そこのあなた。あなたは、エグランナンヴィロンド市における高等宮廷の、領地に侵入した。本来であれば、あなたは死ぬことになるが、現代は暗い時代だ。
あなたは殺害者のように見える。戦いに飢えているのか。もしくは栄光か。この森へ入って、まっすぐに中央へ向かいなさい。混沌の諸軍勢がこの土地を荒らして、わたしの同族たちを殺害し、森の野獣たちを下劣な姿へ変形させた。わたしたちは、この森を救おうと賢明に働き、同地を敵から隠そうとしたが、すべては無駄に終わった。
捕虜魔神が自由になったので、奈落で生まれた同神の子たちが、この土地を壊滅させるだろう。他の複数におよぶ高等宮廷が、援軍を派遣してくれたので、わたしたち長子種族は、この土地に非常線を張った。しかし、長くはもちこたえられないだろう。
わたしの同族たちがいる野営地の全部を、迂回しなさい。かれらは多くの敵と遭遇したので、侵入者たちを見境なく殺害しにくるだろう。敵の種類は、奈落の子たちと混沌の傭兵たち、ならびに、ヴォルグリム軍団こと、呪われた従僕たちにまでおよんだ。
あなたの刃および呪文は、悪魔たちと怪物たち、ならびに、蒼白悪鬼を相手にするために、節約しておきなさい。かれらは、わたしの種族にとって最も神聖なこの避難所を、荒廃させた者たちだ。下等な者たちによるものであっても、わたしたちはあらゆる情報を必要としている。早く行きなさい。
蒼白悪鬼とは誰ですか。
敵たちは一心同体だ。混沌の魔神である蒼白殺害者こと、ヴラナックサスとして。数千年まえに災厄戦争がおこった。ヴラナックサス魔神は、同戦争の最中に、アエランベレンドール森への攻撃を目的として、悪魔の軍団を率いた。
エグランナンヴィロンド市の領主たちは、悪魔たちによる猛攻撃の阻止に、苦労した。帝国における最高のアーチメイジたちは、ヴラナックサス魔神を拘束する通力術こと、強力な諸呪文を編んだ。そして、奈落におけるこの将校でさえも、破壊が不可能な罠に、同神を幽閉したのだ。
アーチメイジたちは、ヴラナックサス魔神がいる牢屋の周囲に、強大な要塞を築いた。そして、超自然的な諸活力を送信して、牢屋の維持をおこなうために、見事な尖塔をいくつも建てた。しかし、長くはもたなかった。
メイルストロム島の隆起にともなう地震で、超自然的な綱を固定していた、尖塔の一つが壊れてしまい、牢屋は破損した。ヴラナックサス魔神は自由になり、同神の側へ、かれの味方たちを呼び寄せ始めた。そして、悪魔の幹部たちは、牢屋と周囲の森、ならびに、近隣の居住地を荒廃させた。
ヴラナックサス魔神が解放されたときから、森は血に塗れてきた。この魔神は止められなければならない。早く行きなさい。自分の力を疑わないならば、混沌の陣営と戦いなさい。
ヴォルグリム軍団とは何ですか。
あの軍団は、高等種族の歴史における汚点であり、ヒトや不具神への信頼が損害になるという、教訓をもたらした。
災厄戦争の最中に、アエアインスの子たちは、混沌の軍勢へ立ち向かうために団結した。エルフとヒトの両軍団における、最高の戦士たちと賢明な将官たちは合流し、ヴォルグリム軍団を結成した。同軍団は、人の子と長子種族たちが肩を並べ、ひとつの指揮下で戦う、精鋭の軍隊だった。ヴォルグリム軍団は、多くの戦線で、混沌の陣営による侵攻を阻止し、戦争の中期に最大の名声を獲得した。
シャドウベインが奪還されて、戦局が変化したあとに、長いあいだ隠遁していた戦争神マローグは、姿を現した。同神は、全父の呼びかけに応じたのである。マローグ神はヴォルグリム軍団の指揮を執り、同軍団を連勝へ導いた。しだいに、ヴォルグリム軍団は、エルフおよびヒトにおける主人たちとの関係を、放棄していった。そして、同軍団は、死と栄光を求めて、神聖な将軍に追従したのである。
ヴォルグリム軍団の悲運は、魔界の奈落でマローグ神が全父を裏切り、同神を破滅させようとしたときに、決定した。脱出できなくなった者たちの結末を、アエアインスの人びとが知ることはなかった。決戦の直前に、マローグ神の裏切りが知れ渡ると、ヴォルグリム軍団の名誉は永遠に失われた。
しかし、混沌の陣営による最近の侵攻は、ヴォルグリム軍団についての記憶を思い出させた。なぜなら、混沌を崇拝している戦士たちおよび信徒たちが、過去の軍団と同じ装備品を身につけたうえで、現れたからである。それらは、エルフにおける最高のエンチャンターたちが、作成したものである。
そして、現在では、軍団員たちがこの森にいて、ヴラナックサス魔神の従僕たちと、一緒に働いている。わたしたちは不具神の目を引いたのだろうか。これ以上の問題には耐えられない。
会話を終える。
用語一覧
《あ》:アーチメイジ(Archmage)、アエアインス(Aerynth)、アエアインスの子(Child of Aerynth)、アエランベレンドール森(Aeran Belendor)、悪魔(Demon)
《う》:ヴォルグリム軍団(Vorgrim Legion)、ヴラナックサス(Vranaxxas)
《え》:エグランナンヴィロンド市(Eglan Nanvirond)、エルフ(Elf)、エンチャンター(Enchanter)
《こ》:高等宮廷(High Court)、高等種族(Highborn)、混沌(Chaos)
《さ》:災厄戦争(War of the Scourge)
《し》:シャドウベイン(Shadowbane)
《そ》:蒼白悪鬼(Pale Villain)、蒼白殺害者(Pale Slayer)
《ち》:長子種族(Firstborn)
《つ》:通力術(Enchantment)
《て》:帝国(Empire)
《な》:奈落(Pit)
《ひ》:悲運(Fate)、ヒト(Human / Humanity)、人の子(Son of Men)
《ふ》:不具神(Maimed God)
《ほ》:捕虜魔神(Prisoner)
《ま》:魔界(Chaos)、魔神(Dark Lord)、マラドゥア[エルフの哨兵](Maladur, Elven Sentry)、マローグ[戦争神](Malog the War God)