シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

Elyrivel, Elven Magus (エルイリヴェル[エルフの智者])

 あなたは来たようだが、遅かった。アエラベレンドール森は苦痛に見舞われている。この森は、昔の不滅帝国が誇るものであったが、現在では血に塗れており、わたしたちの輝く諸塔は、全部が取り壊された。わたしたちは、捕虜魔神の拘束が外れるとは、予想だにもしなかった。もはや手遅れかもしれない。
 捕獲罠が無効化された今、捕虜魔神は悪魔の軍団をここへ呼び寄せ、混沌の手先たちが同神に追従している。裏切り者であるヴォルグリム軍団、メイルストロム島の傭兵たち、さらに、下劣なサエトールたちのことである。わたしたちの援助を求めて、深紅同好会は影の中から現れた。しかし、わたしたちは心配だ。かれらの到着が遅すぎたかもしれないのだから。

 この危機は非常に深刻である。だから、エグランナンヴィロンド市の高等宮廷は、下等な諸種族のものさえも含む、あらゆる剣を必要としている。わたしたちへの援助を目的に、同族たちが、複数の陸地破片を横断して到着した。しかし、混沌の諸軍団は静観しないであろう。
 あなたの力では勝てないと思うが、ぜひとも森の奥へ進んでくれ。あなたが、あの悪魔へ傷を与えられれば、どのような程度であっても、わたしの同族たちは非常に助かるであろう。

アエラベレンドール森について話してください。

 アエラベレンドール森とは、エルフの高等言語における、この森の名前である。古い諸木がいくつも伸ばす大枝のあいだで、往時白夜の影が今も残存している。それは、長子種族が星ぼしの下で生まれたときに、諸神じしんから知識と技巧の両秘奥を学んだ、終わりのない薄暮のことである。
 時間の始動よりも遠い昔から、わたしたちは、この森を神聖なものと考えてきた。そして、同族たちのあいだにおける最高賢者たちが、研究と学習ならびに発明と夢想をおこなうために、常に同地へ旅行してきた。アエラベレンドール森で、わたしたちは、種族における偉大な諸業績を見てきた。そして、現在では、最悪な悪夢のいくつかが命を与えられた。

 昔は、この森の規模は何百マイルにもおよんでいたが、同地は、時の転変ならびに恒常的な戦災の影響を受けた。壮大であった同地は壊滅し、最後となる砦の周辺にまで、縮小した。不滅帝国が衰退して、国境が後退したあとでも、アエラベレンドール森は、長子種族にとっての要塞でありつづけた。災厄戦争として、混沌が猛威を振るうときまで、アエラベレンドール森は存続した。

 悪魔将校たちのあいだで最強の一人に数えられる、奈落における悪魔的な統率者がいる。同神は、二千年ほど近くまえに、大規模な軍団を引き連れて、この土地を破壊した。
 わたしたちエルフは、領地および要塞の多くが壊滅するのを見た。しかし、アエラベレンドール森の、諸聖所および諸図書館が失われるのは、帝国にとってあまりも惜しいことであった。この土地でエルフ公たちは総力を結集し、わたしたちは最初の勝利を得たのである。

 アエラベレンドール森の領主たちは、この森を二度と危険に晒さないと、固く誓った。わたしたちは、この森の諸境界に対して、忘却および誤誘導の効果がある、複数の通力術を編んだ。したがって、アエラベレンドール森は、大転換を経験しても人目につかなかった。ただし、それは、混沌の台頭までのことである。
 現在では、捕虜魔神の拘束が外れてしまい、この森は震えている。

捕虜魔神とは誰ですか。

 ヴラナックサスが捕虜魔神の下劣な名前であり、蒼白殺害者とも呼ばれる同神は、混沌の悪魔将校でもある。数千年まえの災厄戦争で、ヴラナックサス魔神は、同戦争の最中に、悪魔の孵り子たちが属する軍団を統率した。アエラベレンドール森への攻撃を目的としたためである。
 エグランナンヴィロンド市の領主たちは、悪魔たちによる猛攻撃の阻止に、苦労した。戦士たちと剣舞踊手たちが、おぞましいヴラナックサス魔神と交戦した。そのあいだに、不滅帝国が存在を認識していなかった、最高のアーチメイジたちがエグランナンヴィロンド市に集結した。そして、サエドローン女神じしんが、わたしたちへささやいた通力術こと、強力な諸呪文を編んだ。
 アルダン滅亡いらいの、最大級となる単一の超自然術を使って、わたしたちは、神捕獲罠を作成した。同装置は、魔神を超自然的な綱で捕縛して、神的な力でさえも破壊が不可能な罠の中に、同神を幽閉した。悪魔の諸軍団は、将校の敗北に落胆して、撤退した。
 アエラベレンドール森は救われ、他の悪魔将校たちはわたしたちの力を恐れた。そして、混沌の陣営は、この土地へ二度と軍団を送らなかった。

