世界人類のなかで関心を集めているドワーフは、極めて特殊な種族である。他の諸種族は肉と血から成り立っているが、ドワーフは石だけで構成されている。それぞれのドワーフたちは、黒い泥板岩や灰色の花崗岩ならびに、白い大理石など、さまざまな石で精巧に作られている。
ドワーフは、地界のなかで最も身長が低い種族であるが、力が強い種族のひとつでもある。ドワーフは寸胴な体系をもつため、身長と体の幅が同程度の長さであり、全身は、彫刻で形成された厚い筋肉に覆われている。ドワーフは、平均的なヒトよりも機敏ではないが、ヒトよりも力が強く、はるかに高い自然治癒力をもっている。ドワーフの体には、大地のもつ堅固さがはたらいており、かれらは、並外れた頑丈さと限りない耐久性に恵まれている。
地底での生活を意図されたうえで作られたため、ドワーフたちがもつ輝く宝石の目には、夜目の機能がある。しかし、詳細は不明であるが、ドワーフたちの諸石窟では、緻密な作業をおこなうために、明かりが灯されるようである。
ドワーフが年をとることはなく、かれらの全員が同時に作成されたので、年齢に著しい差はない。ドワーフは老いないが、かれらの体には摩耗がおこる。ドワーフの多くには、体の全体にひび割れがいくつもあり、体の一部が欠けている。これらの損傷は、たいていのばあい修復が可能である。しかし、ウォーリアーたちが傷を誇ることと同様に、ドワーフも、ひび割れを名誉の証として残す。
あらゆるドワーフの外見は、奇妙といえるほど似ている。ドワーフにはさまざまな種類があり、かれらのあいだには、異なる小さな諸特徴がある。しかし、背が低く、厚い筋肉をもち、髭と太くて長い髪をもっていることが、かれらの全員に共通している。
ドワーフに初めて遭遇した地界の人びとは、困惑した。ドワーフが生物なのか、あるいは、呪術による見事な自立人形なのか、判断できなかったためである。複数の根拠が交互に矛盾していた。ドワーフは明確に石でできていたが、かれらは繋ぎ目と関節がないにもかかわらず、四肢を動かせた。しかも、ドワーフには、他の生物と同様に飲食が不可欠である。まれではあるが、運動に全力を傾けたときだけドワーフは疲れ、睡眠をとらなければならなくなる。
ドワーフたちは普通の生物とは異なり、繁殖ができない。新しいドワーフが生まれることはないため、古い諸時代に減少した人数は補充されない。エルフにおける多くの智者たちは、自立人形とドワーフを比較し、同一の存在ではないと断定した。この自立人形とは、アニメイターの製作する非生物であり、複雑な構造をもつもののことである。天変地異がおきたあとまで、ドワーフを生物とみなすための、決定的な証拠は得られなかった。殺害されたドワーフが、他の諸種族と同様に、生命の樹がもつ機能により転生したことは、大きな発見となったのである。
智者たちと民俗学者たちは、転生がもつ構造の解明を試みており、魂の性質についての論理を整えようとしている。しかし、かれらに比べれば、ドワーフたちは、転生にそれほど困惑していない。
用語一覧
《あ》:アニメイター(Animator)
《う》:ウォーリアー(Warrior)
《え》:エルフ(Elf)
《せ》:生命の樹(Tree of Life)、世界人類(Children of the World)
《ち》:地界(World)、智者(Magus)
《て》:天変地異(Turning)
《と》:ドワーフ(Dwarf)
《ひ》:ヒト(Human)
《み》:民俗学者(Loremaster)