この道を通る者は少ない。幽霊が出るこの谷で、あなたは何の仕事をしているのか。黄金を探しているのか。あなたは、どこかで狩りをしようと考えているのかもしれない。ここには、確かに古代の財宝が埋められているが、本来の所有者は、まだそれを手放す用意ができていないのかもしれない。
死者たちはこの高地を歩く。気をつけろ。死者たちと戦う勇気があるならば、わたしの祝福を帯びて前進し、かれらの墓へ汚い者たちを送り返しなさい。
行くまえに、わたしの警告へ耳を傾け、あなたを待ち受ける敵たちに備えておきなさい。さもなければ、あなたの魂は盗まれるだろう。二つの敵が、常に全父の子たちを脅かしてきた。魔界の災厄、ならびに、飢えている闇こと、冥界の冷たい呪詛だ。その二つがこの土地に集まっている。
昔の時代において、この高地は、グウェンダネン人にとって神聖なものだった。古代における複数の石を持ち上げて、諸丘に点在する積み石の塚を建てたのは、グウェンダネン人だった。そして、かれらの王たちおよび氏族長たちが、大きな名誉を帯びながら、同建築物の下に埋葬されたのだ。
複数の時代にわたって、王たちと氏族長たちは静かに横たわり、諸墓は古代の呪句と強力な呪文によって、防護された。しかし、現在では防護が存在しなくなり、高地は暗く危険な場所へ変わった。
大転換は諸墓の呪句を無効化し、略奪者の群れがここへ到来した。黄金を求める者たちもいたが、グウェンダネン人の諸遺物に対し、興味をもつ者たちもいた。それら異教の偶像および財宝は、混沌の勢力による、最初の台頭よりも古い時代に、高位のドルイドたちが制作したものだ。
あまりにも多くの貴重品が盗掘されたため、王たちは起きあがった。闇はこの土地へ根を下ろし、現在では、古代の死者たちが、かれらを崇拝する者たち、ならびに、複数の悪いものを引き寄せている。骸布兄弟団の青白い僧侶たちは、冥界から、何らかの邪悪な霊を呼び出そうとしている。さらに、グウェンダネン人の王たちは、暗く恐ろしい吸血鬼公として復活した。わたしは、冥界のもっとも強力な副官こと、堕天使たちが、何かの護衛として、仕えるために派遣されたことも、聞いた。
これらの悪は、この高地に潜伏している危険の、半分にすぎない。
混沌の勢力は、この高地を一掃しながら、メイルストロム圏の悪魔将校たちにとって重要な、何らかの財宝を探している。混沌の勢力は、ルーン門を通過して到来した。トラヴェラーたちの全員が同門の開放に失敗したが、何らかの方法で悪魔たちは実現した。
悪魔たちが活気づいたことにより、さまざまな集団が到来した。混沌の信奉者たちとヴォルグリム軍団、ならびに、ベルーヌアス教団こと太陽の熱狂者たちだ。これらの集団が何を探しているかは、わたしにはわからないが、目的のものが見つかれば、世界中の人びとが後悔することになる。
怖いのか。違うようだな。すばらしい。光は、ここで広がる悪を放逐するために、すべての剣を必要としている。幸運を祈る。聖ヴェントの祝福があなたの剣に宿りますように。
ところで、あなたは誰ですか。
わたしは、聖ヴェント修道会に属する、アンデッドハンターであり、守護者だ。何世紀にもわたって、わたしたちは待ちつづけ、古文書を研究しながら、適切な武器を集めていた。なぜなら、暗影が過去のアルダン領国に落ちたことが、再現されることを懸念していたからだ。
アラリックが予言したとおりに、大転換で死者たちは起きあがったが、わたしたちは準備ができていた。わたしたちの修道会は、全父教会において小さな部分だったが、不可欠であり、ふたたび成長している。
わたしたちは、暗影期に押し寄せてきた大群を、聖水と冷たい鉄、ならびに、聖樹の杭で食い止めた。しかし、仕事はまだ終わっていなかった。わたしたちの修道会は、この高地に潜む悪に対し、適切な聖戦をおこなうための、十分な資源をもっていない。だから、わたしたちが不足している兵力を、あなたに提供してもらいたいのだ。
わたしたちと共に戦わないか。わたしたちの修道会における、古代からの古参こと、マルラゾールを探しなさい。あなたが、マルラゾールに資質を認められて参加するなら、わたしたちは光栄だ。
