シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

ルーン知識の代償

 ルーンキャスターの伝承によると、全父はヨルドマンゴンディアを探して、北方の凍土まで長い旅をした。そして、大きなトリネコ樹のふもとで蛇の主をみつけた。蛇の主は、全父から受けた槍のかみつきを覚えていたので、父の前ではおとなしかった。
「成敗されし獣よ、われに生滅の秘密を申せ」、と全父は命じた。蛇の主はシューッという音を立てて、こう言った。「お受けいたします。ですが死のふちに立たねば、あなたさまは知識を得られないことでしょう」。しかし、全父はひるまずに答えた。「獣主よ、われは恐れぬ」。その声は雷のように響いた。「代償を払ってみせよう」
 すると、蛇の主は勢いよく飛びかかり、全父の左手にかみついた。蛇の毒が全父の体じゅうにめぐると、父は地面に倒れ、熱病におかされたようにもがき苦しんだ。三日間、全父は幻覚にうなされた。その最中、全父の眼前で火が蛇のようにうねうねと動き、いくつもの文字を表した。
 幻覚が消えたとき、全父は一人だけになっていたという。全父があたりを見ると、トリネコ樹には、幻覚で火の蛇が表したものと同じ、複数の文字が書かれていた。赤く輝いていたそれらは、全父が指を樹の皮にこすりつけ、血で書いたものである。全父がそれらを読むと、父は、事物の名前が事物を操作する仕組みと、ルーンの作成が、地界を変化させることを知った。
 ついに地界の事物を、ひとつ残らず支配した全父は、満足げに笑ったという。しかしこのとき、全父は蛇の主が言った、代償のことを忘れていた。

 

固有名詞一覧

 

《せ》:全父(All-Father)
《し》:獣主(Beast Lords)、生滅(Making and Unmaking)

 

《ち》:地界(World)
《と》:トリネコ樹(Ash Tree)

 

《へ》:蛇の主(Serpent)
《ほ》:北方(North)

 

《よ》:ヨルドマンゴンディア〔蛇神〕(Jordmangundir the Serpent)

 

《る》:ルーン(Runes)、ルーンキャスター(Rune Casters)