《両世界で重複する名詞を区別》
たとえば、ドルイド(Druid)など、現実世界とシャドウベイン世界の両者で用いられ、重複する名詞には、語の先頭に現実世界を意味するRW(Real World)もしくは、SB(Shadowbane)をつけることで、区別を明確にします。例:『RWドルイド』と『SBドルイド』。
《非実在人物と実在人物を敬称で区別》
本稿では、シャドウベイン世界および他の文学作品における非実在人物だけでなく、参考文献の著者および歴史上の偉人などの、現実世界の実在人物もふくむ両者の人名が、数多く表記されます。したがって、筆者は、両者の混同を避けて、読者の理解を助けるために、また、筆者が無学かつ卑小であるために、存命と非存命を問わず、実在人物の表記には敬称を用います。
《人名および地名の由来を調査》
当然ながら、大部分の日本人は中国人の名前をもっていませんし、その逆も同じです。つまり、特定の人名は、それをもつ人物の出自を反映するばあいがあります。シャドウベイン世界には、ヨーロッパ各地の人名やそれを改変したものをはじめ、さまざまな人名が登場します。他の文学作品では、登場人物たちの人名が出自を反映しないばあいがあります。しかし、後述する多くの事例から、筆者は、シャドウベイン世界における人名と出自の関係は、現実世界のものを疑似的に反映していると結論づけたため、人名の由来についても調べていきます。
地名においても、現実世界のものとシャドウベイン世界のものは、関係があります。
《派生先の特徴から派生元の特徴を推測》
SBエルフ種族から派生したイレケイ種族は、体に刺青を入れないことと、男女平等な社会をもっていることが、作者により明言されています。つまり、このことからイレケイ種族とは反対に、派生元であるSBエルフ種族が、自分の体に刺青を入れることと、男女平等でない社会をもっていることが、推測できます。このような推測は、必ずしも作者の意図を解明できるわけではありませんが、有力な仮説として取りあげていくことにします。
《語と意味を分析》
現実世界およびシャドウベイン世界に登場する、『騎士(Knight)』という名詞は、ヨーロッパおよび、シャドウベイン世界での、ヨーロッパ的な文化をもつ土地において、階級および称号を意味します。当然ながら、現実世界とシャドウベイン世界には異なる背景があり、そのうえで、両世界には『騎士』になった人びとが登場します。そして、両世界の騎士たちがもつ文化は大きくは異ならないため、読者たちは、両者を大きく異なるものと認識する必要がありません。
しかし、シャドウベイン世界における名詞の多くが、現実世界におけるものと同一の意味をともなうわけではありません。シャドウベイン世界における、ヨーロッパ的な領域の主流派だけでなく、とりわけ、同領域の非主流派および非ヨーロッパ的な領域においては、非常に多くの語が、現実世界のものとは異なる意味をもっています。したがって、本稿では、語と意味こと研究の対象となる両者を、注意ぶかく分析していきます。
例として、SBサンダンサー(Sundancer)および同資格の関連語を挙げます。『太陽の舞踏家(Sun Dancer)』を意味するサンダンサーとは、シャドウベイン世界においては、乾燥帯に住むイレケイ種族における、特殊な戦士たちです。SBサンダンサーは、武器ではなく素手を用いる、一般的ではない武術を実践します。これに対し、サンダンサ―から接尾辞rを除いたサンダンス(Sun Dance)は、アメリカおよびカナダの先住民族における儀礼の名前であり、決して武術ではありません。
また、SBサンダンサーは、ダルヴィーシュ(Darvish)という別名をもっています。RWダルヴィーシュは、錬金術や占星術などの知識をもち、神との合一を志すイスラム教神秘主義の修道僧ですが、SBサンダンサーとは異なり、戦士ではありません。SBサンダンサーも神との合一を志しますが、さらに、かれらは、太陽から受け取った神的な炎を体内に宿しており、修行の結果として、手から炎を生じさて拳にまとわせる、独特な超能力を獲得します。
つまり、語が本来の意味を反映していないために、サンダンサーおよびダルヴィーシュという、両名詞の現実世界における由来についての知識は、SBサンダンサーの理解にはまったく役だちません。これが、『騎士』と『サンダンサー』の違いといえるでしょう。
本節では詳述しませんが、SBサンダンサーにおける素手で戦う武術は、インドのカラリパヤットにおける奥義が、体から火を生じさせる神秘的な技術は、インドのヨーガが、本当の由来であると筆者は推測します。ダルヴィーシュではなく、ヨーガ(Yoga)の実践者を意味するヨーギン(Yogin)のほうが、SBサンダンサーの別名としては適切であるといえます。つまり、SBサンダンサーの実態は、北米的でもなくイスラム教的でもなく、完全に仏教的およびヒンドゥー教的なものです。
《考察の区分》
六つの区分を定めて、種族と生業および資格と組織を考察していきます。
1.外見
2.技能
3.語
4.流儀
5.社会
6.思想