誰だ。死を笑う愚か者がまた現れたのか。おれの同胞たちが、おまえの種族の血液を砂地へ滴らせていた時代が、昔にあった。おまえたちが、影をいくつもの砂丘へ落とすという、犯罪を犯したからだ。残念ながら、おれのヴィーラクトゥは、もはやこの砂地を支配していない。おれはおまえから離れて、おまえを、新しい支配者たちの慈悲に委ねよう。おまえが、死ぬ前に、あの支配者たちの何人かを殺害してくれれば、おれはほんとうに嬉しくなる。
新しい支配者たちは誰ですか。
奴らめ、呪われろ。新しい支配者たちの血が、深夜のように、永遠に冷たく流れんことを。支配者たちとは、降水人たちがモルロク逸脱神と呼ぶ、仮面神こと焼け愚神に従う、手先たちのことだ。昔におけるこの手先たちは、おれの種族にとっての宿敵である、憎悪対象たちだった。つまり、降水地の頑迷な者たちに、エルフと呼ばれる者たちだったのだ。
混沌は、憎悪対象たちを、不格好な大きい体をともなう、野蛮な生物へ変形させ、さらに、内面の醜悪さを露わにさせた。フィールハニームたちは、この敵たちをオークと呼ぶが、その語は、かれらの下劣さには美しすぎる。
オークと呼ばれる者たちの主人は、牢獄から解放されたあとに、おれたちの砂漠にまで来た。そして、イレケイとの親族関係を主張しようとした。この主人は、おれたちとの同一性について語った。ドラゴンことクルイグオハリーンの炎の中で、生まれ変わったこと。ならびに、戦争神だった者として、力および技の、戦争においておれたちが発揮する両者の、源泉であることだ。
反逆神は、同神が着けている鉄の仮面の後ろから、おれたちへ懇願し、仲間に加えようとした。それは、軍隊として同神へ奉仕させて、世界を血の海へ沈めるためだ。だが、おれたちは欺かれなかった。イレケイたちには父がいる。世界の終わりまで地底で寝ている、大神敵ことドラゴンだ。おれたちには母もいる。おれたちの肉体を変容させて、種族を完全にしてくれた、太陽の不死鳥女神ことハリークルイストゥだ。おれたちには他の神は必要ない。
そして、ブラッドプロフェトたちは仮面神を嘲笑した。真実を思い出したからだ。ドラゴンが出現したときに、モルロク逸脱神が、どのように震えて泣いたのかを。同神は、主人である干渉神に招集されたときに、恐怖で隠れたのだ。
イレケイたちは臆病者には用がない。モルロク逸脱神は怒り、同神の新しい子供たちをおれたちへ解き放った。オークたちは弱く、かれらの多くがおれたちの短刀で倒れたが、人数は砂粒に等しかった。まさに、かれらの猛攻は砂嵐のようだった。おれたちの多くの血が流れたので、同胞たちはこの砂地から離れた。いつの日か、おれたちの預言者たちが適切と判断したときに、おれたちは戻り、混沌の孵り子たちは報いを受けるだろう。
会話を終える。
用語一覧
《う》:ヴィーコール[舞闘家](Vi'kor the Sun Dancer)ヴィーラクトゥ(Virakt)
《え》:エルフ(Elf)
《お》:オーク(Orc)
《か》:神(Gid)、仮面神(Masked God)、干渉神(Meddling God)
《く》:クルイグオハリーン(Kryqho'khalin)
《こ》:降水人(Rain Bleeder)、降水地(Rainland)、混沌(Chaos)
《せ》:戦争神(Warrior)
《そ》:憎悪対象(Hateful One)
《た》:大神敵(Terror of Terrors)、太陽(Sun)
《と》:ドラゴン(Dragon)
《は》:ハリークルイストゥ(Khalikryst)、反逆神(Traitor God)
《ふ》:フィールハニーム(fir'khanim)、不死鳥女神(Phoenix Goddess)、ブラッドプロフェト(Blood Prophet)
《も》:モルロク(Morloch)
《や》:焼け愚神(Burned Fool)