グウェンダネン人とは誰ですか。
人の子たちは、多くの異民族として分離した。エテュリア国人は最大の勢力であり、全父教会、ならびに、カンブリュワンに上級王として統合される、十王国を生み出した。グウェンダネン人は、エテュリア国人にとっての古くからの宿敵であり、常に原生林で居住して古い信仰を抱く、高地人だった。
グウェンダネン人たちは、どの諸神よりもブライアラ女神を崇敬している。ドルイドおよびレンジャーの古信仰は、同民族のものだ。グウェンダネン人たちが、今でも獣主たちを崇拝していると、言う者たちがいる。じっさいに、グウェンダネン人として生まれた者たちのなかでは、他の諸民族よりも獣化者が多い。
災厄戦争と十王国の台頭、ならびに、全父教会の勤勉な働きによって、異教徒であるグウェンダネン人たちは衰退した。グウェンダネン人たちは、現在では境界の原生林にしか住んでおらず、同地で、古代の諸霊場および諸立石に執着している。
ヴォルグリム軍団とは何ですか。
ヴォルグリム軍団か。それは古代の名前であり、昔は、名誉および栄光の花冠を着けていたが、現在では、モーロック逸脱神の背信に染まっている。災厄戦争の最中に、エルフとヒトの両軍隊における、最高の戦士たちともっとも賢明な将官たちが、ヴォルグリム軍団を結成した。同軍団では、長子種族と人の子が肩を並べて戦った。
いつしか、戦争神マローグは長い隠遁から戻り、ヴォルグリム軍団の指揮を執って、同軍団を連勝へ導いた。
マローグ神が全父を裏切り、御父を、混沌の悪魔将校たちのもとへ送ろうとしたときに、ヴォルグリム軍団の命運は尽きた。マローグ神の策略は失敗し、ヴォルグリム軍団の戦士たちは、かれらの邪悪な主人とともに閉じ込められた。最終決戦の目前で、マローグ神の裏切りは、ヴォルグリム軍団の名前を永遠に毒した。
反逆神マローグは、混沌における奈落の中で封印されて、被追放神モーロックへ変化し、アエアインスへ戻ってきた。わたしは、戦士たちおよび帰依者たちの、混沌に属する両者が、ヴォルグリム軍団の古い装備を着ていたのを、目撃した。
噂によれば、モーロック逸脱神は、ヴォルグリム軍団の、呪力を帯びた遺物を求めて、遺跡および古い場所を探索している。したがって、一部の人びとは懸念している。この不具神が、同軍団を改革して利用し、アエアインスにおける全部の陸地破片を、征服しようと企んでいるのかもしれないと。
疑いなく、ヴォルグリム軍団は、この幽霊が出る高地で、不具伸の邪悪な仕事を実行している。ヴォルグリム軍団は悪の強力な代理人であり、必ず止めなければならない。
ベルーヌアス教団とは何ですか。
全父教会は、二つの時代にわたり敵対的な諸信仰と戦い、多数におよぶ偽の神を糾弾してきた。獣主たちと混沌の悪魔将校たちは、全父の宿敵として広く知られている。しかし、他にも多くの敵が存在した。
太陽神ヌアスを崇拝している、ベルーの追従者たちは、長いあいだ根絶されたと思われていた、古代の熱狂者だ。しかし、ベルーの追従者たちは、ふたたび騒動をおこそうとしている。
脱走したヒトたちに対して、全父への信仰を示し、アルダン領国の忘れられた歴史を伝えたのは、ケンタウロスたちだった。しかし、そのときに、ヒトのあいだでは、新しい信仰および運命を受容しない者たちがいた。
これらのヒトたちは、アルダン王を救わなかった全父を恨み、ティーターンたちへの従属も止めた。主人たちの愚かさが、昔のヒトたちを破滅させたと考えたためだ。これらのヒトたちは、兵馬たちの助言を拒絶し、新しく崇めるべき諸神を探しに行った。
預言者であるベルーに導かれて、背教者たちは、大地と大気ならびに海と火の、諸元素を崇拝するようになった。ベルーたちの教団において、火は、諸元素のあいだで、もっとも高い地位に位置づけられた。同元素が、あらゆる生命における、発生および消滅の原因として、創造および破壊の作用をもつと、理解されたためである
ベルーに追従する者たちは、天空神である、ヌアスと名づけた太陽を、宇宙における至高の力とみなして、崇拝した。ベルーたちによる異端は、熱心な信者たちに長くは支持されなかった。さらに、人間を犠牲とする、邪悪な儀式の噂によって、全父教会はベルーたちを異端者とみなし、糾弾するようになった。
