聖人たちがあなたの肉を保護しますように。大惨事がおきたとき以来、この道を通る者は少ない。あなたは、この場所を覆う闇に対し、光をもたらすために来たのか。それとも、希望か。もしもそうならば、あなたの仕事はあなたじしんに適している。
この場所には、大地を衰弱させ、空の一面に、暗い帳を広げるほど強力な、大きい悪が巣くっている。死者たちがこの枯れた高地を歩き、飢餓である闇こと冥界の、強力な手先たちによって、悪へ走らされている。シャルヌ公は、あらゆる悪をかれのもとへ呼び寄せ、骸布兄弟団は、かれへ臣従を誓いに来た。
あなたが、あなたじしんの勇気および力を疑うならば、それ以上は来なくてもよい。なぜなら、亡者軍団があなたの魂を奪うからだ。しかし、あなたが、敵たちへ匹敵する勇気をもっているならば、聖ヴェントの祝福を帯びて前進し、かれらの墓へ汚い者たちを送り返しなさい。
大惨事とは何ですか。シャルヌ公とは誰ですか。
凶悪化したシャルヌ公は、上級王カンブリュワンの忠実な家来であり、列王時代の末期に、この土地の統治権を与えられた。シャルヌ公は、悲涙戦争の終盤で、カンブリュワン王の軍団とともに馬で出発した。そして、最後の壮絶な戦闘は、結果として大転換を発生させた。
シャルヌ公は、戦場から故郷へ帰るまでに、数年の月日を費やしたが、ようやく戻ってきたときに、恐ろしい光景を目撃した。
大転換がおきたあとの絶望期では、死者たちの多くが、亡者としてふたたび立ちあがった。そして、かれらの肉体は、冥界の、暗く憎悪に満ちた力によって、荒れ狂った。
この州は、大転換につづいた疫病で荒廃し、シャルヌ公は同地にようやく戻ってきた。そのときに、かれは、かれの妻および子供たちが、死亡したあとに起きあがり、聖ヴェント修道会に撃破されたことを、知った。戦争の経験から、半ば狂気に陥っていたシャルヌ公は、激怒した。そして、かれの領地を監視していた、プレレイトを殺害し、善の道に対して永遠に背を向けた。
シャルヌ公は、暗い知識および古代の諸秘奥を探し出して、冥界の中へ呼びかけた。そして、冥界は答えた。
シャルヌ公は、死の帳の向こう側にいる、家族を返してもらうために、暗黒の外側へ、自分の魂を捧げた。冥界の諸力は重い代償を負わせた。現在のシャルヌ公は、暗闇の手先ことヴァンパイアであり、報酬を与えられるために、冥界へ奉仕しなければならない。
シャルヌ公による汚いネクロマンシー術は、おれたちアンデッドハンターが、ここで実行した善行の全部を、台無しにした。土地と空は荒廃している。じきに、シャルヌ公といまいましい骸布兄弟団の熱狂者たちは、何らかの大きな悪を考案しようとするだろう。
おれが属する修道会には、シャルヌ公に対抗する力がない。しかし、あなたには、この暗い領域の中心部へ突き進み、砦を襲撃して、かれを殺害することが、できるかもしれない。もしも、シャルヌ公が倒れれば、すべての生物が助かるだろう。
ところで、あなたは誰ですか。
わたしは、聖ヴェント修道会に属する、アンデッドハンターであり、守護者だ。何世紀にもわたって、わたしたちは待ちつづけ、古文書を研究しながら、適切な武器を集めていた。なぜなら、暗影が過去のアルダン領国に落ちたことが、再現されることを懸念していたからだ。
アラリックが予言したとおりに、大転換で死者たちは起きあがったが、わたしたちは準備ができていた。わたしたちの修道会は、全父教会において小さな部分だったが、不可欠であり、ふたたび成長している。
わたしたちは、暗影期に押し寄せてきた大群を、聖水と冷たい鉄、ならびに、聖樹の杭で食い止めた。しかし、仕事はまだ終わっていなかった。わたしたちの修道会は、この高地に潜む悪に対し、適切な聖戦をおこなうための、十分な資源をもっていない。だから、わたしたちが不足している兵力を、あなたに提供してもらいたいのだ。
わたしたちと共に戦わないか。わたしたちの修道会における、古代からの古参こと、マルラゾールを探しなさい。あなたが、マルラゾールに資質を認められて参加するなら、わたしたちは光栄だ。
骸布兄弟団とは何ですか。
その名前を大声で言うな。枯れた現代で蔓延している、すべての卑劣な諸異端のなかには、シュラウドボーンと呼ばれる者たちがいる。かれらは、最大の俗悪にしがみついているのだろう。かれらは、アルダン王の滅び預言者こと、カトゥルスに対する、追従者だ。
