シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

ゴルゴイの体験記(Gorgoi Narrative)

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 生まれたばかりでも、自分のことはわかるだろう、幼子よ。おまえは、生者の温かい血を飲むために、闇から生まれた人殺しだ。おまえは、自分の魂を虚無へ喜んで捧げ、死の御使いになったヴァンパイアだ。自分のことはわかるだろう。だが、なぜこうなったのか。おまえは、わたしたちの血族がどこから来て、どのように生まれたか知らないだろう。
 おまえの血液は、想像のおよばない力を内包している。その力を完全に引き出すため、まず始めに、最初のヴァンパイアこと血の女王について学べ。さらに、彼女が苦労を重ね、冥界の冷たい心臓から獲得した、秘技のことも知る必要がある。

 

 初めて影の力を見たとき、彼女は、自分の名前をグホルゴールに改めた。グホルゴールさまを裏切った一族は、時間が創造されたことにより、彼女が狂気におちいったと言った。しかし、このパンダルリオン神の余計な干渉は、彼女の目を開かせ、究極の真理を目撃させていたのである。
 エルフであるグホルゴールさまは、不滅帝国の養成した、最高といえるウィザードたちの一人として生きてきた。グホルゴールさまは、死と不死ならびに影の謎を解明して、自種族の不滅性を取り戻そうとした。したがって、彼女は十二人の幻視者をともない、僻地に隠れた。
 最初に虚無の啓示を獲得したのは、グホルゴールさまだった。それは諸空間のよどみを明らかにした、三本の暗黒牙であり、全生物の運命も彼女に開示したのである。グホルゴールさまは、ネクロマンシーとも呼ばれる死の呪術、グホレグルの作成にあたって、中心人物になった。
 ただよう冥界と契約し、死体を操作するだけでは、グホルゴールさまは満足しなかった。彼女は、冥界の冷たい接触を受けて、変容することを望み、時間と死を超越しようとした。このような理由から、彼女は冥界への到達と、自分じしんをそこに捧げる目的をもった。彼女は死の克服を求め、自分の命を絶つことにしたのだ。

 

 数年におよぶ、緻密な研究と難解な観想をとおして、 グホルゴールさまは儀式を完成させた。グホルゴールさまは、自分じしんを別の場所へ送った。そこで冥界に触れられた彼女の魂は、冥界の意思により、消滅すると同時に刷新された。グホルゴールさまの肉体は溶け変わり、冷たい大理石のような姿を現した。こうして一人のエルフが死に、最初のヴァンパイアが生まれたのだ。
 儀式は高度なものだったため、十三人のなかで、グホルゴールさまだけが変容を成功させた。グホルゴールさまは、新しい体にともなう力を楽しんだ。彼女はわたしたちの種族がもつ、大いなる秘技を学べたからである。それは、血液が生命であるということだ。血は、わたしたちがもつ全能力の源泉であり、変容の成果だからだ。

 

 魂が肉体にはたらきかけ、活力を供給することにより、すべての生物が暖かい体を維持する。血液は、生命と熱をつなぐ媒介といえる。対象の血を飲むことで、わたしたちは犠牲者の魂を消費する。そして、彼らの命と光は、わたしたちの内側にある、冥界の一部へとりこまれるのだ。しかし、血は消費されるまえに、その力をわたしたちの内部で浸透させる。グホルゴールさまはこの真実を学び、自分の血液から、力を引き出す方法を会得した。
 グホルゴールさまは、わたしたちの内包する飢渇がただの欲求ではなく、肉体的な力であることを知った。血の能力を使うことで、わたしたちは外部の血を吸収できる。爪と牙を利用しなくても、鉄を引き寄せる磁石のように、群衆から食料を得られるのだ。
 秀でたヴァンパイアたちは、自分の内側にある、盗んだ血を蒸気に変換して、肉体を浮遊させることができる。グホルゴールさまは、自分の肉体を変容させた冥界の力が、冷たい体に残存していることを学んだ。わたしたちの血を生者に飲ませれば、彼らの肉体はゆがむ。対象の体を一時的に変形させ、怪力と醜い容姿をもつ、グールに変えることができるのだ。

 

 大吸血鬼たちは、これらの秘技を長いあいだ守りとおしてきた。それは、冥界の要求で候補者たちがヴァンパイアとして生まれ変わり、同族が増えたときまでのことだ。災厄戦役のあいだ、最初に生まれた二人のヴァンパイアは、すべての同族を召集した。そして、グホルゴールさまはブラッドクラフトにおける上位の技法を、習得への強い意志をもつ者たちに教えた。グホルゴールさまのとったこれらの弟子たちが、四つの血族における最初で最大の勢力、ゴルゴイになったのだ。
 あるとき、グホルゴールさまは二つの目的をもち、アエアインスから去った。それらはシャドウベインを引き抜くことと、冥界そのものである、冥后に生まれ変わることである。ゴルゴイたちはグホルゴールさまの帰還を待ち、わたしたちこと闇夜霊たちは、彼女の秘技を守りつづけた。長いあいだヴァンパイアたちは隠れ、影が落ちるときを待ち望んだのだ。
 天変地異がおきたとき、憎たらしい太陽は、わたしたちを害する力をすべて失ったので、わたしたちは喜んだ。復活した死者たちが恨みをかかえながら群をなし、わたしたちは時が来たことを確信した。ついに、海中からオブリヴィオン島が隆起したのだ。グホルゴールさまが、三人の大吸血鬼たちとともに戻ってきた。冥界の意思が、野放しのまま地界で飛び回り、ヴァンパイアの人数は数千にまで増加した。
 わたしたちの種族は、大いなる運命を手にいれた。仲間に加わり、奸物ことゴルゴイになれ。そして、わたしたちとともに、光を飲みこむ影を編もう。

 

 はたして、おまえには、高貴な使命を負う資質があるだろうか。

 

用語一覧

 

《あ》:アエアインス(Aerynth)、暗黒牙(Fang of Darkness)
《う》:ヴァンパイア(Vampire)、ウィザード(Wizard)、運命(Fate
《え》:エルフ(Elf)
《お》:オブリヴィオン島(Isle of Oblivion

 

《き》:飢渇(Hunger)、虚無(Oblivion
《く》:グール(Ghoul)、グホレグル(Ghoregul)、グホルゴール(Ghorgor)
《こ》:ゴルゴイ(Gorgoi)

 

《さ》:災厄戦役(War of Scourge)
《し》:時間(Time)、シャドウベイン(Shadowbane)

 

《た》:大吸血鬼(Elder)、太陽(Sun)
《ち》:地界(World)、血の女王(Queen of Blood)
《て》:天変地異(Turning)

 

《は》:パンダルリオン(Pandarrion)
《ひ》:光(Light)
《ふ》:不滅帝国(Deathless Empire

 

《め》:冥界(Void)、冥后(Lich-Queen

 

《や》:闇(Darkness)、闇夜霊(Nightborn)