聖戦と審問によって、ベルーヌアス教団は潜伏へ追い込まれ、グウェンダネン人たちのなかに紛れこんだ。そして、一時的に、ヌアス神は同民族の万神殿へ加えられた。しかし、いつしかグウェンダネン人の勢力は衰え、ベルーの諸異端は、高地人のあいだでさえ忘れられた。
最近では、ベルーヌアス教団が改革された、もしくは、潜伏を止めて姿を現したという噂がある。黄銅製の、太陽神に属する法衣を着た僧侶たちは、この高地を放浪している。疑いなく、かれらは、グウェンダネン人の王たちがもった、諸墓のあいだで、太陽教団における古代の諸遺物を探している。
もしも、ヌアス教徒たちが、混沌の陣営と骸布兄弟団員の、両方から歓迎されていないならば、おぞましい新情報になるだろう。この場所には、悪にとっての強力な仲間たちがいる。それらは滅ぼされなければならない。
骸布兄弟団とは何ですか。
その名前を大声で言うな。枯れた現代で蔓延している、すべての卑劣な諸異端のなかには、シュラウドボーンと呼ばれる者たちがいる。かれらは、最大の俗悪にしがみついているのだろう。かれらは、アルダン王の滅び預言者こと、カトゥルスに対する、追従者だ。
堕落したヒーラーであるカトゥルスは、全父教会のプレレイトになった、最初で最後のシェイドだ。全父教会へカトゥルスを入会させたことは、新しく発見された種族である、シェイドを、全父の子へ引き入れる試行だった。残念ながら、この試行は失敗に終わった。
カトゥルスは聖都ダルゴス市に配属され、写字生として、聖典を書き写す仕事をしていた。この若いプレレイトは、夜ごとに、総主教の最も神聖な諸書庫へ潜入した。それらの中で、かれは、全父教会が非難もしくは規定した、多数の古典を読んだ。
カトゥルスが、古代の諸本から何を発見したかは、誰にもわからないが、知識がかれを狂わせたようだ。カトゥルスは、凶暴になったうえに常軌を逸脱し、このシェイドのプレレイトは、即座に全父教会から破門された。そして、総主教じしんが、シェイドが、聖職者として奉仕することを禁じる、指令を出した。
長い年月をかけて、カトゥルスの諸教説を中心に、謎めいた教団である骸布兄弟団が成長した。骸布兄弟団の成員たちは、ティーターンたちの堕落した王であり、死者移送者でもある、アルダン王の、熱狂的な追従者だ。さらに、かれらは、カトゥルスが、灰色公に選ばれた預言者だと信じている。カトゥルスは、総主教の諸書庫から盗んだ、滅びたアルダン領国の古い諸巻物を、現在でも所持していると、ささやかれている。
骸布兄弟団は、近づいている大きな変化へ備えるために、地界へ勧告している。同教団における成員たちの話によれば、大転換は常夕闇にすぎず、じきに、常闇が落ちることになる。死が、報復の念をともないながら、砕けた地界へ帰来し、すべての生物が、到来する影に消費されるだろう。
骸布兄弟団は、ヒトを用いる人身御供と人食い、ならびに、他の、多種類におよぶ下劣な犯罪の実践に、大きな喜びを感じている。骸布兄弟団の成員たちは、たいていは、幽霊たちおよび歩く死者たちがいる痩地で、卑劣な崇拝を実践している。しかし、何らかの暗い理由で、現在におけるかれらの工作員たちは、この高地で徹底的な捜索をおこなっている。グウェンダネン人の死んだ王たちと交信しながらだ。
聖ヴェントとは誰ですか。
ヴェントは古代の聖人だ。かれは、ヒトとエルフならびにケンタウロスの、各信仰が一つに統合されたときよりも、遠い昔に、生きて死んだ。
古代の諸聖典によると、グリーンスワードに到来した破滅は、苦痛と死だけでなく、邪悪な恐怖ももたらした、ひどい疫病だった。疫病による犠牲者たちの全員が、死の四日後に、生物の肉を食う、心をもたない亡者として起きあがった。
ヴェント・オブ・ケレドーアだけが、恐れることなく、グリーンスワードへ足を踏み入れた。信仰が ヴェントを支え、かれに触れられた歩く死者たちは、ふたたび眠りについた。ヴェントは、死者たちによる支配を終わらせ、グリーンスワードの諸井戸を浄化して、疫病を永遠に治癒した。やがて、同行為の拠点が、信仰にもとづく強大な修道院になった。