 森が隠されたあとに、わたしたちアーチメイジは、ヴラナックサス魔神がいる牢屋の周囲に、強大な要塞を築いた。そして、超自然的な諸活力を送信して、牢屋の維持をおこなうために、見事な尖塔をいくつも建てた。あなたが、森の各所で見ることのできる諸尖塔は、昔は、アエアインスの中核から、超自然的な力を取り出して利用した。このようにして、ヴラナックサス魔神の呪術的な静止状態は、維持されていたのである。
 わたしたちの神捕獲罠は非常に強力であり、大転換にさえも持ちこたえた。しかし、現在では故障している。

 メイルストロム島の隆起にともなう地震で、超自然的な諸綱を固定していた、尖塔の一つが壊れてしまい、牢屋は破損した。ヴラナックサス魔神は自由になり、同神の側へ、かれの味方たちを呼び寄せた。そのときから、かれらは、牢屋と周囲の森、ならびに、近隣の居住地を荒廃させた。
 ヴラナックサス魔神が解放されたときから、森は血に塗れてきた。そして、現在では、この邪悪な存在が、より多くの悪魔たちを引き寄せようとしている。わたしが名前を言わない、邪悪な主人が派遣してきた、ヴォルグリム軍団が動きだした。
 アーチメイジたちは、すでに、エグランナンヴィロンド市の大図書館から、蔵書を移動させ始めた。なぜなら、わたしが、同市の陥落を懸念しているからだ。重大な損失になるだろう。しかし、長子種族は、今までに何度も損失に耐えてきた。

ヴォルグリム軍団とは何ですか。

 下劣な裏切り者だ。あの軍団の名前は永遠に呪われる。あの軍団は、高等種族の歴史における汚点であり、ヒトや不具神への信頼が損害になるという、教訓をもたらした。

 災厄戦争の最中に、アエアインスの子たちは、混沌の軍勢へ立ち向かうために団結した。エルフとヒトの両軍団における、最高の戦士たちと賢明な将官たちは合流し、ヴォルグリム軍団を結成した。同軍団は、人の子と長子種族たちが肩を並べ、ひとつの指揮下で戦う、精鋭の軍隊だった。ヴォルグリム軍団は、多くの戦線で、混沌の陣営による侵攻を阻止し、戦争の中期に最大の名声を獲得した。
 シャドウベインが奪還されて、戦局が変化したあとに、長いあいだ隠遁していた戦争神マローグは、姿を現した。同神は、全父の呼びかけに応じたのである。マローグ神はヴォルグリム軍団の指揮を執り、同軍団を連勝へ導いた。しだいに、ヴォルグリム軍団は、エルフおよびヒトにおける主人たちとの関係を、放棄していった。そして、同軍団は、死と栄光を求めて、神聖な将軍に追従したのである。
 わたしたちは未来を予見していたはずだが、結末において悲運は残酷であった。

 ヴォルグリム軍団の悲運は、魔界の奈落でマローグ神が全父を裏切り、同神を破滅させようとしたときに、決定した。脱出できなくなった者たちの結末を、アエアインスの人びとが知ることはなかった。決戦の直前に、マローグ神の裏切りが知れ渡ると、ヴォルグリム軍団の名誉は永遠に失われた。物語と歌の、軍団を賛美してきた、いくつもある両方が故意に忘れられ、小人数の生き残りたちは人目を避けた。
 しかし、混沌の陣営による最近の侵攻は、ヴォルグリム軍団についての記憶を思い出させた。なぜなら、混沌を崇拝している戦士たちおよび信徒たちが、過去の軍団と同じ装備品を身につけたうえで、現れたからである。それらは、エルフにおける最高のエンチャンターたちが、作成したものである。
 モーロック逸脱神についての噂がある。同神じしんが、超自然力を宿すヴォルグリム軍団の遺物を求めて、諸遺跡と複数の古い場所を荒らしているのかもしれない。したがって、一部の人びとは懸念している。この不具神が、同軍団を改革して利用し、アエアインスにおける全部の陸地破片を、征服しようと企んでいるのかもしれないと。

 そして、現在では、軍団員たちがこの森にいて、ヴラナックサス魔神の従僕たちと、一緒に働いている。わたしたちは不具神の目を引いたのだろうか。これ以上の問題には耐えられない。エルフたちの全員が、軍団への奉仕をやめたようであり、ヒトたちだけが招集に応じたと、言っておく。ヒトらしい愚かさだ。

