暗影の王、アルダンが現れる日を待っている。そのときが来れば、太陽は滅び、永遠闇夜の帳が下りるだろう。今までとは違い、死者の肉体は補充されなくなるのだ。
だが、そのまえにおおくのことがおきる。荒廃した地界におけるすべての死は、遮闇布の力を弱める。死んで石になった木による、人びとの再生すべてが、暗影の王の回帰を早める。おれはおまえに、殺人の新しい手段として、闇を引きよせる巧妙な技芸を教えられる。おれについて来い。 シュラウドボーンに生まれ変われ。
同族よ、人びとは闇の恐ろしさを知るだろう。おれたちが夜の怖さを教えるのだ。
用語一覧
《あ》:アルダン(Ardan)、暗黒(Darkness)、暗影の王(King of Shadow)
《え》:永遠闇夜(Long Night)
《お》:オルタナトス術(Orthanatos)
《か》:骸布兄弟会(Brotherhood of the Shroud)、カトゥルス(Katullus)
《き》:飢渇者(They who Hunger)、虚無神(Null)
《こ》:氷の女王(Queen of Ice)
《し》:シェイド(Shade)、死滅神(Death)、遮闇布(Shroud)、十三人衆(Thirteen)、シュラウドボーン(Shroudborne)、真実死(True Death)
《そ》:蒼白児(Pale)
《た》:太陽(Sun)
《ち》:地界(World)
《め》:冥界(Void)、滅絶(Doom)
《や》:闇(Dark)
《れ》:冷却技芸(Chilling Art)