天変地異後56年
メリッサール市会館 紅玉術者団 最高の智者こと図書室長
識者ヴェスパル さま
謹んで報告いたします。
ご命令にもとづいて、わたしは、以前から当団が関心をもっていた遺跡について、二年ほど調査に努めました。いくつものルーンが刻まれている、これらの遺跡は謎めいているものでした。おおくの長い旅行をおこない、さらに、学術的あるいは風説的ともいえる、雑多な情報の正確性について議論しました。こうして、わたしたちは、任務の始めに受けていた、図書室長どのからの疑問に解答を出しました。数か月いないには、さらにおおくの成果を用意できます。
わたしじしんの足で、この知らせをもっていけないことを、残念に思います。その代わりに、天変地異で失われたと思われた、ソルウェンフェルス王国のオンディフェル塔で、わたしは手紙を書いています。どうかご容赦ください。
遺跡の謎かけについて、解答を示します。適切な状態におかれれば、遺跡の床にある溝に沿って、呪術的な波動が出入口を作ります。意外なことに、これらの門は、天変地異で地界が崩壊したあとでさえも、機能しています。わたしは、これらの遺跡を活用して、散開した諸陸片を横断する方法を、解明しました。じっさいに、一度の旅をおこないましたが、すぐに、新しい旅を試みる予定です。他の諸陸片に、居住に適した環境があるかは不明です。
ここの住人たちは、これらの遺跡をルーン門として言及しています。オンディフェル塔の智者たちと歴史学者たちは、推測しました。かれらによれば、遺跡は、冥界の外側にある諸次元と交信するため、あるいは、諸次元じたいへ移動するための装置です。しかし、証拠は乏しく、矛盾する理論はおおいです。とはいえ、わたしは、もうひとつの疑問に答えを出せます。この発見は、図書室長どのを満足させられるでしょう。
白夜時代のエルフたちにより、遺跡が建てられたというトルンボ氏の理論と、ある確実な証拠は矛盾しています。わたしは、オンディフェル塔の図書室で、ドラゴンが目ざめるまえとなる白夜時代の初期に、エルフが書いた本をみつけました。上古においてさえも、ルーン門は、エルフたちに星塔と呼ばれ、恐れられていました。わたしたちと同様に、かれらも遺跡をとてつもなく古いものと認め、当惑していたようです。いずれにせよ、エルフではない、別の古い種族が建設したと考えられます。トルンボ氏との長い討論は、図書室長どのの勝利で終わることでしょう。
なんとか、ルーン門についておおくのことを知りましたが、これらの発見が手紙に収まりきらないことを、残念に思います。古くからの友よ、あなたたちがこれを読むまえに、何人の人びとに盗み読みされるか心配です。信頼できる連絡役を育てられたら、すぐに、よりおおくの情報を送ります。わたしは、トラヴェラーという、新しい術者団を創設するつもりです。かれらはルーン門の謎を解明し、陸片どうしのあいだで渡し役になるでしょう。
ルーン門の起動は困難な仕事であり、相当な集中と複雑な儀式が要求されます。どうやら、すべてのルーン門で、数ある目的地への経路が開けるようです。諸経路のそれぞれが特定の目的地へ通じます。しかし、秘密の保持者たちにヴィナマル鍵と呼ばれる、アダマント製の奇妙で古い装置を使えば、行き先を調整できます。この装置は門じたいと同じくらい古く、どのように作られたのかは判明していません。
適切に設定されることで、ヴィナマル鍵は奇妙にはたらき、ルーン門を開放します。鍵によっては特定の門だけで機能しますが、その一方で、他の鍵は、あらゆる門において経路の行き先を切り替えます。門と目的地がもつ法則は複雑であるため、わたしは、一部の機能しか確認できていません。オフィンデル塔にあった太古の秘本には、門とかかわりのある、白銀経路の図版について触れられていました。しかし、残念ながら、その資料は散逸したようです。この古い図版がみつかるときまでは、ルーン門について、どのような記述がされていたのか、答えることはできません。
