シャドウベインの背景世界

MMORPG、Shadowbaneがもつ舞台設定の翻訳

エンチャンターの体験記(Enchanter Narrative)

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 呪術知識、あるいは敬神から生まれた呪術は、地界の始まり以来、賢者たちによって研究されてきた。時間の始動よりも古い、白夜時代において、エルフたちは太古技芸を開発し、その実践をつづけてきた。これらのウィザードリー術とチャネリング術などは、真実技芸もしくは不朽技芸ともよばれている。
 古い記録により、失われた白夜王国のエルフたちが、文明の理想形を実現していたことが知られている。こんにちのわたしたちが知る呪術は、かれらの振るった強大な力の影にすぎない。残念ながら、上古における大量の秘術が、ドラゴンの目覚めによって、地界の平安ごと跡形もなく一掃された。賢者ザリスタンをのぞけば、強大な力をもっていた、太古の知識人たちに匹敵する者はいない。

 

 昼中時代の到来により、地界には新しい形態がもたらされ、人の子は勢力を拡大した。世界の変化と同時に呪術も変わり、呪術的な力を求める者たちは、下等呪芸ないしは人呪芸とよばれる、新呪芸を考案した。その開発を率先しておこなったのは、ヒトの術者たちであった。すべての新呪芸において、もっとも早く発見されたのが付与術であり、賢者たちの研究に大きな影響をあたえた。

 

 昼中時代における二世紀の初期に、不滅帝国のエルフたちは、砕け散らばっていたルーン石を発見した。これは、ジャイアントたちが彫りあげたサガの破片であり、地界の運命が記されていた。
 おおくの実験を経たあと、エルフの術者たちは、石の中から力を引き出せるようになった。この成果に満足しなかった術者たちは、新しいルーン石の作成を試みた。かれらの挑戦は失敗に終わり、悲惨な目にあったといわれている。けっきょく、術者協定によって実験はとり止められ、ルーン石の研究じたいが禁じられた。この慣習は、ヒトが台頭するときまでつづいた。

 

 ヒトがもった、最大といえる術者の一人であり、ザリスタンの師匠でもあった人物、若古老アルメウスの功績がある。かれは、ブレシルド王国の初代国王、パオルスの玉座を奪ったあと、付与術の極意を発見した。
 ウィザードたちは不滅帝国の呪術書を調べ、エルフたちが失敗した、ルーン石の作成についての研究を学んだ。アルメウスでさえ、新しいルーン石を作ることはできなかった。それは、石が、じっさいに全父の手がけた作品であり、下等な存在には統御不能な力をもつためである。アルメウスの試みは成功しなかったが、世界の呪術に斬新な変化をもたらした。
 ルーン石を作るために、石の理想的な媒体を探したとき、アルメウスは発見した。かれは、特定の事物と材料が、呪力にもとづく、固有の〈潜在的な振動〉を保持していることを、明らかにしたのである。その後、潜在力とよばれ、呪力を少しずつ蓄える、交差した気場線が事物にふくまれていることも、アルメウスはつきとめた。
 アルメウスは、事物に蓄えられた潜在力を得る方法だけでなく、貴石と貴金属に、潜在力を封じこめる方法も開発した。こうして、ウィザードやチャネラーの愛用するような、指輪と御守が生まれたのである。

 

 アルメウスが、ルーン石と創造布の構造にもとづき、最初の呪的記号を発明したときから、二世紀がたった。適切に呪力付与をおこなうことで、呪的記号には、呪文を恒久的に縛る網として、呪力を封じる機能をもたせられる。ひとたび、事物に呪的記号が記されれば、事物は呪文射出を受けいれる器になる。呪文を事物に投射することにより、その力は呪的記号に蓄積され、ひとつの言葉で力は解放される。道具を制作し、それに呪力付与をおこなうことは、付与術の真髄といえる。
 アルメウスは数世紀のあいだ研究をつづけ、その後、数年のうちに、エンチャンターたちは技芸をさらに高めた。劣ったエンチャンターたちは、短杖と長杖ならびに御守を制作して、呪力付与をおこなうが、一部の呪文しか利用できない。その一方で、熟練者たちは、大量にある呪文のなかから好きなものを選び、道具に呪文を蓄積させる。さらに、かれらは、複数の呪文がもつ効果を混合させたうえで、恒久的に保持することも可能である。
 技術ならびに呪的記号の発達は、ヒーラーとプリーストの呪文も、事物への呪力付与に適応させた。こうして、付与術は普遍的な技芸になり、呪術の実践者たち全員に尊重されたのである。

 

 エンチャンターたちの技芸は難しい。封印には数千の種類があり、それぞれが異なる効果をもつため、印象と素材の性質について、把握しておく必要があるからである。力を与える道具には、貴重で高価な素材ならびに、熟練した鍛冶職人の技術が不可欠である。十分な技術と忍耐づよさがあれば、報酬はすばらしいものとなる。保守的な術者たちは、付与術を下等呪芸とみなしてあざ笑い、無視する。しかし、この呪術がもつ可能性と、じっさいに地界にあたえた影響について、否定できる者は少ない。

 

用語一覧

 

《あ》:アルメウス[若古老](Almeus the Young)
《う》:ウィザード(Wizard)、ウィザードリー術(Wizardry)、運命(Destiny)
《え》:エルフ(Elf)、エンチャンター(Enchanter)
《お》:御守(Talisman)

 

《か》:下等呪芸(Lesser Art)
《き》:技芸(Art)、気場線(Ley Line)
《け》:敬神(Faith)、賢者(Wise)

 

《さ》:サガ(Saga)、ザリスタン[賢者](Zaristan the Wise)
《し》:時間(Time)、ジャイアント(Giant)、呪術知識(Arcane Lore)、術者協定(Concordat of Magi)、呪的記号(Sigil)、上古(Elder Days)、真実技芸(True Art)、新呪芸(New Art)
《せ》:潜在力(Mana)、全父(All-Father)
《そ》:創造布(Tapestry of Creation)

 

《た》:太古技芸(Ancient Art)
《ち》:地界(World)、チャネラー(Channeler)、チャネリング術(Channeling)
《と》:ドラゴン(Dragon)

 

《は》:パオルス(Paolus)、白夜王国(Twilight Kingdom)、白夜時代(Age of Twilight)
《ひ》:ヒーラー(Healer)、ヒト(Human)、人呪芸(Art of Man)、人の子(Son of Men)、昼中時代(Age of Days)
《ふ》:不朽技芸(Eternal Art)、不滅帝国(Deathless Empire)、付与術(Enchanting)、プリースト(Priest)、ブレシルド王国(Brethild)

 

《ゆ》:指輪(Ring)

 

《る》:ルーン石(Runestone)