シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

ルーンキャスターの体験記(Rune Caster Narrative)

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 エグラドの血を継ぐヤルディカの大氏族長こと、北方人がもった最大のルーンキャスター、エギル・エアグランディソンがいた。かれの言葉を聞き、それを覚え、心にとどめよ。

 

「書かれた言葉は決してなくならなず
石にあたえられた名前は永遠に生きる
人の名前は、ウィアドこと魂と運命と性質をもち
名前でないすべての語は、地界における諸物のためにある
ルーンを見よ。全父が、かれの子供である
北方人たちのために作り、贈った宝のことだ
語と名前は意味を表し
ここに、英知となる呪術がある
偉大な彫刻師が掘りあげた、おれたちの名前は不滅だ
おれたちは永遠に生き、ルーンはおれたちを神がみにする
だが、ルーンを作りたい者は英知について聞け
神になることさえ、低次のはたらきにすぎない」

 

 おまえは、いくつものルーンと、読むための強大な印をみつけるだろう。全父が作り、先史人たちが刻み、占者たちが彩色したものを。

 

 かれらがどのように刻んだのか、知っているか。かれらがどのように読んだのか、知っているか。かれらがどのように彩色したのか、知っているか。

 

 ルーンとは、全父がかれの子供たちに与えた、最大の贈り物であり、生滅の極意となるものである。人びとは石か盾に自分の名前を書くが、ルーンキャスターは、古い印から、自己と世界を形づくる原初的な力を引き出す。
 南方の虚弱なヒトたちがもつ、下等な呪術のすべてが、ルーンから派生したものだ。ソーサリー術師たちの呪的印象、錬金術師たちの体系、鍛冶師の銘、これらのすべてが、全父の作ったルーンの影にすぎない。弟子よ、おまえはルーンを使う媒体ならびに、詩ことレデと形成の方法について、すぐに学ぶだろう。

 

ルーン

 

 地界に夜明けが訪れたとき、全父により、六回にわたって六個のルーンが刻まれ、北方人はこんにちでもそれらを書く。たくさんあるルーンのうち、五つが力聖刻であり、それらは、成形者に強大な呪術と力をもたらす。力をあたえてくれる、残りの一つと三十のルーンにおけるレデは、最大級のルーンキャスターたちが得る秘奥だ。しかし、そのうちのいくつかは失われてしまった。
 まずは、五つある力聖刻を見よ。

 

 ニュス(n)は、古い言葉で必要あるいは不可欠を表しており、このルーンは、窮状におちいったた英雄に欠かせない、忍耐を象徴している。対峙した敵が強大なときは、このルーンが助けになる。正しく彫り、正しく詠唱すれば、このルーンは成形者を癒し、戦うための活力を回復させるだろう。

 

 マン(m)は、全父がひいきする子供たちの名前であり、このルーンは一人のヒトに言及している。その人物とは、呪術の実践者などの肩書をもつ、世界における最初のヒトこと全父である。この印をとおして、成形者は、ヒトがもつすべての意志と強さを使う。全父は蛇の主がもたらした狂気に耐えたが、それと同様に、おまえがもつ心は、鉄の意志で悪の影響に抵抗するだろう。

 

 ウル(u)は、野生の牛ことオーロックスの古い名称だ。祖先たちは、はるか昔に、この牛を食肉および労働力として役だてるために、家畜化した。飼い慣らされる過程で、オーロックスは抵抗の意志を失ったが、筋力は維持したままだ。この印を正しく作れば、おまえは牛の筋力を獲得して、怪力になるだろう。

 

 ベオーク(b)は、カバノキがもつほんとうの名前だ。この木は、穏やかな気候で世界を刷新する、春において急速に成長する。このルーンの成形は、作り手に春の癒しをもたらす。冬のあいだでもっとも厳しい冷気だけでなく、最南端に位置する土地の太陽からでさえも、おまえは身を守れるだろう。

 

 エオロー(z)は強力なルーンであるため、熟練者たちだけが利用できる。全父に仕えた偉大な戦士、トレイティーン・トゥルーソードの剣を見よ。鉄は呪術を無効化する。トゥルーソードがもつ鉄の剣が、かれを邪悪な呪文から守ったように、この印は、邪悪な呪術の影響を防ぐ。したがって、呪術師たちの悪行に対して、証拠を用意できるようになる。