わたしはもうひとつの秘密を明らかにしました。天変地異のあとに存在が明るみとなった、有翼人こと、アラコイックスの起源と性質についての結論です。アラコイックスたちが、別の世界から、ルーン門を通り抜けて到来したということを、わたしは確信しました。
わたしは、アラコイックスの術者であるネヴォンド氏から、ヴィナマル鍵を使う儀式と、ルーン門の開きかたを学びました。かれのおかげで空間移動者団が誕生するでしょう。この知識については、責任を重んじながら、慎重に保持しなければなりません。
天変地異によって大地は分裂しましたが、それらの横断が可能になると言えます。しかし、アラコイックスたちは、ルーン門を使う旅行の危険性について、わたしに警告しました。アラコイックスたちの言葉によれば、陸地のいくつかは、混沌能か虚無能に汚染されています。しかも、ルーン門は、古い時代の災厄戦役と同様に、侵略者たちの侵入経路になりうるそうです。
さらにネヴォンド氏は、アラコイックスたちは、冒険者としてわたしたちの住む地界に来たのではない、と言いました。かれらは、名前さえ知らない、何かから避難してきたそうです。ネヴォンド氏のほのめかしによれば、ルーン門は別の力を秘めています。つまり、わたしたちの把握している門の機能は、取るに足らないもののようです。ルーン門は慎重に扱わなければなりません。トラヴェラーたちは、この強力な機能を使うために、責任を負う努力をしなければならないのです。
さらにおおくの秘密を解明していき、図書室長どのに報告する予定です。この手紙が、古くからの友でもあるあなたへ、無事に届きますように。期待していてください。すぐに、わたしは大量の驚異をともないながら、あなたのもとに帰還するでしょう。わたしの成功をお祈りください。
図書室長どのの卑しい使用人こと熱心な生徒
紅玉術者団 博士 青術者アンギリオル
用語一覧
《あ》:アラコイックス(Aracoix)、アンギリオル[青術者](Angillior the Blue)
《う》:ヴィナマル鍵(Vinammar)、ヴェスパル[識者](Vespar the Erudite)
《え》:エルフ(Elf)
《お》:オンディフェル塔(Tower of Ondiphel)
《き》:虚無能(Darkness)
《く》:空間移動者団(Order of Travelers)、
《こ》:紅玉術者団(Carnelian Order)、混沌能(Chaos)
《さ》:災厄戦役(War of the Scourge)
《し》:術者団(Order of Magecraft)、上古(Elder Days)、白銀経路(Silver Pathways)
《せ》:生徒(Apprentice)
《そ》:ソルウェンフェルス王国(Kingdom of Sorwenfells)
《ち》:地界(World)、智者(Magus)
《て》:天変地異(Turning)
《と》:トラヴェラー(Traveler)、ドラゴン(Dragon)、トルンボ(Trumbo)
《ね》:ネヴォンド(Nevond)
《は》:博士(Adeptus Major)、白夜時代(Age of Twilight)
《ほ》:星塔(Star Spire)
《め》:冥界(Void)、メリッサール市(Mellissar)
《ゆ》:有翼人(Birdman)
《る》:ルーン(Rune)、ルーン門(Runegate)
《れ》:歴史学者(Scholar)
訳者解説
残念ながら、トラヴェラーの物語におけるルーン門の設定および挿絵は、ベータ版よりも古い没設定のままです。このような理由から、物語とゲーム内のルーン門に対して、整合性をもたせるために記事を改訂しました
ゲーム内には、物語の原文にある〈Pylons(柱)〉に相当するものがありません。したがって、この語を〈遺跡〉に差し替えました。〈柱のあいだ〉に門が出現していたようですが、〈床の上の溝〉へ変更しました。
より詳しい解説と旧版の日本語記事は、こちらのリンク先で見ることができます。