シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

シャドウベイン世界の女性

質問者:歴史と物語のなかに、女性の登場があるのを見たわ。重要な役割をもつ女性たちがいたけれど、伝説的といえる役割は与えられていないようね。シャドウベイン世界には、ジャンヌ・ダルク(※1)やエリザベス女王(※2)がいない。シャドウベイン世界は現実よりも家父長制(※3)が強いのかしら。でも、フューリーはジーナ(※4)のような英雄を想起させるわ。

 

 今のところ、世界での重要な出来事において、女性が意味のある役割をもっているようには見えないわ。

 

作者(メリディアン氏):これはとても興味ぶかい質問だ。ふたつの答えがある。第一に、ぼくがシャドウベインの物語として書いた小説には、大暴れする女性がたくさんは登場しない。
 たとえば指輪物語(※5)では、有名な女性として五人の登場人物がいる。そのうちの一人は、ウォー・オブ・ザ・リング(※6)で男性と同じ格好をしていて、重要な役割を担っている。アーサー王物語(※7)の女性たちは、勇敢で栄誉のある騎士たちにとっての、愛されたり救出される対象だ。あるいは、かの女たちは人びとをだましたり、破滅させたりする邪悪な魔女だ。
 ほとんどの女性が、シャドウベイン世界における女人族と神学について、古典的なものだと指摘したことは偶然ではない。おそらく、ぼくは古典に忠実だったと思うし、ぼくの創作した神話の歴史には、現実世界の神話を強く反映させた。

 

 ぼくは、作中における女性たちの描写に慎重だった。苦悩により金切り声をあげる少女は、すぐに年老いてしまう。このような理由から、ぼくたちには、魔女の形態を採用する傾向があった。歴史書を執筆した人びとにより、しばしば悪魔的とみなされた、権力をもつ女性たちのことだ。
 つまり、のちに冥后になったエルフのイスリアナ。さらに、精神分裂病の月女神サエドローンならびに、イレケイの母であり、支離滅裂な太陽女神ハリークルイストゥ。シャドウベイン世界の女性たちが邪悪だと指摘されうる理由は、かの女たちが原因だろう。

 

 また、きみがアエアインスの歴史全体における、おおざっぱな概略だけしか見ていないことを、気にとめておいてくれ。エテュリアー国と十王国における、全君主の一覧は退屈なものだと思う。それは、ぼくたちがまだ発表していない物語のなかに、有名な女性が一人もいないということではない。

 

 どころで、カンブリュワンには王妃がいたが、かの女は天変地異がおきたあとも生きている。争闘時代において、この王妃との結婚は、権力を得るための特に期待できる方法だ。王妃の物語はまだ語られていないが、かの女はきみの望む、アリエノール・ダキテーヌ(※8)とエリザベス女王に類似している。
 ぼくの思いどおりにやれるなら、王妃は、主要人物イベント(※9)で強大な力をもつ。もしもきみが、大王の完全な後継者になれたらのことだが。

 

 社会は、さらに強大な力といえる。全父とかれの仲間たちは、父権的な制度をもつ、父権的な世界と父権的な諸種族を作った。しかし、最初の女人族であるパイドラーなどによって、型枠はゆがんだ。そして天変地異がおこり、諸勢力における、生存していくための難易度は均一化された。イレケイでさえも例外ではなかった。イレケイの歴史における、重要な人物の一人は女性であり、おそらくかの女は救世主ともいえる。

 

 すべてが煮つまったとき、ぼくには男性の人物を書く傾向がある。ぼくの妻が、すぐさまきみに伝えるから信じてくれ。けっきょく、これはぼくがもつ思考の傾向といえる。もしも不愉快に感じた人がいるなら、謝罪する。ぼくに言ってくれるなら、改善していくつもりだ。

 

 ぼくに十分な時間ができたら、女人族は、かの女たちの物語を得るだろう。そして、きみは女性の英雄たちを見る。

 

納得したかな。

 

 心配しないでくれ。ぼくは背景物語を劣化させないし、展開と構想における健全性をもっとも重視する、政治的妥当性(※10)の泥沼に入るつもりもない。しかし、傑出した女性たちが登場するための、空き場所があることは忘れないようにするよ。

 

 とはいえ、シャドウベイン世界の歴史はただの歴史にすぎない。きみたちは未来を書ける。エルフのジャンヌ・ダルクが、不滅帝国を復興させるかもしれないね。やるとよい。

 

 質問者さん、気にとめておいてくれ。ぼくは指輪物語の話をしていただけだった。シルマリルの物語(※11)にたくさんの女性が出てきたことを、ぼくは認めよう。

 