 

 ここに、ルーンの実践についての秘密がある。実践者が媒体にルーンを刻んだときに、初めて生成がおきる。生成が終わると、消滅のときまで、力は氷のように待機する。実践者は、ルーンの力を解放するために、媒体を破壊しなければならない。骨の媒体は火の中で壊れるが、粘土か石を素材とするものは、槌で砕くべきだ。
 若き成形者よ、気をつけるべきことがある。成形に使う道具はいくつもあるが、槌はつねに二本を持ち運べ。生成のために、実践者は槌でたがねを押しこむが、消滅させるときに、同じ槌で媒体を壊せば、力は発揮されないからだ。そのうえ、災難さえも呼びこむだろう。

 

 南方に住む劣ったヒトたちだけが、印を紙か羊皮紙、もしくは上質皮紙に書くことを覚えておけ。それらの上にルーンが記されても、ただの手紙にしかならない。同じように、白亜か墨でルーンを書いても、生滅の力を保持できると信じられているが、それはまちがいだ。大地の諸物にルーンを刻め。石と粘土、骨と木、そして、ルーンキャスターじしんの体に。
 印を書くだけでは足りない。ルーンは、媒体じたいが削られるか切断されか、もしくは、磨かれるか整えられたものでなければならない。印の呪術に命令をあたえ、世界の本質を変化させるには、おまえの意志で、媒体の本質を変化させなければならない。

 

 ルーンの刻み方とレデの詠唱は、こつを覚えればすぐに習得できるが、熟練の成形者たちは、多くの高度な秘密を知っている。ルーンキャスターよ、よく学び、ルーンの効果をより強くはたらかせろ。
 鉄は呪術を無効化するから、ルーンを刻むときには、けっして鉄の道具を使わず、鉄は緊急時にだけ利用しろ。ふだんは、骨か木を素材とする、よく研がれた突きぎりで刻み、鉄のたがねは固い石にだけ用いろ。
 最初の夜明が訪れるまえの夜に、全父はヴェルトヴュアダングサガを刻みあげた。それらのルーンは、太陽のないときに、月と星あかりの下で彫られたため、より強大な効果を発揮した。蛇の主の英知は、全父の左手の傷から流れこんだ。だから、ルーンキャスターたちは、ルーンを正しく刻み、より強くはたらかせるために、左手だけを使うことを覚えるのだ。

 

 おまえが全父と同じように、ルーンをはたらかせるとき、世界の運命は成形されてくつがえされる。これは高貴な召命であると同時に、重い責務でもある。ルーンの力をうまく利用しろ。そして、心にとどめておけ。おまえの運命だけでなく、すべての人間とすべての獣にも課せられた運命は、大昔のヴェルトヴュアダングサガに刻まれたものだ。それは決して変わることがない。
 賢くなることで強くなり、何も恐れないようになる。

 

 

用語一覧

 

《う》:ウィアド(wyrd)、ヴェルトヴュアダングサガ(Weltwyrdangssaga)、ウル(Ur)、運命(Fate
《え》:英雄(Hero)、エオロー(Eolh)、エグラド(Eglador)、エギル・エアグランディソン(Egil Erglandisson)

 

《か》:神(God)

 

《し》:呪的印象(Sigil)、消滅(Unmaking)
《せ》:生成(Making)、生滅(Making and Unmaking)、先史人(Old One)、占者(Soothsayer)、全父(All-Father)
《そ》:ソーサリー術師(Sorcerer)

 

《た》:大氏族長(Thane)、太陽(Sun)
《ち》:地界(World)
《ち》:月(Moon)
《と》:トレイティーン・トゥルーソード(Treythind Truesword)

 

《な》:南方(South)
《に》:ニュス(Nyth)

 

《ひ》:火(Fire)
《へ》:蛇の主(Serpent)、ベオーク(Beorc)
《ほ》:北方人(Northman)

 

《ま》:マン(Man)

 

《や》:ヤルディカ(Hjaldikar)

 

《り》:力聖刻(Runes of Power)
《れ》:レデ(rede)、錬金術師(Alchemist)
《る》:ルーン(Rune)、ルーンキャスター(Rune Caster)