シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

サッパーの体験記(Sapper Narrative)

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 すばらしい時代がやってくる。いくつもの古い王冠が諸王国を生んだ。人びとに悲鳴をあげさせる領国戦役によって、かれらが流す大量の血は、ヴァンパイアたちさえ満腹にする。兵士には多くの仕事がある。しかし、シティが、シージスパイアと忠実な兵士たちに守られていれば、どのような軍勢でも生命の樹を破壊できない。
 もちろん、シージエンジンとシージハンマーは城壁を壊せるが、それだけでは時間がかかる。敵が城壁の上にトレブシェットを置いたら、どうなるのか。かれらはおまえに攻城兵器を操作させたり、壁を槌でたたかせるだろうか。そうはさせてくれない。
 ほんとうに勝ちたいのなら、城壁を効率よく壊す方法を知る、専門家が必要になる。おまえは敵に混乱をもたらすために、自軍の陣地がない場所で、敵の防衛を脆弱化させなければならない。そのとき、おまえには、おれのようなサッパーが必要になる。

 

 城壁はただの石にすぎない。石は固いが、骨と同様に、正しく打ちこめば壊れる。おれたちドワーフは、地界が構築されたとき以来、建築と石工術を発展させつづけてきた。おれたちより、それらに詳しい人びとはいない。おれたちの体はすみずみまで石でできている。そして、地界が始まったときから、山やまにいくつもある、心臓がうめく音を聞いてきた。
 良い槌で二十回ほどたたけば、城壁の内部に変化が表れる。衝撃はひびを作り、優れたサッパーは仕事をしながら、もろくなった部分のうたう歌を聞く。城壁に鉄の杭を差しこんだあと、荒あらしい軍勢に槌でそれをたたかせ、何がおこるのか見てみろ。城壁は木のように倒れるだろう。この方法は、陣地やベインストーンに対しても有効だ。

 

 だが、サッパーたちの技芸はそれだけではない。おれはもぐらよりも早く、城壁の下で通路を掘れるうえに、そこからサボテュアを送り出せる。
 さらに、おれは錬金術の小技をいくつか知っている。おれたちドワーフはいくつもの時代にわたって、鍛冶のときにさまざまな事物を煮て、それらの泡を見た。おれたちは希少な鉱滓と硫黄ならびに、硝石と透明なアルカリ液を混ぜて作る、強力な薬品の製作方法を学んだ。
 毒煙は、空気に毒性をもつ蒸気を混ぜる、おそろしいものだ。それを吸いこんだ者たちは呼吸ができなくなって、動くことが難しくなるし、頭がはたらかなくなる。失敗により生まれたこの薬品は、戦場でとても役立つ武器になった。栓を抜いて容器を投げつけ、敵軍がやられるのを確かめろ。

 

 おれの話に興味をもったようだな。おまえは将官ではないから、サッパーの技術を学びたいのか。おまえに十分な知恵と力があるなら、教えてやろう。あらかじめ言っておく。おれの教えを完璧に覚えれば、おまえが就職に困ることはなくなる。戦乱がつづくかぎりはな。

 

用語一覧

 

《う》:ヴァンパイア(Vampire)

 

《さ》:サッパー(Sapper)、サボテュア(Saboteur)
《し》:シージエンジン(Siege Engine)、シージハンマー(Siege Hammer)、シージスパイア(Siege Spire)、時間(Time)、シティ(City)、陣地(Bulwark)
《せ》:生命の樹(Tree)

 

《ち》:地界(World)
《と》:毒煙(Balefume)、トレブシェット(Trebuchet)、ドワーフ(Dwarf)

 

《へ》:ベインストーン(Bane Stone)

 

《り》:領国戦役(War of Realms)
《れ》:錬金術(Alchemy)