シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

アニメイターの体験記(Animator Narrative)

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杖の書、第12章8節から18節まで:

8:かくてエルフらの大背教を撃ち破り獣主たちを服従せしめたあと全父人びとに背を向け去りて北方の荒地に向かへり
9:御父静かな渓谷に至りてここに冷たき水の流るる清き川みつけたり
10:全父渓谷を見てこれを善と認め地界始まりしときと同じく見事な歌をうたひたまへり
11:御父歌ひながらたくましき両手で川の粘土をすくい渓谷の中央に土と石を高く積み重ねたり
12:ここに造形神ならびに創造神たる全父長く難しき作業をおこなひてかつて御父が言ふたとおりに最上たる御父の子供たちが象られり
13:かくて御父の厳然たる歌が響きて万象布のあらゆる糸がうなり全父火と土と風と水と霊を布より引きだして象られしものらに注ひだり
14:空に雷鳴が響き大地が揺れ海でおきし津波は地界をなす諸もろの岩と競り合へり
15:ジャイアントらは震えて涙を流しエルフらは恐れたりされど大平原のケンタウロスらのみが喜びけるは全父の最上たる子供らの誕生が迫りければなり
16:ここにおひて作業が完了し全父による造形は終われり
17:御父の眼前に御父の造形の力によりて肉に変えられたる粘土からとどこおおりなく象られ命を与えられたる七人の男と六人の女が立ち並ばれり
18:ここに全父の理想が完全となりけるはかれら十三人から全人の子が生まれ地界の全地を所有せしむればなり

 

 あらゆる呪芸のなかでもっとも謎めいているものが、人形製作ことアニメイション術である。エルフの呪術師たちは、この科学を、いわゆる下等呪芸に分類した。しかし、ドワーフと人の子は、これを聖なる技とみなしている。

 アニメイション術を使うことで、チャネラーは、石か粘土でできた像に運動と意思を与えられる。それは、昼中時代の初めに、全父が自分の子供たちを作成した出来事の、粗雑な模倣といえよう。この技術を修めたチャネラーは、ムアゴレムことストーンファミリアを製作できる。それは、製作者の意思と技芸により、形姿と動作ならびに自主性さえも獲得した、石と土でできた像のことである。

 

 アニメイション術は、古代における人の子たちによく知られていたが、災厄戦役は、上古の壮麗さごとそれを滅ぼした。魔界から来た侵略者たちによって、人形製作の技芸は、ヒトのあいだで、何世紀にもおよび失われたのである。近年にアニメイション術は再発見されたため、ヒトのアニメイターたちは、天変地異のおきた現代で、ふたたびのみを取った。

 

 アニメイション術を保存していたのはドワーフたちであり、かれらはこの技術への適性を示した。伝承によると、セルロン・ベロウストーンという一人のドワーフがいた。地中から出てきたかれは、人創造の渓谷における片隅で、全父が、最初のヒトたちを製作する場面を見た。
 セルロンだけが、時間の創造を告げる嵐に耐える、勇気と忍耐力をもっていた。そして、かれは獲得したアニメイション術の知識を、同族のもとに持ち帰った。現代の暗い時代においても、セルロンの功績は伝わっており、かれは、史上最大の人形製作師とみなされている。かれは、ドワーフの偉大な英雄かつ石窟長でもある、アラク・ヘルムスプリッターにならぶほど、歌と物語で称えられている。
 セルロンの最高傑作は、古い山を削って作られた巨大な石像、コロッサスだ。その製作には、二百年の歳月を要したという。とはいえ、コロッサスは数千年のあいだ停止しており、直立したまま、滅びたドワーフの街、グリムボルド市を守備している。この巨大な像は、わたしたちのものよりも古い時代に、強大な技芸が使われたことを想起させる。

 

用語一覧

 

《あ》:アニメイション術(Animation)、アニメイター(Animator)、アラク・ヘルムスプリッター(Arak Helmsplitter)
《え》:英雄(Hero)、エルフ(Elf)

 

《か》:風(Air)、下等呪芸(Lesser Art)
《き》:技芸(Art)、巨大人形(Colossus)
《く》:グリムボルド市(Grimbord)
《こ》:コロッサス(Colossus)

 

《さ》:災禍戦役(War of the Scourge)
《し》:時間(Time)、ジャイアント(Giant)、獣主(Wild Beast)、呪芸(Arcane Art)、上古(Elder Days)
《せ》:石窟長(Thane)、セルロン・ベロウストーン(Therron Bellowstone)、全父(All-Father)
《そ》:造形神(Crafter)、創造神(Creator

 

《た》:大背教(Treason of the Elves)、大平原(Vast Plain)
《ち》:地界(World)、チャネラー(Channeler)
《つ》:杖の書(Book of Staves)、土(Earth)
《て》:天変地異(Turning)
《と》:ドワーフ(Dwarf)

 

《に》:人形製作(Crafting)、人形製作師(Crafter)

 

《は》:万象布(Great Tapestry
《ひ》:火(Fire)、ヒト(Human)、人創造の渓谷(Valley of Creation)、人の子(Son of Men)、昼中時代(Age of Days)
《ほ》:北方(North)

 

《ま》:魔界(Chaos)
《み》:水(Warter)

 

《れ》:霊(Spirit)