―暗黒と不死者および現在の状況について―
あなたは、著者の明らかでない本を開いている。この本は、得体のしれないものではないようだが、すべてのページが判別できない文字と、失われた言語で書かれている。紙じたいは古く見えるが、覚え書きには、数日まえに書かれたような新しさがある。
ページ1 ―時間の存在しないとき―
時間がまだ存在していないとき、過去と未来はひとつだった。距離がなかったため、死者の霊魂は暗黒(闇の領域)へ直接に向かった。甲から乙への移動には、まったく時間がかからなかった。暗黒は飽きており、活力はそこから出て、戻ってきた場所で再利用された。
ページ2 ―時間はすべてを変化させた―
時間はすべてを変化させた。光と暗黒の空間は引き離され、何も通さない障壁が二つを隔てた。そして、死者の魂がアエアインスにとらわれるようになり、死体にとりついて蘇ったものが、不死者の起源である。
この現象に驚いたエルフたちは、すぐさま、呪術を使う戦いを始めた。しかし、彼らは不死者の形成をさまたげなくなり、打ち倒しもせす、利用することに価値を見いだした。彼らは死霊術を発明し、不死者たちを操作するだけでなく、死者の魂を物質へ転送することさえ行った。しかも、暗黒の中に未知の神格が潜んでいるという、手がかりをつかんだ。
ページ3 ―アーダン国のヒト―
アーダン国のヒトは、不死者と正面から戦った。彼らは除霊の技術を考案して、不死者の体を破壊したのである。そしてすぐに、暗黒の中にいて、不死者の群居する意識として働く、恐ろしい神格、ヌルを発見した。
ヌルは障壁を破壊しようとしていた。アーダン王と無名人祖にくわえ、楽園の強大な呪術師たちが、解決を図った。問題は二つあった。一つ目は、魂が死に際し、アエアインスから離れないこと。二つ目は、暗黒が生者の住む世界を、「上書き」しようとしていたことである。問題の対処には、二つの方法がとられた。
ページ4 ―ソウルストーンと霊網―
一つ目として、アーダン人はいくつものソウルストーンを作り、設置して、呪力を宿した。これらの黒い石は、死者たちの魂を罠にかけることができた。魂は石に引き寄せられ、内部に閉じ込められたのである。
二つ目として、無名人祖は多くの呪術師とともに、捕縛の霊網を編みあげた。土占いの結果を反映した複雑な模様は、力線で構成され、二つの空間がもつ間にある、障壁を補強した。霊網の固定はアエアインスの各地にある、記号と呪物の相互接続によって行われた。二つの方法はうまく働いたため、不死者の群による侵攻は止まり、ヌルは遠ざけられた。同時に、エルフのネクロマンサーたちも勢いを失った。
ページ5 ―天界門と冥界門―
霊網はその作用により、ヌルを永遠に遠ざけた。一方で、すべてのソウルストーンは一時的な対処にすぎず、許容量は限界をむかえた。したがって、悪逆戦役が終わり、全父がアーダン国のヒトを救ったあとも、不死者は現れた。
無名人祖が全父に問題を知らせると、父は天界と冥界につづく、二つの経路を作るための冒険に旅立った。暗黒に何度も滞在し、ヌルと戦ったあと、全父は目標を実現した。父は天界門と冥界門を、月にある新しい砦の中に建造したのである。
それらは、暗黒につづく経路として役立ち、アエアインスから死者たちの魂が送られた。しかし、ヌルはふたたびむさぼり始め、魂が生者のおだやかな領域に侵入してきた。死霊術あるいは何らかの悪によって、ときおり不死者が問題をおこしたことも、今に伝えられている。
ページ6 ―天変地異―
それは、天変地異がおきたときまでつづいた。霊網には脆弱な部分があり、魔神たちはイスリアナのいた宮殿の近くで、霊網の固定具をたたき壊し、暗黒へつづく細い道を作った。その場所は、カエリクが探究で通ったところでもある。しかし、死滅軍団はアエアインスから去った。
地界が裂け分かれたとき、天界門と冥界門は閉じた。死者たちの魂はふたたびアエアインスにとらわれ、災害と疫病で死んだ大量の犠牲者が、恨みをもってよみがえり、群を成した。霊網の固定具は多くが壊れたか破壊され、アエアインスの砕けた全土は、ひとつの土地をのぞき、無防備となった。ほとんどの土地が荒廃し、死者のすみかに変わった。
ページ7 ―生命の樹―
ドルイドたちは、傷ついた地界の樹がもつ力に触れて、新しい解決策を編みだした。したがって、生命の樹が発明されたのである。彼らは石化した始原の樹に生えていて、同じく石になった複数の聖堅果を対象とした、活性化と再生の儀式を行った。こうしてドルイドたちは、死者たちの魂を木に戻し、それらのために新しい体を作りだす、奇跡をおこせるようになった。
しかし、問題はまだ存在していた。闇夜の母が生み出した冷たい生き物たちが、 アエアインスの各地にある、霊網の固定具を破壊しようとしていたのである。その目的は、ヌルのために道を開くことであった。
少数の賢いシェイドは、ソウルストーンの秘密を解明した。さらにエルフの死霊術を基盤に、石の内部に封じられていた、怒れる魂の、解放にはたらく儀式を考案した。石を変形させて、暗黒を一方通行で、アエアインスに侵入させる仕組みも生まれた。カトゥルス教団は熱心にソウルストーンを探しており、石から大量の悪霊を解放して、その嵐を起こそうとしている。死滅軍団を呼び寄せ、地界を闇で永遠に覆いつくすことも、彼らの目的である。
固有名詞一覧
《あ》:アーダン(Ardan)、アーダン国(Ardan)、アーダン人(Ardan)、アエアインス(Aerynth)、悪逆戦役(War of Spite)、暗黒(Black)
《い》:イスリアナ(Ithriana)
《え》:エルフ(Elves)
《か》:カエリク(Caeric)、カトゥルス教団(Cult of Katullus)
《し》:時間(Time)、始原の樹(First Tree)、死滅軍団(Unholy Legion)、障壁(Barrier)、徐霊(Undead Hunting)、死霊術(Necromancy)
《せ》:聖堅果(Acorns)、生命の樹(Trees of Life)、全父(All-Father)
《そ》:ソウルストーン(Soul Stones)
《ち》:地界(World)、地界の樹(World Tree)
《つ》:月(Moon)
《て》:天界門(Gates of Heaven)、天変地異(Turning)
《と》:ドルイド(Druids)
《ぬ》:ヌル(Null)
《ね》:ネクロマンサー(Necromancers)
《ひ》:光(Light)、ヒト(Men)
《ふ》:不死者(Undeads)
《ほ》:捕縛の霊網(Net of Binding)
《ま》:魔神(Chaos Lords)
《む》:無名人祖(Nameless Titan)
《め》:冥界門(Gates of Hell)
《や》:闇(Dark)、闇夜の母(Mother of Winter)
《ら》:楽園(Blessed Realm)
《り》:力線(Leylines)
《れ》:霊網(Net)、霊網の固定具(Barrier Sigils)