暗影戦争に関する複数の古文書が、その修道院に運ばれ、対亡者狩人の修道会が生まれた。
会話を終える。
用語一覧
《あ》:アエアインス(Aerynth)、悪魔(Demon)、悪魔将校(Banelord)、アラリック(Alaric)、アルダン(Ardan)、アルダン領国(Ardan)、暗影(Shadow)、暗影期(Dark Years)、暗影戦争(War of Shadows)、アンデッドハンター(Undead Hunter)
《う》:ヴェント[聖](Saint Wend)、ヴェント・オブ・ケレドーア(Wend of Kelledor)、ヴォルグリム軍団(Vorgrim Legion)、宇宙(Universe)、運命(Destiny)
《え》:エテュリア国(Ethyria)、エルフ(Elf)
《か》:骸布兄弟団(Brotherhood of Shroud / Shroud Brotherhood)、カトゥルス(Katullus)、神(God)、カンブリュワン(Cambruin)
《き》:吸血鬼公(Vampire Lord)
《く》:グウェンダネン人(Gwendannen)、グリーンスワード(Greensward)
《け》:元素(Element)、ケンタウロス(Centaur)
《こ》:高地人(Hillman)、古信仰(Old Faith)、混沌(Chaos)
《さ》:災厄戦争(War of Scourge)
《し》:死(Death)、シェイド(Shade)、死者移送者(Ferryman of the Dead)、時代(Age)、十王国(Ten Kingdoms)、獣主(Beast Lord)、守護者(Defender)、上級王(High King)、シュラウドボーン(Shroudborne)、神敵(Terror)
《せ》:聖ヴェント修道会(Holy Order of Saint Wend)、聖戦(Crusade)、聖人(Saint)、全父(All-Father)、全父教会(Holy Church / Holy Church of the All-Father)、全父の子(All-Father's Child / Child of the All-Father)
《そ》:総主教(Patriarch)
《た》:大転換(Turning)、対亡者狩人の修道会(Order of Undead Hunters)、太陽(Sun)、太陽教団(Sun Cult)、太陽神(Sun God)、堕天使(Fallen Angel)、ダルゴス市[聖都](Holy City of Dalgoth)
《ち》:地界(World)、長子種族(Firstborn)
《て》:ティーターン(Titan)、天空神(Sky God)
《と》:常闇(Night)、常夕闇(Dusk)、トラヴェラー(Traveler)、ドルイド(Druid)
《な》:奈落(Pit)
《ぬ》:ヌアス[太陽神](Sun God Nuath)
《は》:灰色公(Grey Lord)、破滅(Doom)
《ひ》:火(Fire)、ヒーラー(Healer)、ヒト(Human / Humanity)、人の子(Son of Men)
《ふ》:不具伸(Maimed God)、ブライアラ(Braialla)、プレレイト(Prelate)
《へ》:兵馬(Horse Lord)、ベルー(Bellugh)、ベルーヌアス(Bellugh Nuath)
《ほ》:滅び預言者(Doomed Prophet)
《ま》:魔界(Chaos)、マルラゾール(Malrazor)、マローグ[戦争神](Malog the War God)
《め》:冥界(Void)、メイルストロム圏(Maelstrom)
《も》:亡者(Undead)、モーロック[被追放神](Morloch the Outcast)
《や》:闇(Dark)
《れ》:レンジャー(Ranger)、レンドル[対亡者狩人](Rendor, Undead Hunter)
《る》:ルーン門(Runegate)