シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

バウンティハンターの体験記(Bounty Hunter Narrative)

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 じろじろ見るな。そのとおりだ。それらは、ハルランドにいる腕利きの鍛冶屋が作ったものだ。おれはこれらの手錠を使って、三十人を捕獲した。ある者は獣を狩り、別の者は宝を狩り、かれらと違う者は怪物を狩る。そして、おれは人を狩る。おれの名前か。それは友人にしか言わない。とりあえず、ここに友達はいない。

 

 平和と栄光の日びは終わった。上級王は死に、かれの王国は崩壊した。僧侶たちの言葉とは異なり、王の後継者は現れそうにない。残念ながら、上級王の法はかれとともに死んだ。
 大貴族たちと軍閥総統たちがふたたび台頭し、各自の小さな領地に執着して、周囲の全勢力を攻撃している。かつては、輝く鎧を着た騎士の諸団体が、無垢な民を保護していた。だが、今では、盗賊団と盗賊騎士団が片田舎を襲撃している。かれらは罰せられないことを知って、焼き打ちと窃盗ならびに強奪をはたらいている。毎日、誰かが家族を失い、かれらの財産が炎の中に消える。
 もちろん、現代ではほんとうに死ぬことはできないが、空腹には変わらず苦しめられる。世界は残酷であり、教会に泣きつくことはできるが、全父は何も聞いてくれない。
 高貴といわれる公爵や大公が、じっさいにおまえを守ってくれるだろうか。砦のなかに隠れている領主たちは、税の集計に忙しすぎて、ならずものたちを取り締まれないようだ。領主たちは、ならずものたちから分け前を得ているのかもしれない。人びとは、悪人が裁かれることを望んでいる。

 

 報酬を工面できるなら、人びとはおれたちを雇う。

 

 近年では、宿から宿へ、あるいは町から町へ渡り歩き、仕事か獲物を探す、人狩りは珍しくなくなった。帯に手錠を提げているやつがいたら、そいつはバウンティーハンターだ。手錠は標的の捕獲に使われるが、バウンティーハンターの象徴にもなっている。
 村にいる商人と貴族ならびに、小作人などの誰でも、こらしめたい悪党の名前を知っていれば、おれたちに声をかける。おれたちは、草原のホルワシ人をのぞけば、世界でもっとも優れた追跡者だろう。おれたちは獲物を探し出して、そいつを連れ帰る。何としてでもな。

 

 おれたちは判事ではないし、殺し屋でもない。バウンティハンターの仕事は、標的を探し出して連れ帰ることだけだ。おれを雇った村は、おれが連れてきた盗賊たちを許すことがあるし、生かしたまま皮をはいだあとに、燃やすこともある。どちらにせよ、おれには関係のないことだ。ただ単に殺してほしいやつがいるなら、アサシンを雇え。見せしめとして殺してほしいやつがいるなら、ブラックマスクを雇え。自分で殺したいなら、人狩りことバウンティハンターを雇え。
 大多数の人びとがおれたちを信用しておらず、おれたちの顔につばをはきかけ、おれたちを犬と呼ぶ。だが、これらの犬は狩りのために生まれた。おまえが知っているとおり、おれたちの姿を見たくない者たちがいる。だが、ひとたび治安が悪化すれば、かれらはおれたちを探す。

 

 たいていのばあい、おれたちの仕事によって報復は果たされる。ほんとうの秘訣は、一人だけではやらないことだ。簡単ではないが、この仕事を長くつづけてきた。おれは、石が敷かれた街道の足跡を分析できる。
 この場所からイリュドヌ人の土地にまでおよぶ、各地の宿屋すべてに、旅行者の往来を見張る仲間たちがいる。かれらは、覚えた顔と名前をすぐに思いだせる。おれとおれの仲間たちが張った網のあいだで、逃げれられる場所はほとんど存在しない。

 

 おれをどこへ連れていく気だ。おまえはハリス・トレヴェインだな。どのように名前を知ったかは重要じゃない。おまえの兄弟の名前はダルトンだ。かれは、ベレンジャーでずいぶん楽しんだようだな。十人ほど殺して、いろいろ奪ったと聞いた。
 ダルトンの名前は恨まれている。コンフェッサーと三つのギルドが、おれに仕事をもちかけた。だが、おまえは悪い状況を知っていただろう。少し待て。考えさせろ。どうやら、おまえは兄弟の居場所を知らないようだな。おそらく、それはほんとうだ。いや、違うかもしれない。終わりさえ良ければ、どちらでも構わないさ。
 仲間たちのうち、八人がかれを追っているが、何人かはかなりの腕利きだ。おれたちは、おまえにそれを知ってほしかったんだ。おれと戦うつもりか。賢くないな。おまえの兄弟に、おれたちが狩りに出たことを伝えに行け。犬のように、おれたちも追跡を止めない。なぜ、警告しに行かず、おれたちに楽をさせてくれないんだ。好きにしろ。それでも、おれたちはかれを捕まえる。
 ひとたび、浄火神殿がかれを確保したあとは…。おっと、それは考えないほうがよいな。かれがどこにいるか言え。そうすれば、浄火神殿ではなく、ギルドのひとつに引き渡してやろう。もう一度、おまえは兄弟に合えるかもしれない。答えないのか。構わないさ。おれたちは待つことができる。時間が尽きて、すべてが滅んだともいわれているが、おれとおまえには、どんな違いがあるだろうか。

 

用語一覧

 

《あ》:アサシン(Assassin
《い》:イリュドヌ人(Irydni)

 

《き》:教会(Church)、ギルド(Guild)
《く》:軍閥総統(Warlord)
《こ》:公爵(Duke)、コンフェッサー(Confessor)

 

《し》:時間(Time)、浄火神殿(Temple of the Flame)、上級王(High King)
《せ》:全父(All-Father)

 

《た》:大貴族(Duke)、大公(Prince)、ダルトン(Dalton)

 

《は》:バウンティハンター(Bounty Hunter)、ハリス・トレヴェイン(Harris Trevayne)、ハルランド(Harrando)
《へ》:ベレンジャー(Berrenger)
《ほ》:ホルワシ人(Horwathi)