 ホビット(※12)って何だ。それはどこにいるんだ。かれらの名前を挙げられるかい。雌のツグミ(※13)かな。どうやら、ドワーフ(※14)の一人ではないようだ。

 

 さらに、ぼくが有名な女性たちの名前を挙げるから、気にとめておいてくれ。彼女たちのことだ。ガラドリエル(※15)、アルウェン(※16)、エオウィン(※17)、ローズ(※18)、ゴールドベリ(※19)。もちろん、療病院(※20)には看護婦たちがいたが、名前は明らかになっていないと思う。これで六人だ。おっと。重要な人物として、ロベリア・サックビル=バギンズ(※21)もいたね。これで七人だ。
 質問者さん、きみの言葉を認めよう。ぼくは、九人の名前を言えるべきだった。

 

 シャドウベインの物語における、男性が登場する場面の回数を比較してくれ。トールキン(※22)がもった一九世紀の伝統的な思案に、どれくらいもとづいているか、きみは知るだろう。

 

 じっさいには指輪物語に登場しないが、ルーシエン(※23)とエルベレス(※24)、さらにエント女(※25)たちもいたね。

 

 そういえば、シェロブ(※26)もいた。かの女は人間ではないけれど。

 

固有名詞一覧

 

《あ》:アエアインス(Aerynth)
《い》:イスリアナ(Ithriana)、イレケイ(Irekei)
《え》:エテュリアー国(Ethyria)、エルフ(Elves)

 

《か》:カンブリュワン(Cambruin)

 

《さ》:サエドローン〔月女神〕(Saedron the Moon Goddess)
《し》:シャドウベイン(SB)、十王国(Ten Kingdoms)、女人族(Amazons)
《せ》:全父(All-Father)
《そ》:争闘時代(Age of Strife)

 

《た》:大王(High King)
《て》:天変地異(Turning)

 

《は》:パイドラー(Phaedra)、ハリークルイストゥ〔太陽女神〕(Khalikryst the Sun Goddess)
《ふ》:不滅帝国(Deathless Empire)、フューリー(Furies)

 

《め》:冥后(Lich Queen


訳注

 

※1:15世紀のフランス王国の軍人。フランスの国民的ヒロインで、カトリック教会における聖人でもある。
※2:イングランドアイルランドの女王(在位:1558年 - 1603年)。テューダー朝第5代にして最後の君主。20世紀中盤の歴史家たちはエリザベスの治世を進歩の黄金時代と解釈した
※3:家長権(家族と家族員に対する統率権)が男性たる家父長に集中している家族の形態。
※4:映画プロデューサーのロバート・タパートによる、1995年から2001年に放送されたアメリカ合衆国のテレビドラマシリーズ、Xena: Warrior Princessの主人公。
※5:イギリスのJ・R・R・トールキンによる長編小説。最初の版は1954年から1955年にかけて3巻本として出版された。
※6:アメリカ合衆国のシミュレーションズ・パブリケイションズ社が制作と発売をおこなった、指輪物語(※5)を原作とするボードゲーム
※7:中世後期に完成し、トマス・マロリーがまとめたアーサー王を中心とする騎士道物語群。
※8:アキテーヌ公ギヨーム10世の娘でアキテーヌ女公。はじめフランス王ルイ7世の王妃、後にイングランド王ヘンリー2世の王妃。吟遊詩人を庇護して多くの文芸作品を誕生させ、洗練された宮廷文化をフランス、イングランドに広めた存在として知られる。(生没年:1122年 - 1204年4月1日)
※9:シャドウベインで不定期におこなわれた、物語をもつイベント。
※10:主にポリティカル・コレクトネスと表記される。略称はポリコレ。1980年代に多民族国家アメリカ合衆国で始まった、「用語における差別・偏見を取り除くために、政治的な観点から見て正しい用語を使う」という意味で使われる言い回し。
※11:トールキンの神話物語集。トールキンの死後、息子クリストファー・トールキンによって彼の遺稿がまとめられ、編集を加えられた上で1977年に出版された。
※12:指輪物語に登場する種族。
※13:指輪物語に登場する、魔力をもつ鳥。
※14:指輪物語に登場する種族。
※15:指輪物語に登場する人物。
※16:指輪物語に登場する人物。
※17:指輪物語に登場する人物。
※18:指輪物語に登場する人物。
※19:指輪物語に登場する施設。
※20:指輪物語に登場する人物。
※21:指輪物語に登場する人物。
※22:指輪物語に登場する人物。
※23:指輪物語に登場する人物。
※24:指輪物語に登場する人物。
※25:指輪物語に登場する種族。
※26:指輪物語に登場する人物。


参考資料

 

ウィキペディア(日本語版)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8
ウィキペディア(英語版)
https://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page
・中つ国Wiki
http://arda.saloon.jp/