シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

ブラックマスクの体験記(Blackmask Narrative)

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 おれをみつけられたか。おまえは知恵がはたらくようだ。つまり、才能があるということか。覆面を被りたいのか。ならば、おれたちが何者なのかを学べ。

 

 ブラックマスクの噂は聞いたか。流言にはさまざまなものがある。おれたちは、神がみと王たちに背く、邪悪な殺人者の軍勢だといわれている。壁を通り抜けて誰でも殺し、血を金銭に換えて裕福になった、冷酷な暗殺者たちともみられている。覚えておけ。これらは意味のない話だ。

 

 僧侶たちと襟巻会の騎士たちは説教をして、おまえの頭を道徳と信仰で一杯にしようとする。だが、これらはさらに意味のない話だ。人びとは、言葉ではなく行為によって裁かれる。やつらは、説教壇からおれたちをののしるが、必要が迫れば、刃物を持つおれたちを雇う。僧侶たちと騎士たちは、おれたちの仕事が、やつらのものと同じくらい高貴であるという事実に、胸を痛めている。

 

 それはなぜなのか。考えてみろ。地界でいくつの争いがおきたのか。いくつの戦争があったのか。いくつの対立が、たったひとつの殺人で止められたのか。アルヴァエティア王国の例を挙げよう。兄弟であり、申し分のない徳を備えた二人の立派な騎士が、統治権をめぐって、十年のあいだ内戦をつづけた。どちらかを決めるために、数千人が死んだ。これが立派だといえるだろうか。
 地界の王たちは、徳を備えていたにもかかわらず、少しずつ学んでいった。後継者あらそいと夫婦げんかならびに、市場競争と神学論争でさえも、暗い夜における、刃物の一突きで終わることを。いくつもの戦争が始まるまえに終わり、人びとは被害を免れた。これを悪といえるだろうか。

 

 天地崩壊が原因で、ブラックマスクの仕事はなくなったと、考える人びとがいる。まったく愚かな連中だ。おれたちの役目は、ただの一度も殺人ではなかった。殺人は手段に過ぎない。おれたちは運命の手だ。おれたちがもつ刃は、時間という川の流れを変える。

 

 僧侶たちは、ヒトの罪が、いくつもの天界門を閉ざしたというだろう。現代の崩壊した地界において、人びとは数千回にわたって死んだとしても、生命の樹のふもとでよみがえる。死ななくなったことは、とてつもない呪いだと、僧侶たちは言っている。

 

 かれらにとってはそうなのかもしれない。だが、おれたちには違う。苦痛はまだ存在している。後悔もまだ存在している。これらはおれたちの売り物になった。おれたちが地界を変えたとき、殺人の罪はもちこされた。おれたちはつまらない暗殺者ではなくなった。おれたちは、まさに正義の声そのものといえる。

 

 大勢の人びとが、おれたちが覆面を脱いだと思っているが、おれたちは、今までよりも忙しい日びをおくっている。

 

用語一覧

 

《あ》:アルヴァエティア国(Alvaetia)
《う》:運命の手(Hand of Fate
《え》:襟巻会(Knights of the Sash)

 

《し》:時間(Time)
《せ》:正義(Justice)、生命の樹(Tree of Life)

 

《か》:神(God)

 

《ち》:地界(World)
《て》:天界門(Gate of Heaven)、天地崩壊(Sundering)

 

《ふ》:覆面(Mask)、ブラックマスク(Black Mask)