深紅同好会とは何ですか。

 よい質問である。ここに、往古の秘密へ光が当てられた。深紅同好会とは、エルフの強力な術者たちによる、往古の組織である。かれらは、何千年もまえに、呪術結社となる偉大な組織こと、賢者議会と争った。
 深紅術者たちは、下等な生物たち、つまり、エルフの血をもたない者たちが、呪術結社へ参加することに対して、猛烈に反対した。そして、アルダン王の治世下で、主要部が形成された直後に、同組織から離脱した。深紅同好会は、呪術的な力の追求に専念した。同組織は、冷酷さ、ならびに、目的の実現を図って、混沌と暗黒の諸力を搾取しようとした、欲求で、悪名が高い存在となった。
 じっさいに、呪術結社と深紅同好会のあいだで、数世紀にもおよんだ隠れた戦争は、列王時代の初期に一掃された。

 あるいは、わたしたちはそう考えていた。捕虜魔神が解放されて間もなく、朱と紫の二色をともなう外套を着た、 深紅同好会の術者たちが、アエラベレンドール森に来た。それは、援助を提案するためであった。エグランナンヴィロンド市の領主たちは、切実に援助を求めていたので、深紅同好会の提案を即座に受け入れた。しかし、呪術結社は不安を募らせている。
 深紅同好会は、何千年ものあいだ、呪術結社による、超自然術についての安定した革新の潮流からは、遮断されていた。誰に答えられるだろうか。深紅同好会の成員たちが、単独もしくは非道な諸力の助けを借りて、どのような諸秘奥を考案したのかを。
 モーロック逸脱神の帰還から悲涙戦争まで、数千年のあいだに複数の出来事がおきた。それらの多くが、秘密裏に活動していた深紅同好会からの、影響を受けていたのかもしれない。もしくは、同組織によって、直接に操作されていたのではないかと、わたしは考えたくなる。
 なぜ、深紅同好会がふたたび現れているのか。成員たちの目的は何なのか。疑う余地のないことがある。それは、深紅同好会の術者たちが、非常に優れたエンチャンターであるということである。なぜなら、かれらの変哲がない衣服には、強力な諸呪文が込められているからである。
 だから、わたしたちは、過去において敵だった者たちと共闘しながら、かれらへの警戒を続けている。もしも、深紅同好会の成員たちがわたしたちを裏切れば、かれらは、その代償を支払うことになる。

会話を終える。

 

用語一覧

《あ》:アーチメイジ(Archmage)、アエアインス(Aerynth)、アエアインスの子(Child of Aerynth)、アエラベレンドール森(Aeran Belendor)、悪魔(Demon)、悪魔将校(Banelord)、アルダン(Ardan)、アルダン滅亡(Doom of Ardan)、暗黒(Darkness)
《う》:ヴォルグリム軍団(Vorgrim Legion)、ヴラナックサス(Vranaxxas)
《え》:エグランナンヴィロンド市(Eglan Nanvirond)、エルイリヴェル[エルフの智者](Elyrivel, Elven Magus)、エルフ(Elf)、エルフ公(Elf-lord)、エンチャンター(Enchanter)
《お》:往時白夜(Elder Twilight)

《か》:神(God)
《け》:賢者議会(Council of the Wise)、剣舞踊手(Blade Dancer)
《こ》:高等宮廷(High Court)、高等言語(High Speech)、高等種族(Highborn)、混沌(Chaos)、混沌の台頭(Rise of Chaos)

《さ》:最高賢者(Wisest)、災厄戦争(War of the Scourge)、サエトール(Saetorr)、サエドローン(Saedron)
《し》:時間(Time)、シャドウベイン(Shadowbane)、呪術結社(Conclave)、深紅術者(Crimson Wizard)、深紅同好会(Crimson Circle)
《せ》:全父(All-Father)
《そ》:蒼白殺害者(Pale Slayer)

《た》:大転換(Turning)
《ち》:長子種族(Firstborn)
《つ》:通力術(Enchantment)

《な》:奈落(Pit)

《ひ》:悲運(Fate)、ヒト(Human / Humanity /Human)、人の子(Son of Men)、悲涙戦争(War of Tears)
《ふ》:不具神(Maimed God)、不滅帝国(Deathless Empire
《ほ》:捕虜魔神(Prisoner)

《ま》:魔界(Chaos)、マローグ[戦争神](Malog the War God)
《め》:メイルストロム島(Maelstrom)
《も》:モーロック(Morloch)

《り》:陸地破片(fragment)、領主(Lord)
《れ》:列王時代(Age of Kings