シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

ブレイドウィーヴァーの体験記(Blade Weaver Narrative)

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 ブレイドウィーヴァーには長い歴史があり、三つの時代をさかのぼることで、ようやくその起源をかいま見ることができる。白夜時代において地界はまだ若く、誰も死という概念を知らなかった。太陽がなく、時間さえもない時代に、剣を振るうエルフの達人たちは、永遠の白夜に浮かぶ、星ぼしの白い炎に見えたという。
 剣舞は恐ろしい戦闘技術として、今日では有名だが、本来は芸能のひとつに数えられていた。最初のブレイドウィーヴァーたちがもつ技術は、非常に高度であり、現代における私たちのものとは、一線を画す。風と水でできた心をもち、訓練にはげめば、少しずつこの技能が身につくだろう。
 忍耐強い者だけが、史上最高の戦士となる。彼らは素晴らしい伝統を守り、雷のように敵を打つ。

 

 ヒトの剣術はくだらん。ジイエンオータイとやらは、大した技術をもっていない。彼ら人の子が使う技は、私たちの父祖による武術の、影にすぎず、真似事以下といえる。
 夢のようにおぼろげで、弱よわしいブレイドマスターどもは、剣術の達人を自称している。しかし妖人王たちは、ヒトという種族が作られる前から、剣の技を磨いてきたのだ。ヒトには想像もおよぶまい。

 

 ヒトは星を見上げ、そこに知識と彼らの師匠たちを求めるが、本来の開祖たちがどこにいたか、分かっていない。ヒトの言葉によると、剣聖ドラエセンが剣を振るい、天空の星ぼしを切ったことで、星座が生まれたそうだ。そして彼らは、私たちの舞踏をけなす。
 面白いおとぎ話だが、それはまったくの作り話である。私たちは、永遠白夜と星ぼしが空を覆う、時間なき悠久の時代に生まれた。すべての星ぼしは私たちのものだったが、ヒトは盗みを企て、私たちの技芸と領地は不完全となる。
 私たちは原初の星ぼしがきらめいた、美しい夜を覚えている。そして、それらが夜明けとともに消えた光景は、目に焼きついた。ドラゴンは、私たちからすべてを奪った。この怪物が出現したとき、それを目撃したのは、私たちだけである。
 かつて最高のブレイドウィーヴァーたちは、ドラゴンに対して死の舞を踊ったが、獣のはいた炎により、ほぼ全員が無残な死をとげた。ただ一人生き残った者の名は、タラマール・ソランサノールといい、彼は最大の達人である。
 ヘンナンガルロラヒでの戦いから、生還したタラマールは、ドラゴンにかなわないことを悟った。そして、自分がもつ技能を、後世に伝えていくことに決める。ヒトは彼の名前を知らないが、私たちは、長いあいだ彼のことをたたえてきた。

 

 ドラエセン・トゥルーソードについても、よく知っている。ジイエンオータイたちは彼のことを、全父の息子だと考えており、それは正しい。では、彼の母親は誰だったのか。ヒトの記録には何も伝えられていない。
 ドラゴンを追い払った後の全父は、蛋白石宮廷に滞在し、傷が癒えるのを待った。彼を懸命に看護したのは、私たち端麗人のなかで、最も美しい女性である。ドラエセンの母親は、シレステレエ・アルルボラナール以外に考えられない。彼女は永遠に星ぼしがきらめく時代の、第一女王がもった娘である。不可解だが、ヒトは、ドラエセンの耳がとがっていたのを忘れたのだ。
 全父が回復し、出発した後も、ドラエセン・トゥルーサンは宮廷にとどまった。そしてタラマール・ソランサノールに師事し、剣術を習うのである。タラマールの愛刀は、火の蛇を意味する、クラリゼドリルという名の剣だったそうだ。
 聞くところによると、ブレイドマスターが、ドラエセンの生い立ちを紹介するとき、彼らは猪と牙の話をするそうだ。愉快な話だが、真実ではない。本当のことを知りたいか。

 

 では教えよう。その昔、私たちの奴隷だったヒトのなかには、栄誉を与えられ、小間使いになる者がいた。ある日彼らの一人が、剣舞会場に潜んでいたという。
 小間使いは、ドラエセンとタラマールのかかり稽古を、盗み見たのだが、それに飽き足らず、剣をくすねた。このみじめな男は毎日、人気のない部屋で剣の練習をして、最初のジイエンオータイとなる。
 もちろん小間使いは見つかり、女王の裁定によって左手を切断された。小間使いは死につつあったが、ドラエセンは彼に情けをかける。ドラエセンは小間使いを手当てし、自分の剣を与えただけでなく、彼を逃がしたのだ。このとき以来、私たちは全父の嫡子をさげすみ、交雑児を信用しなくなった。
 これこそがブレイドマスターのあいだで、ドラエセンが崇拝される理由である。彼らが一本の剣だけをもつ根拠も、ここに見出せるだろう。起源となるブレイドウィーヴァーが、二本の剣を振るうのだから、彼らは不完全といえる。
 彼らの武芸は、私たちが行う舞踏の、模倣にすぎない。ヒトのくだらない神話には、このような事実が隠されているのだ。よく覚えておきなさい。

 

 剣舞を習得し、ブレイドウィーヴァーになるがよい。そしてヒトに、偽物でない、本物の剣術を見せてやるのだ。

 

用語一覧

 

《え》:永遠白夜(Endless Twilight)、エルフ(Elf)

 

《か》:風(Wind)
《く》:クラリゼドリル(Clalidhedril)
《け》:剣舞(Dance of Battle)、剣舞会場(Yard of the Dance)
《こ》:交雑児(Half-Breed)

 

《し》:ジイエンオータイ(Jen'e'tai)、時間(Time)、シレステレエ・アルルボラナール(Silesteree Allvolanar)
《せ》:全父(All-Father)、全父の嫡子(True Son)

 

《た》:第一女王(First Queen)、太陽(Sun)、タラマール・ソランサノール(Talamar Solanthanor)、蛋白石宮廷(Opal Court)、端麗人(Fair Folk)
《ち》:地界(World)
《と》:ドラエセン[剣聖](Draethen the Trueson)、ドラゴン(Dragon)

 

《は》:白夜時代(Age of Twilight)
《ひ》:火(Fire)、ヒト(Human)、人の子(Son of Men)
《へ》:ヘンナンガルロラヒ(Hennan Gallorach)
《ふ》:ブレイドウィーヴァー(Blade Weaver)、 ブレイドマスター(Blade Master

 

《み》:水(Warter)

 

《よ》:妖人王(Elf Lord)