堕落したヒーラーであるカトゥルスは、全父教会のプレレイトになった、最初で最後のシェイドだ。全父教会へカトゥルスを入会させたことは、新しく発見された種族である、シェイドを、全父の子へ引き入れる試行だった。残念ながら、この試行は失敗に終わった。
カトゥルスは聖都ダルゴス市に配属され、写字生として、聖典を書き写す仕事をしていた。この若いプレレイトは、夜ごとに、総主教の最も神聖な諸書庫へ潜入した。それらの中で、かれは、全父教会が非難もしくは規定した、多数の古典を読んだ。
カトゥルスが、古代の諸本から何を発見したかは、誰にもわからないが、知識がかれを狂わせたようだ。カトゥルスは、凶暴になったうえに常軌を逸脱し、このシェイドのプレレイトは、即座に全父教会から破門された。そして、総主教じしんが、シェイドが、聖職者として奉仕することを禁じる、指令を出した。
長い年月をかけて、カトゥルスの諸教説を中心に、謎めいた教団である骸布兄弟団が成長した。骸布兄弟団の成員たちは、ティーターンたちの堕落した王であり、死者移送者でもある、アルダン王の、熱狂的な追従者だ。さらに、かれらは、カトゥルスが、灰色公に選ばれた預言者だと信じている。カトゥルスは、総主教の諸書庫から盗んだ、滅びたアルダン領国の古い諸巻物を、現在でも所持していると、ささやかれている。
骸布兄弟団は、近づいている大きな変化へ備えるために、地界へ勧告している。同教団における成員たちの話によれば、大転換は常夕闇にすぎず、じきに、常闇が落ちることになる。死が、報復の念をともないながら、砕けた地界へ帰来し、すべての生物が、到来する影に消費されるだろう。
骸布兄弟団は、ヒトを用いる人身御供と人食い、ならびに、他の、多種類におよぶ下劣な犯罪の実践に、大きな喜びを感じている。
骸布兄弟団の成員たちは、この枯れた土地で密集しており、吸血鬼公に対して、暗い崇拝を捧げている。
会話を終える。
用語一覧
《あ》:アラリック(Alaric)、アルダン(Ardan)、アルダン領国(Ardan)、暗影(Shadow)、暗影期(Dark Years)、暗黒(Black)、アンデッドハンター(Undead hunter)
《う》:ヴァンパイア(Vampire)、ヴェント[聖](Saint Wend)
《か》:骸布兄弟団(Brotherhood of the Shroud)、カトゥルス(Katullus)、カンブリュワン[上級王](High King Cambruin)
《き》:飢餓(Hungers)、吸血鬼公(Vampire Lord)、凶悪化したシャルヌ公(Lord Fellgrim Charne)
《く》:グリゴリ[対亡者狩人](Grigori the Undead Hunter)
《し》:シェイド(Shade)、死者移送者(Ferryman of the Dead)、シャルヌ公(Lord Charne)、守護者(Defender)、シュラウドボーン(Shroudborne)
《せ》:聖ヴェント修道会(Holy Order of Saint Wend)、聖人(Saint)、絶望期(Dark Years)、全父教会(Church of the All-Father / Holy Church)、全父の子(All-Father's Child)
《そ》:総主教(Patriarch)
《た》:大惨事(Tragedy)、大転換(Turning)、ダルゴス市[聖都](Holy City of Dalgoth)
《ち》:地界(World)
《と》:常闇(Night)、常夕闇(Dusk)
《ね》:ネクロマンシー術(Necromancy)
《は》:灰色公(Grey Lord)
《ひ》:ヒーラー(Healer)、悲涙戦争(War of Tears)
《ふ》:プレレイト(Prelate)
《ほ》:滅び預言者(Doomed Prophet)
《ま》:マルラゾール(Malrazor)
《め》:冥界(Void)
《も》:亡者(Undead)、亡者軍団(Undead Legion)
《や》:闇(Dark)
《れ》:列王時代(Age of Kings)